変装少女 作・ai

 

 小雪のちらつくどんよりとした鉛色の空がひろがるある日のこと。例年にないほどの暖冬の影響らしい、いつもなら雪が積もっているはずのこの地にも雪はまったくない。真冬の季節というのに、自転車で登校してくる生徒が目立つ。その横を徒歩の群れがぞろぞろと学校に向かって歩いている。好美もそのうちの一人だった。美しい黒髪をなびかせ、学校の制服の上に紺のコートを羽織っていた。指定の制服をピシっと着こなし、黒タイツを着用している。

 彼女の名前は「大村好美(オオムラヨシミ)」。地元の公立高校に通う女子高生だ。高校2年。学業の成績はそこそこ。運動も特に苦手なものもなく、なんでも普通にこなす万能な女の子だ。友達も多く、慕われている。ごく普通に思われる彼女に唯一特異とされる部分があった。

その朝好美は仲のいい友達と通学してきた。暖冬とはいえ冬は冬。防寒として制服の上にコートを着ている。黒のタイツを着用し、制服は崩さずにピシっと着こなしていた。ここまで制服をきれいに着こなす人間も珍しい。そして手にはいつものスクールバックを持っていた。

「ホント雪なくて助かるね。」

「ほんとにね。でも雪がないと冬らしくないな〜。」

「確かにそうね。今年の暖冬は北のほうの気団が影響してるとかなんとか・・・地学の先生が言ってた。」

「そんなこといってもよくわかんないわょ。私、好美ほど頭よくないからさ〜。」

「なにいってんのよ。こないだのテストでは成績よかったんでしょ・・・」

ごく普通の女子高生の会話で盛り上がりながら、好美はとても楽しそうに学校に入っていった。

「おはょ〜。」

教室に入っていく好美。自分の席につきコートを脱ぎかばんを置いたとき、教室の隅から騒いでいる女子の声が聞こえた。

「ぎゃはは!超ウケるんだけど〜!」

「でしょ〜!?マジウザイってかもう帰ってくださいみたいな?ね〜。ぎゃはは。」

この下品な会話の主は、「大影唯(オオカゲユイ)」と「内海由梨絵(ウツミユリエ)」。この学校では有名なギャル女二人組みである。男子の中では「YYギャルコンビ」といったあだながつけられ煙たがられていた。

唯は誰が見てもギャルといった外見をしている。制服のリボンはだらりとだらしなくさがっていて、スカートはとても短くミニスカになっており黒タイツをはいた足が太ももまであらわになっていた。肌は小麦色にこんがりと焼けた色をしている。髪は長く、ストレートの髪は金色に染まっていた。特に学生と思えないほどの化粧を目元にしており、目の周りが黒く見える。両耳にはピアスをつけていた。唯は教室にいると一目で飛び込んでくるほどに目立っていた。

一方、由梨絵はというと唯ほど見た目は派手にしていない。髪は茶色でそれほど長くなく軽くパーマがかかっておりウェーブしていた。肌は焼いていないが、やはり同じように化粧をしっかりしている。右耳にピアスの穴をあけていて、あまり派手ではないピアスをつけている。鼻筋がすっきりとしていて、少し鼻が高いイメージのする女の子である。

好美は自分の席から唯と由梨絵の二人をじっと見つめながら会話を聞いていた。そして、にやりと不敵な笑みをこぼした。机の脇にかけられた自分のバックをポンポンと軽く手でたたき

「面白くなりそうね。」

と小さな声でつぶやいた。

 

 

放課後・・・唯はトイレで化粧をしていた。唯が鏡をのぞいていると、他の女子生徒がトイレに入ってきた。ショートカットのかわいらしい生徒だ。

・・・誰だろう、知らない人だけど・・・離れたクラスの人かな・・・

唯は何気なくそんなことを考えながら鏡越しにその女子生徒を見た。するとその女子生徒は、すっと鏡を覗き込み、唯と目を合わせた。唯はすこしおどろいた。と次の瞬間、その女子生徒は突然、唯に後ろから襲い掛かり、左手で唯の両腕を押さえ込み、右手で麻酔薬をしみこませた白いハンカチのような布で唯の鼻と口を強く覆った。

「!?なにするの・・・むぐぐ!やめて!」

突然のことで唯は混乱した。

唯は、必死に抵抗したが、ハンカチにしみこませてあった麻酔薬を徐々に吸い込んで、だんだんと身体に力が入らなくなってきた。

「むぐ・・・やめ・・・あなた・・・むぐ・・・」

ついに唯はぐったりとした。

「ふぅ・・・」

女子生徒は、気を失った唯を見下ろしてニヤニヤとした。

この生徒は一体・・・

女子生徒は鏡で自分の顔の角度をかえたりしてじっくり見いった。そして、おもむろに右手をあごの下に持っていくと、首の皮をつかんで引っ張り始めた。すると、べりべりと音を立てながらその女子生徒の顔の皮がはがれていった。彼女はリアルなマスクを顔に張っていたのだ。

・・・ぺりぺり・・・ぺりっ・・・

ゆっくりとかわいらしい顔のマスクがはがれていき、その下にある顔があらわになってきた。顔の皮が剥がれ女の子の顔はまったくの別人になった。精悍できりりと引き締まった顔。そこには今剥がした精巧に作られたマスクを持った、大村好美が立っていた。左手で頭のてっぺんを掴みショートカットの髪を引きはがすと、足元に落とした。そのあとにはふわっと美しく長い黒髪が現れた。

「ふふ・・・完璧だわ。」

好美はこのマスクで別人に変装していたのだ。

そう、好美の特異な性質とは「変装」である。他人に成りすますことが天才的にうまく、大好きだった。

この日は唯に変装して、楽しもうと考えていた。

好美はひょうひょうとした様子で唯を縄で縛った。両手両足の自由をうばい、さらに口に猿轡をかませ声を奪うと、好美は、唯をトイレの一番奥の掃除用具入れに放り込んだ。

「さてと、ショータイムの始まりね・・・」

好美はニヤニヤと楽しそうにスクールバックのチャックを開けると、中からヘやーネットを取り出して、バッグを足元に置いた。

 

 

きれいな黒髪を後ろで束ねて上に上げ、黒いネットをかぶせて髪をまとめた。そして足元においたバックから取り出すために体をかがめ、バックの口をおおきく開いて中から、マスクをとりだし、

「このタイプのマスクで人前に出るのは、始めてね。」

とつぶやいた。好美の言ったとおり今回のマスクはいつも好美が使っているタイプとは違っていた。そのマスクは、まるで唯の生首のようだった。髪の毛がまったくなく首の下、胸の辺りまである、フルヘッド型のマスクだった。唯の顔や首元をとてもリアルに再現しているが、目の部分はぽっかりと開いているので生気はまったく感じられない。このマスクの後ろのちいさなジッパーは閉じられていた。

「彼女とは肌の色が違うから、フルヘッドだと首まで覆えちゃうから、ギャルの唯に変装するにはやっぱりこれがちょうど良いわ。」

好美はぶつぶつと独り言を言いながら、後ろのジッパーを上げ、マスクを両側に引っ張りながら自分の顔にかぶせていった。目の位置、鼻の位置、口の位置など確かめながら被ると後ろに引っぱり、ゆっくりとジッパーをおろすと、唯マスクは好美の頭全体を覆い、ぴったりとフィットした。

好美はマスクを右手で、軽くなでて密着の具合を確かめながら、顔にかかるテンションに酔った。好美は他人に変装する時の、この顔が引っ張られるような感触が大好きだった。唯マスクは好美の顔にぴったりと張りついて、自然な肌のようになっていた。好美の首の部分も小麦色の肌のマスクで覆われていた。好美は首から下の部分を制服の中にきちんと入れて、軽く押さえて胸の辺りに密着させた。口や、目元などの境目をいつも使っている接着剤を使って肌に貼り付けた。そして好美はバックから普通の化粧道具をだし、目元を中心に化粧した。アイラインを強めに引き、ギャルメイクをマスクから若干出ている地の部分に施した。マスクと地肌の境界がまったくわからなくなると、髪の毛のない唯がそこに立っていた。好美はバッグから金髪のウィッグをとりだすと、手で整え、ウイッグを持って、頭をいったん下に下げるとマスクの上から被ると、鏡を見ながら位置を整えた。好美が鏡をのぞくとそこには、大影唯がいた。好美は唯の顔でにやりと笑った。

「フルヘッドでも違和感ないわね。色もばっちり。髪もOKね。」

好美の声でつぶやいた。

「こんにちはー。唯デース。それ超うけんだけどー。あーあー。マジでー。」

今度は、好美は唯の声で、若干皮肉気味に発声練習をした。

好美が変装した偽唯は「よし!」と短く言って制服のスカートの裾を何回もまくって丈を短くした。黒いタイツに包まれた足が太ももの上の辺りまで見えるほど短くなったところで止めた。そして制服のリボンをだらりとだらしなくさげた。

「あとこれね。」

好美はバッグから長くてぶよぶよした細身のものを2本、丁寧に取り出した。それは人の手を模ったモノだった。

「全身焼けてるものね・・・」

唯の声で面倒そうにつぶやくと、ひじの当たりまである唯の肌の色をした筒を左手で持って、右手をその中に滑らせた。指の辺りは、右手の指を動かしながら入れていった。・・・ぎゅむぎゅむ・・・ぎゅっ。その指の部分には爪までも付いていて、まるで第2の肌のように密着した。左手も同じ要領で、ぎゅぎゅっと音を鳴らしながらいれ、両手に装着し終えると、両手を顔の横に持っていき、鏡に写しながら手を動かした。

装着が終わると唯に変装した好美は、鏡にいろんな角度から写しながら一通りマスクの調子を確認すると、本物の唯が閉じ込められている、掃除用具のドアの前に行った。

「む〜!ん〜ん〜!」

気配を感じたのか声にならないうめき声が中から聞こえる。

「ふふ・・・いま開けてあげるゎょ。」

・・・ガチャ・・・

「!!??・・・ん〜ん!!」

「ふふふ・・・だいぶ驚いたようね。ちょっとの間あなたの顔を借りるゎ。ぁーぁー声はこんなもんかしら??あ〜唯デース。」

「む〜!!ん〜!!」

「そんなに怒らないでぇ〜。きちんと生活してあげるから〜。どう?完璧でしょ?誰が見ても唯ちゃんよね。」

「む〜!!!むぐぐ!!」

「ほ〜らどこから見てもあなたでしょ?ふふ・・・そんなに怒らないで。私があなたの気持ちいいところをマッサージしてあげる。ストレスも吹き飛んじゃうゎ。」

偽の唯は唯のスカートの裾から股間の辺りに手を入れた。

「むぐ〜!!むふん・・!」

「ふふ、、だんだんと湿ってきたわ。感じているんでしょ。」

「んっ・・・ん〜!」

唯はびくびくと体をくねらせ、両目から涙がこぼれた。

「むぐん・・・むむ〜!」

「やめて?そんなこと言って本当はうれしいんでしょ?どう?自分と同じ顔の人間に犯される気分は・・・ふふ。最高でしょ?ほら。もっと気持ちよくしてあげるわ。」

顔を涙でぐしょぐしょに濡らし、怯えた目でもう一人の自分を見る唯。

「ほら!ほら!」

「んっ・・・んっ・・・ん〜!!!」

唯はびくん!と体を震わせると、動かなくなった。

「ふふ・・どうだったかしら?自分に責められてよかったでしょ?じゃ、ここで大人しくしているのょ。」

 

 

偽唯は身動きの取れない本物の唯の頭をなでると再びドアを閉めた。

そして、偽の唯ゎ友達の元へ向かった。

「あーやめられない。」

唯に変装している好美は、自分の声で楽しそうにつぶやいた。