川淳二のTSチックでないと

 

こんばんは、米川淳二です。今宵も『米川淳二のTSチックでないと』最後までお付き合いください。

 

これはね。かなり昔のことになるんですが、以前、私は地方のラジオ局でDJをやってましてね。
その番組の中のコーナーで怖い話をしたりするので、リスナーから結構そんな話が集まってきてたんです。これはその中のひとつなんですけどね。
『米川さん。いつも米川さんのラジオ聞いています。怖いのはまったくだめな私なんですけど、ついつい米川さんのおしゃべりに、怖い怖いと思いながらも最後まで聞いてしまって、いつも恐くて寝れなくなってしまうのです。それで、部屋の電気をつけて布団を頭からかぶって寝るので、お母さんにいつも「電気代がかかる!」って怒られています。(テヘッ
ところで、米川さん。これは、私のお姉ちゃんから聞いた話しなんですが、聞いてもらえますか?

 私のお姉ちゃんは旅行が好きで、高校時代、バイトしては旅行に行ってたんです。高校の卒業旅行で行った先の民宿で知り合った三人の女の子たちと意気投合して、大学に入ってからも、連絡を取り合って一緒に旅行してたんです。
行き先は、人気の観光スポットじゃなくて、あまり知られていないところを好んで行ってたんです。そんなところのほうがのんびり出来ると、彼女たちはそんなところを選んで旅行していたんです。そして、結構素敵なところに出会えました。

姉は、そんな仲間とまた夏休みに一緒に旅行する事になったのですが、急性盲腸になって一緒に旅行にいけなくなったんです。それで友達三人だけで旅行する事になったんです。

その時の行き先は、北陸のほうだったのですが、冬の日本海と違って、明るくきれいな海岸線を眺めながら、三人は、列車の旅を子供のようにはしゃぎながら楽しみました。何度か路線を乗り換え、三人はとある山間の駅の降りたのです。そこは、昔はかなりにぎやかな温泉街だったらしいのですが、近くに交通の便もいい温泉街が出来たので、すっかり寂れてしまったのです。そこは、山谷のきれいなところでした。駅は無人駅で、駅前に小さな雑貨屋があるだけの寂しいところでした。雑貨屋のおばさんは、かなりの年で、大きな声で話し押しなくてはいけなくて、かなり苦労したのですが、何とか話を聞くとこのあたりには泊まれるようなところはなく、午後七時が最終の日に六本しか走っていないバスでふもとの町まで行くか、タクシーを呼ぶしかないというのです。列車も彼女たちが乗ってきたので終わりのようでした。

せっかくここまで着たのにこのまま戻るのもいやだし、かと言って野宿もできないし、困っていると一人が、駅の掲示板で一枚の古びた広告チラシを見つけたのです。それは、宿の広告で、連絡先や、そこまでの地図も書いてありました。ためしに携帯でその電話番号をかけてみると、やっているというのです。

「さっきおばあさんは、このあたりには泊まれるところはないって言ってたのに、あるじゃない」

「きっとぼけて忘れていたのよ。今日はそこに泊まろうよ。もう疲れたよ」

「そうするか」

三人は、掲示板の広告チラシをはがすと、その民宿へと歩き出しました。駅から舗装された道をテクテクと10分ほど歩いていくと、ツタや雑草、伸びてきた枝に隠されそうになっている汗顔を見つけました。

「こっちよ」

「もう少し手入れをしないと、客来ないぞ!」

「頑固親父がいたりしてね。おまえら!うちには相応しくない!地馬手やらぬ。とか言われたりしてね」

「こわぁ〜〜」

軽い冗談を言いながら、三人は、その看板の指し示すほうへと入っていきました。森の中を通ったその道は、人があまり通らないのか、雑草が道を覆って分かりにくくなっていました。

「ほんと大丈夫なの。引き返そうよ」

「ここまで来て、引き返す?」

「う〜ん、薄暗くなってきたし・・・先急ごう」

本当にあたりは薄暗くなってきて、森の中では鳥が鳴く声が薄気味悪く響いて来るので、三人の足は、思わず速くなってきました。

そして、道なき道を進んでいくと、古びていますが、大きくて立派な旅館の前に出ました。

「うわぁ〜りっぱな旅館ね」

「高いんじゃないかしら・・・」

「・・・・」

その風格に三人はビビってしまいました。すると、旅館の奥から骨ばったかなり年の女の人が出て来ました。

「いらっしゃいませ。お泊りのお客様でしょうか?」

「は、はい。でも・・・高いんでしょう?」

「私たち、学生で、お金はそんなにないので・・・」

その女性は、彼女たちの言う事を聞いて微笑みました。

「いいえ、建物は古いですが、ここらあたりには、昔ほどお客様は興しになりませんから、お安い料金でお泊りいただけますよ。それと、今日は、女将の私のほかは、板前と常連のお客様の三名だけですので十分なおもてなしが出来ませんがお許しください」

「あ、あの〜〜これだけの旅館なのに、ほかの従業員の方がいらっしゃらないのですか?」

「はい、いま、新しく出来た温泉地への移転中で、他のものたちはそちらの方に参っておりまして、本来ならお客様にお泊りいただける状態ではないのですが、この時間に、麓までお戻りいただくわけにも参りませんので・・・よろしいでしょうか?」

「は、はい。ご迷惑を御掛けしますがよろしくお願いします」

三人は、かしこまって、女性に頭を下げました。その女性は、微笑みながら、彼女たちを旅館の中へと招きました。

「こちらにどうぞ」

三人が案内されたのは、内風呂もある、景色のいい広々とした部屋でした。

「こ、こんな立派な部屋では、宿泊代が・・・」

でも、女将は微笑んでいた。

「いえ、先ほど申しましたように、もう移転しますし、それに十分なおもてなしは出来ませんので、御代のほうはお気になさらないでください。お部屋のほうにもお風呂はございますが、大浴場もございますので、お好きな方をお使いください。お食事ですがいかがいたしましょう?」

「そうですね。今は6時前だし、お風呂を頂いてからにしますので、6時半頃にお願いします」

「はい、わかりました」

そう言うと、女将は静かに部屋から出て行きました。

「さて、荷物を片付けてお風呂に行こう」

三人は、荷物を片付けだしました。でも、その中で、一人だけ、なかなか片づけが進まない子がいました。それは、さっき、引き返そうと言った子でした。

「今でも遅くないよ。ここを出ようよ」

「いまさら、帰れるわけないじゃないの。それにこんな豪華な部屋滅多に泊まれないよ」

「そうそう、それに一晩だけだから、何も起こらないよ」

「でも・・・さっき、あの女将さんには影がなかったのよ」

「暗くなってきたから気づかなかっただけよ」

「そうよ。気のせい気のせい」

まだ何か言いたそうな顔をしていたのですが、二人がうれしそうにしているのでそれ以上は何も言えなくなってしまいました。

片付け終わると一人が言いました。

「お風呂に行くけどどうする?」

「私も行く!あなたはどうするの?」

「わたしは・・・部屋にいる。なんだか気になるので」

「それじゃあ、私達先にお風呂に行くね」

そう言って、帰りたがった女の子を部屋の残して、二人は大浴場へ行きました。

建物が古いせいか、引越しが決まっているためか、大浴場へと続く廊下は薄暗く蛍光灯も切れ掛かっていて、顔見知りとすれ違っても気付かないのではないかと思われった。

「暗いわねぇ」

「仕方ないよ。もうすぐこの建物は使われなくなるんだから蛍光灯を取り替える必要もないもの仕方ないよ」

ブツブツと文句を言いながら二人は、薄暗い廊下を歩いていたんです。前のほうから誰か歩いてきました。ふと見ると女の人かと見違えるほどの若いイケ面の男の子でした。

すれ違ったイケ面の男の子を目で追いながら振り向くと、彼の姿はなかった。

「え?彼はどこに行ったの」

「彼って?」

「今すれ違った、かっこいい男の子」

「誰もすれ違わなかったよ」

「え?だって今・・」

「この暗さよ。なんで顔がわかるのよ。さあ、急ぐわよ。早く入って部屋に戻らないと、あの子泣き出しちゃうわよ」

「待ってよ〜〜」

二人は、廊下を駆け出して、大浴場に行ったのです。

そして、誰もいない大浴場を思いっきり楽しんで部屋に帰ってくると夕食の準備がしてありました。部屋に残っていた女の子は、顔を伏せ、すでに席に座っていました。でも、ふしぎなことに、並べられているのはお皿だけで、料理が何も盛られていないのです。

「なんでお皿だけなの?」

「きっと目の前で料理を作ってくれるのよ。さあ、座ってまとうよ。遅かったから怒っているの?あなたも後で行きなさいよ。大きなお風呂で貸切だから気持ちいいわよ」

部屋に残っていた女の子は、何の反応も示しませんでした。

「もう、まだ怒っているの?」

そう言って彼女の顔を覗き込むと、彼女は笑っていました。それもいやらしい笑みを浮かべて、自分の股間に手を伸ばして・・・

「くちゅくちゅくちゅ・・キヒヒヒ気持ちいい。これで、女湯に入り放題だ」

「ど、どうしたのよ。貴方何やっているの?女将さん、この子おかしくなってしまったわ」

どうしたらいいのかわからなくなって、ちょうどそこにやって来た女将に、助けを求めました。ですが、女将は平然とした顔で、もう一人の子のそばに歩み寄っていくのです。

二人はおかしくなった子の事で、女将の動きがおかしいのに気付きませんでした。女将は手を伸ばすと、傍に立っている女の子の肩に骨ばった手を伸ばしました。女将の手は彼女の身体をすり抜けて、胸を掴んでいるのです。そして、彼女の身体を自分のほうに引き寄せると、ニヤッと笑いました。

「フフフ、この子の身体は私が頂くわ。若くなれるなんて、うれしいわ」

「い、いや、やめて・・・」

彼女の顔は、こわばっていました。身震いをしようとするのですが、金縛りにあったみたいに、硬直して動けないようでした。女将は、笑いながら徐々に彼女の身体に、自分の身体を沈めていくのです。その光景に、残った一人の女の子は、身体が震え、動けないでいました。

「い、いいスヨ。女の体って。こ、ここをクチュクチュすると、もう・・・」

立ち尽くす彼女の足元で、自分の股間を触りまくって、喜ぶ女の子に、今までに感じたことのないほどの恐怖を感じました。

女将の右半身入り込まれた女の子が、顔の右半分を苦痛にゆがめ、左半分は薄笑いを浮かべながら囁きました。

「フフフ、今度はあなたの番ね」

そして、彼女の苦痛にゆがんだ表情は、徐々に薄笑いに変っていったのです。

「い、いやぁ〜〜〜」

思い切り叫ぶと、彼女はその部屋から全速で駆け出しました。

「逃がすか。その身体は俺が貰うんだ。これで俺も女になれる!」

彼女の前に、出刃包丁を持った体格のがっしりとした調理師風の男が立ちふさがりました。でも、急に止まることが出来ず、彼女はそのまま男にぶつかっていきました。

『ぶつかる!』

思わず彼女はそう思ったのですが、何の衝撃もなく男を通り抜けました。彼女は、そのまま外へと飛び出すと、雑草に覆われた道を裸足のまま駆け抜け、何とか駅前まで着ました。タイミングよく来たバスの飛び乗ると、運転手にすぐにバスを出すように頼みました。

「すぐにと言っても、時間調整をしないとね、ちょっと早く着すぎたので・・・」

「いいからお願い。早く出して」

「でも・・」

うだうだ言っていた運転手は、サイドミラーを見て絶句しました。そして、いきなりエンジンをかけると、何の前触れもなく急にバスを走らせたのです。

彼女は、急にバスが走り出したので、最後部座席まで転がってしまいました。

「い、いた~い。急に走り出さないでよ」

彼女は運転手に文句を言いましたが、彼には聞こえていないのか。前のめりになって、猛スピードでバスを走らせ続けました。かなりの急カーブもギリギリで曲がりぬき、バスは狂ったように走ってふもとへと降りていきました。バスセンターに着くと、運転手は、大きな息をついて彼女に聞きました。

「いったい何なんだあれは。お前のあとをでかい火の玉が追っかけて来てたぞ。あれはいったい・・・」

助かったという安心感と、友達をあの旅館に残してきた罪悪感で、彼女はいつまでも泣きじゃくることしか出来ませんでした。

翌日、落ち着いた彼女の訴えから、警察はその旅館に行って見ましたが、彼女たちの荷物以外には何もなく、友達を見つけることは出来ませんでした。

 

後でわかったことですが、確かにこの旅館は、新しく開かれた温泉地に移転したのですが、あの地で亡くなった人が三人いたんです。

一人は、泊り客で綺麗な若い男の人でしたが、覗きが趣味で、女装して女湯に忍び込んでは覗きをしていたらしいのですが、ある日、女装しているのが見つかって、女湯から逃げ出す時に、濡れた洗い場で足を滑らせて、湯船のふちで頭を打って死んでいるんです。そして、二人目は、あの旅館の数代前の女将で、若い頃は美人女将としてお客にもてはやされたらしいのですが、年をとって誰からも相手にされなくなって、自殺したらしいのです。最後の人は、身体のがっしりとしたあの旅館の板前だったらしいのですが、彼には人には言えない想いがあったのです。それは女の人になりたいというもので、普段は無口で男らしく振舞っていたらしいのですが、ある日、それを同僚に知られ、彼の秘密を吹聴する同僚とけんかして殺傷してしまい、山に逃げ込んだのですが、逃げ回っているうちに足を滑らせ谷間に落ちて死んでしまったそうです。その人たちの魂が、あの旅館に舞い戻り、迷い込んだ三人の身体をほしがったのでしょう。

あの日以来、あの二人の行方はわかりません。

 

ここで、手紙は終わっていました。でも、どうもこの手紙、気になるんですよね。だって、姉から聞いた話といいながら、まるで自分が体験したことのように書いているじゃないですか。

私は気になったのでこのリスナーの事をスタッフに頼んで調べてもらったのですが、差出人は行方不明になっていました。

差出人のリスナーは一人っ子で、ある晩、何か大声で叫んでいたらしいのですが、その翌日、行方不明になったそうです。

「女になった~~」とか叫んで・・・