ToSi伝説騙り

 

こんばんは、今宵も幾多あるToSi伝説の中から皆様に語って差し上げようと思います。

さて、今宵のお話は・・・

 

「垢すり」

 

ある方からお聞きしたお話です。

その方のお知り合いの方はお風呂に入るのが大好きで、旅行先でも行き先のは必ず有名な温泉やお風呂があったそうです。

ある時、友人と男三人でお隣の国に旅行に行かれたそうです。

もちろんお目当ては、お隣で有名な「垢すり」を体験することだったそうです。

その人と友達の一人は、有名なちょっとお高い「垢すり」屋さんに行ったのですが、もう一人の友達は「有名どころでは観光化されて本当の垢すりが体験できない」といって別行動を取ったそうです。

その人と友達は、ちょっと料金が高かったですが、丁寧な「垢すり」と韓国風のマッサージに大満足してホテルに帰ってきました。

ところが、別行動した友達はなかなか帰ってきません。

「どうしたんだ、あいつ。いいところが見つからなくて、帰れないんじゃないか」

「見栄っ張りだからな」

その人と友達は、そんなことを言い合いながらもう一人の友達の帰りを待っていたそうです。

ところがいくら待っても帰ってきません。

そこで、ホテルの人に事情を話して探してもらう事にしました。

「地元のものでも怖ろしい店がありますからね。そこに行かれていないといいのですが・・・」

そう言いながら、ホテルの人が警察に連絡して、探してもらったのですが見つかりませんでした。

二日たっても友達は見つかりませんでした。

二人は友達のことが心配でしたが、この国で最後の夜でしたので、案内の方を連れて、市場の屋台に食事に出かけました。

活気のある市場の中でも一番人気のお店で案内の方と三人で楽しく食事をしていると肩からボロボロのバッグを提げた見知らぬ老婆が、彼らの前に現れて懸命に訴えだしたそうです。

「オレだ。オレだ。オレだよ」

だけど誰も老婆に言うことが理解できませんでした。

老婆は、バッグの中からパスポートを取り出して、開いたそうです。

そのパスポートは行方不明に成った友達のものでした。

老婆にそのパスポートを持っている訳を聞こうとしたのですが、泣き出してしまったそうです。

彼らはその老婆をホテルに連れて行って事情を聞いたそうです。

そして、何とか落ち着いてきた老婆に事情を聞くことが出来たそうです。

「俺はお前たちと別れて下町の方に行ったんだ。

そして、あちらこちらと歩いているうちに一軒の店を見つけた。

その店は結構流行っているみたいで、若くてきれいな女の子たちが、次から次からと店から出てきていたんだ。

俺はこの店だと思ってその店の中に入った。

料金はお前たちのところよりも少し高かったが、支払いの時に値切ればいいと思ってそのまま、店の奥に入っていった。

身体を蒸して垢すり用のベッドの横になると、店のものが、20枚ほどの写真が載ったパネルを持ってきた。

そこには、男の写真が張ってあった。

俺は、男には興味がないというと、今度は女の写真の載ったパネルを持ってきた。

その中から好みの女の写真を指差すと、店のものは頷いて去っていった。

俺は垢すりをしてくれる担当員の写真家と思ったが違っていた。

俺のところに来たのは中年のおっさんだった。

俺は文句を言おうかと思ったが、ひょっとしたら垢すり後のサービスのためのものだったかもしれないと思って、そのままにしていた。

垢すりが終わると、俺の身体は全身真っ赤で、ヒリヒリと痛かった。

俺は店のものにこすりすぎだから何とかしろと文句を言った。

ヤツは何か言ったが、俺は構わずに怒鳴り続けると、金を払わないとまで言った。

すると、店のものは怒り出して、褐色の布みたいなものを俺に投げつけて、それを着ろといった。

それは着ぐるみみたいなもので、痛くてたまらなかった俺は、それを着た。

すると痛みは治まった。

俺はその部屋にあった鏡の前に立つと俺は老婆の姿に成っていた」

それから、彼はその皮を脱ごうとしたが脱ぎことは出来ず、料金を抜き取られた財布と、パスポートにこの服とバッグを渡され店をたたき出されたそうです。

そして、宛もなくうろついているうちに、彼らに出会ったのです。

彼らはそんな話は信じられませんでしたが、一緒に聞いていた警察やホテルの人は、あきれたような顔をしてため息をついたそうです。

「あなたが行った店は、垢すり屋ではなくて、新生屋なのです」

「新生屋?」

「アナタの身体にたまった今までの人生の垢をこすり落として、新しいあなたへと生まれ変わらせる店です。今までの垢をこすり落としたら、新しい皮を着せて、別人に生まれ変わらせてくれるのです。でも、アナタが仕事に文句を言ったので怒ったのでしょうね」

説明してくれた警察は、哀れむような顔をして老婆になった友達を見たそうです。

「一度しか新生出来ませんから、アナタはもうその老婆の姿のままで過ごすしかありません」

その後、日本政府の出先機関に掛け合ってパスポートの修正をお願いして、何とか日本に帰ってきたそうですが、老婆になった友達は行方不明になったそうです。

 

いかがです?あなたも「新生屋」に行って別人になって見ますか。でも、今までの人生捨てられます?

 

 

 

参考文献

現代特殊民話『韓国の垢すり』