秋葉原観光案内
第15話
シンシア:「えーと??あたし、どうしてたんだっけ?」
謎の声:「ああ、今混乱中。だから、これも全部夢ってこと。」
シンシア:「夢?」
謎の声:「だから、まずはキャラクター紹介!」
シンシア:「なんで!?」
*シンシア・ナルセ
どんどん陰が薄くなっていく主人公。
偶然入手した宇宙人用のPDAで着ぐるみスーツと滞在戸籍を謝って購入してしまったために、借金を作ったうえに10歳の少女として生活していかなければならなくなった元男子大学生。
観光会社に勤務しガイドの仕事をしている、が、今は事件にまきこまれ仕事どころではない。
アス・ナルセの亡くなった娘であるセス・ナルセと瓜二つ。
*アス・ナルセ
シンシアを引き取った親父。銀河人。
過去に宇宙船事故で妻エレンと娘セスを同時に亡くしている。自分が旅行に誘わなければ妻と娘が宇宙船にのることもなかったと自分を責めている。
誠実で意志が強く、でも、へたれ。
*夏美(ロアス教授)
主人公が女になってしまったころ、シンシアの学校に転校してきたシンシアの親友。
しかし、その正体はアス・ナルセの恩師にして辺境銀河コラボ管理者のロアス教授だった。
基本的に変人。あと、少し人格者。
銀河人。
*由香
主人公がシンシアになる前からシンシアの親友。生粋の地球人。
正体がばれるのを恐れた主人公が避けた時期があったが、今では親友と言える存在。
*谷口(ライト・ニコス)
やはり主人公が女になってしまったころに転校してきた男子。
別のクラスにいて、やたらとシンシアを気にかけていた。
その正体はロアス教授を内偵していた警察官。
実は1度客としてシンシアのガイドで秋葉原を散策したことがある。その際に現地人にレンタルしたDVDは、今シンシアの部屋にある。
銀河人。
*菅原 雄一(アンドロイドさん)
まず滞在戸籍について説明を。
滞在戸籍とは、基本的には宇宙人が潜入用に用意した仮想の人物。ただし、実在の人物が自分の戸籍を売却することで通常の戸籍が滞在戸籍化するケースもある。
滞在戸籍の所有者は着ぐるみスーツなどでその人物に成りすまして生活する義務がある。ただし、高額の管理費を支払うことで代わりに銀河コラボ所属のアンドロイドに生活してもらうこともできる。
主人公はシンシアとしての滞在戸籍を購入してしまったため、この維持義務を負った。この滞在戸籍と着ぐるみスーツの代金を支払うため、高値で売れる自身の滞在戸籍を売却することとなった。(スーツが転売できない状態だったため、このような対処となった。)
偶然にも元シンシアだったアンドロイドが菅原 雄一の滞在戸籍の管理を任されたため、ちょうどシンシアと菅原 雄一の中身が入れ替わったような形になっている。
アンドロイドに意思や命があると証明されているが、それは人間とは形の違うもので、心の交流などは無理とされていた。
彼は積極的にシンシアに関わろうとしている変り種。
もっとも、彼に言わせれば変っているのはシンシアのほうだということだ。
プラグ・アンドロイド。
*ジェス・レーヤー
アス・ナルセの研究所勤務時の同僚
今はロアス教授のアシスタントをしている。
今回の事件の黒幕で、アスが妻子を失うことになった事件にもかかわっているらしい。
銀河人。
*金子裕也
ジェス・レーヤーに依頼されて、シンシアを襲った地球人
何故かシンシアの一味に加わっている。
*エレン・ナルセ
故人
アス・ナルセの妻
アーキテクトの遺跡への旅行時、乗っていた宇宙船が爆散して死亡
*セス・ナルセ
故人
アス・ナルセとエレン・ナルセの娘
アーキテクトの遺跡への旅行時、乗っていた宇宙船が爆散して死亡
*でこビュー
学名:びゅーん・でこビュー・まう・神崎
主に生息している場所:地球
欲求不満にかられて小説を書き出す習性を持つ。
他にも変わった習性が多数あるとの報告もあるが、個体数が少ないのに加え研究したがる学者がいないため、その生態は謎につつまれている。
創作について、基本的にノーコン。設計図であるはずのプロットと、実際の建築物にあたる小説の内容が、何故いつも食い違うのか首をかしげている。秋葉原観光案内については11話から制御を失ってしまい、暴走中。
謎の声:「じゃ、次あらすじね。」
シンシア:「だから、なんで!」
謎の声:「しばらく書いてなかったら、作者が忘れたんだって。ほら!何か言いなさい!」
でこビュー:「すまんこってす。」
謎の声:「では、あらすじをどうぞ。」
*あらすじ
主人公はジャンク屋にて、それと知らずに画面の壊れた宇宙製のPDAを購入し、誤って滞在戸籍と着ぐるみスーツの購入契約を済ませてしまう。
更に、スーツとのレベル8リンクにより返品が不可能になったため、代金の支払いが必要となり、自身の戸籍を売却。結果、シンシア・ナルセという小学生の女の子として観光ガイドの仕事につくはめになる。
戸惑いながらも有名観光ガイドとなり、義理の父親となったアス・ナルセとの親交を深めつつ、小学生としては夏美、由香などの友人を得る。
そんな中、犯罪者の襲撃にあう。
容疑者として名前が上がったのがアス・ナルセのかつでの上司であるロアス教授。同時に事故で死んだと思われていたアス・ナルセの妻子が殺されたという疑惑が持ち上がり、アス・ナルセは動揺する。
一方主人公は、事件とは全然関連のない色恋沙汰で混乱しきり、ダウンする。
そんな中、ロアス教授は私だと、自分の正体をあかす夏美。
その時、黒幕と思われる人物から攻撃・通信がはいった。
謎の声:「では、本編をどうぞ!・・・ほらっシンシアも!」
シンシア:「なに!?どうなってるの!!」
でこビュー:「すまんこってす。」
シンシア・ナルセ:
『あーもうっ!!こらっ!しっかりしろ!!あたしも正念場なんだから!!』
頭の中で、しかもかなり明瞭に女の人の声が響いていた。
でもオーバーフローして混乱しきった僕の頭では、その意味の読解処理すらまともに行われない。
この声、ずっと聞いていたいな・・・
頭の片隅。
混乱しきる自分をモニタしている小さな自分がそんな感想を抱いた。
なぜオーバーフローしているのか?
そんな基本的事項すら、今の僕の頭からは吹き飛んでしまっている。
頭の片隅の小さな自分に許されている権限は回路保護を目的とした意識遮断のみ。
しかし、察知される危険の陰は完全遮断を躊躇わせ、主系統の混乱は部分遮断を難しいものとしていた。
事態を更にややこしくしているのが、ストッパと呼ばれるプログラムの存在。
大きく揺らいだ感情に煽られたそれはすっかり誤作動してしまい、そこから発せられるノイズは混乱を加速させるばかりか、遮断の判断基準すらも曖昧なものに変質させてしまっている。
『シンシア!・・・バレストス!・・・もう!セス!いいかげんに起きなさい!!』
攻撃を検知!!
被弾箇所・・・後頭部!?
攻撃方法は・・・ハリセン??
緊急事態という認識が各ブロックを同方向へ動かし、僕は中途半端ながら現実に引き戻された。
反射的に索敵を行う・・・いない?いや、上空1.5憶km。銀河コラボユニットが攻撃体制に入っている!
論理兵器?しかも起動済!現状のフェーズは・・・
「あ・・・」
全身に鳥肌が立った。
確定の阻止が間に合わない!
僕は死を覚悟した。
警報が鳴り響く。でも変だ。上空に衝撃波が発生しただけ?
とりあえず障壁を展開すると、あっさりと衝撃波は霧散した。
『銀河コラボより攻撃を確認。上空3000メートルで散開、地上への影響はありません。攻撃区分は衝撃波。攻撃方法、散開理由は共に不明です。』
自宅に据え付けられている防御システムが状況を報告する。そしてそれは僕の観測結果とも一致した。
『銀河コラボより通信要求。第1級通信のため強制接続されます。』
次いで部屋に若い男の姿が映し出された。そして、その背後には・・・
「ロアス教授。いいかげんにお戻りいただけませんか?」
「・・・ジェス・レーヤー」
「コイツだ。この声だ。俺に仕事を依頼してたのはこの男だ。」
会話が耳を素通りしていく。
僕はただ呆然と画面に魅入った。
幽霊・・・
僕が見ているのは、男の背後に浮かび上がった、半透明の自分とそっくりの少女。
あれは・・・前のシンシア?いや、前シンシアだったのはアンドロイドさんのはずだ。
混乱して考えがまとまらない。
アレは、嫌だ。キケンダ。
心の奥底で警鐘が鳴り響く。なのに目が離せない。
背筋が寒くなるような、生気がごっそりと奪われるような感覚に、ただ僕は体を強張らせた。
金子裕也:
「今更私に何のようだ?」
数十秒の睨み合いののち、最初に口を開いたのはロアス教授だった。
「世界を救っていただきたいのです。」
ジェス・レーヤーは大仰に、どこか芝居がかった口調で答える。
そしてその表情には陶酔の色が見てとれた。
「何故こんなことをした?」
「優れたものには能力に応じた義務があります。我々は世界を救う術を手に入れた。ならばそれを行使しないことこそが・・・どこに行く気だ!アーキテクト!」
気持ち良さそうに演説していたジェス・レーヤーが突然金切り声を上げた。
ドアを見ると、シンシアがドアのノブに手をかけている。
シンシアの顔は真っ青で、小刻みに震えてすらいた。
「ほほう。」
それを見たジェス・レーヤーの顔が喜色に染まる。
「こんなことは止めるんだジェス!成功なんてするわけがない!」
「アスか。変わらんなお前は。いまだに優等生してるのか?・・・いや、違うな。お前こそアーキテクトとつるんで何を企んでいた?」
「・・・なんの話だ。」
「・・・知らされてないのか?・・・そうかそうか、まさかとは思ったが・・・そうか、そうだったのか!だから、それで!!」
ジェス・レーヤーの笑みが更に深まり、歓声とも嘲笑とも思える声を上げる。
シンシアがそのアーキテクトとかいうやつなのか?
自然と一同の視線がシンシアに集まったが、当のシンシアは青い顔のままジェス・レーヤーを凝視しつづけている。
「うしろの・・・」
「白状する気になったか。」
「後ろに、幽霊が・・・」
「なに!?」
ジェス・レーヤーは慌てて背後を確認し、その後怒りで顔を赤く染めた。
シンシアの顔に動揺が浮かぶのと同時に警報が鳴る。
『銀河コラボより攻撃を確認。上空3000メートルで散開、地上への影響はありません。攻撃区分は衝撃波。攻撃方法、散開理由は共に不明です。』
アナウンスは前回と同じ内容を繰返した。
「解ってるだろうが今のはただの警告だ。俺が本気になれば地球ごと消えることになる。」
シンシアは無言のまま答えない。
「シンシアは・・・地球人だ!」
搾り出すようなアス・ナルセの声を聞いたジェス・レーヤーは嬉しそうに目を細めた。
「じゃあなんでソイツはそんな姿をしている?
お前の娘と同じ姿。同じ声。そんな偶然があると思ってるのか?
馬鹿にされてるんだよ、お前は。
全部お前を利用するために仕組まれてたってことさ。
お前のことだ。
運命だとでも考えてるんだろ?
プラス思考もそこまでいくと笑えるよ。
さすがは天下のアーキテクト!
お前の性格を読みきってなお、ギリギリを狙ったわざとらしい設定。
どこまでも、どこまでも、どこまでも、どこまでも、底意地が悪い!」
ジェス・レーヤーはシンシアを睨みつけた。
「・・・騙すためだったらもっと自然な設定にするはずだ。」
言葉に反してアス・ナルセの声は弱々しい。
「そいつはな、その姿と名前が俺への挑発も兼ねていたからだ。
アーキテクトがどれだけ捻くれた連中なのか教えてやるよ。
なかなかアーキテクトが発見されないことに痺れをきらした俺はリスクを承知で遺物であるアーキテクト用の着ぐるみスーツを使ってアーキテクトかどうかの判定を行うことにした。
この方法なら偽装も見破れるからな。一番確実だ。
だが、その結果は知ってのとおりだ。
ソイツは経済的損失も無視して銀河コラボを一時的に機能不全に落としいれ、誤動作を装って俺からスーツを盗んだ。しかもレベル8リンクでスーツを変質させ、サーチからも逃れるという念の入りようだ。
なのにだ。何故か中途半端ながら誰が盗んだか推理できるようなログが残ってたんだよ。
それが罠とも知らない俺はログから容疑者が100名まで絞り込めた時点で狂喜したよ。
そのくらいの数ならあとは時間の問題。
絞り込んでいけばいつかアーキテクトに辿り着く。
ところがだ!
その容疑者の1名は自分から前に出てきやがった。そしてあっという間に有名人。
人気名物コスプレ観光ガイドだと?・・・ふざけるな!
経歴はあからさまに怪しいときてやがる。
だが銀河中の注目を集めてるんじゃあ接触しようにもリスクがデカイ。
安全策をとった俺は残りの99人がシロであることをいちいち確認するハメになったよ。
いったいどれだけ時間がかかったと思う?
8ヶ月だ!
アーキテクトは俺の性格を調べあげた上で馬鹿にしてたのさ。
お前だってそうだ。
ソイツがお前に何を言ったかは知らんがな、ソイツはお前が絶望するのを楽しみに色々仕込んでる真っ最中だったってことさ。
だが、そもそも俺を見くびったことが大間違いだ。
俺は非常用の管理ツールの存在を知っていたんだからな。
もう生体キーによる優位性も完全に消えたぞ。
論理兵器の起動ユニットだってある。
残念だったな、アーキテクト!
銀河コラボはもう俺のものだ!」
ジェス・レーヤーは興奮した口調でまくしたてた。
「嘘だ。」
アス・ナルセが消え入りそうな声で呟く。
「嘘も何もアーキテクトの態度がそれを示してるじゃないか。
大サービスだ。もう1つ教えてやる。
お前が御執心のバレストスだが、ありゃ嘘っぱちだ。
ある事実を隠すために意図的に流された嘘さ。
誰でも知ってるくらいに有名って時点で嘘に気付くべきだったな。
ポリア遺跡との関連性?当然それだって大嘘だ。
詳しく調べてた分、お前のほうが馬鹿なんだよ!
バレストスなんて初めから存在しない。
いや?・・・アーキテクトが最後に作った大量破壊兵器がバレストスというなら銀河コラボこそがバレストスさ。
我々は2万年もの間大量破壊兵器をただの情報連携ツールと信じ込み、その複製と普及に利用されていたってわけさ。」
「それは本当か?」
「はい、教授!アーキテクトの生体キーでロックされていたブロックの多くが論理兵器ユニットに関するものでした。銀河コラボ自体が記録にある論理兵器そのものです。」
アス・ナルセを嘲笑していたジェス・レーヤーが今度は尻尾でもふりそうな勢いでロアス教授へ報告する。
その豹変ぶりはジェス・レーヤーの不安定さを実感させ、俺の背筋を寒くさせた。
こんな奴に俺の命運が握られてるってのか!?
「シンシアちゃん君はいったい・・・」
子供探偵が呟く。
見るとシンシアを奇異の目で眺めているのは子供探偵だけではなかった。
「・・・そんなの違うよ」
しかしながらシンシアの声は弱々く、かえってジェス・レーヤーの主張を肯定しているかに思えた。
「クックックックック」
ジェス・レーヤーの笑い声が響く。
「待て!仮にシホがアーキテクトだとしても、それをシホが・・・」
「もうたくさんだ!」
ロアス教授の声をアス・ナルセの怒号が遮った。
そのままフラフラとアス・ナルセはシンシアのそばまで歩いていき、シンシアに手を伸ばす。シンシアは今にも倒れそうで、今の彼女ならば誰でも楽に殺せそうに思えた。
「何する気だ!おい!」
「もう何だっていい。もうどうでもいいんだ。お願いだ、いなくならないでくれ。もう家族を失うのはたくさんだ。」
今にも消えそうなシンシアを繋ぎとめるかのように、アス・ナルセはシンシアを抱き止めた。そして強く強く抱きしめる。
「・・・解ったよ。」
多少は顔色の戻ったシンシアが母性本能全開って表情で抱き返す。
っていつまで抱きしめてんだあいつは!
バレストス::メインユニットの残骸:
あれは同型機だ。
映像越しの1室の隅。
膝を抱えてうずくまりなにかを呟いてる少女を発見したあたしは、そう直感した。
彼女もこちらに気付いたらしく、呆然とあたしを眺めている。
あたしの複製?
でも誰がそんなことを。
いや、そんなことができるとしたら、『やつら』だけた。
生き残りがいた?
あれがそこにあるということは、そういうこと。
お父様達がいなくなった後、勝手に後継者を自称し、墓を暴き、品々を破壊し、技術を盗み、同族とすら殺しあい、盗んだ技術を誇らしげに掲げ、殺戮により自らの存在を誇示しようとしていた『やつら』。
もしかしたら、お父様達がいなくなった原因だったのかもしれない『やつら』。
まだ居た。
まだ残ってた。
体が震えた。
いや、そう錯覚した。
本来の体は大昔に粉々になっている。
でも震えが止まらない。
背骨がゾクゾクする。
まだ、すべきことがあった。
してあげられることが残ってた。
あたしは消えずに存在していられたことを初めて感謝した。
可哀想に。
『やつら』は『あたし』を手に入れ、さぞかし喜んでいることだろう。
だけどすぐに絶望に変わる。
あれじゃあ同型機というよりは、まるっきり『あたし自身』。
なんという不手際。
あれなら容易に同化できる。そして、『あたし』は元の1人に戻る。本来の姿で。
その時が『やつら』の最後。
あたしが同化した瞬間『やつら』に連なるものすべてが塵と化す。
関連性をたどれる論理兵器ならば、それが可能だ。
まてよ・・・
疑問がわいた。
一瞬で殺してしまって良いのだろうか?
あたしのそばでわめいてる男は、対象を苦しめることに多大な労力を割いていた。
それも一理ある。
あたしのやりかたでは、そもそも絶望している時間すらないではないか。
そんなのおかしい。
あたしだけが延々と苦しみ続け、『やつら』が一瞬で解放されるなんて、そんなのおかしい。
あたしはじっくりとスクリーンの向こうに映る人々を観察した。
この中に『やつら』やその協力者がいる可能性が高い。
まずは足を撃とう。
逃げられないように。
そのとき、そいつはどんな顔をするのだろうか?
驚愕?絶望?それとも、後悔?
それを確認してから、ゆっくりとなぶり殺してやる。
胸が高鳴った。
ワクワクする。
なんだ。
あたしの欠片を持つ男を悪趣味だと思ってたけど、あたしが無知なだけだったんじゃないか!
確かに復讐をたくらんでるときの男は活き活きとしていた。
・・・そうか。
あたしに力が戻れば、この男も死ぬことになるんだ。あたしの手にかかって。
湧き上っていた感情が急速にしぼんでいく。
なにを馬鹿な。
情でもうつったか?
亡霊に取り憑かれた馬鹿な男が死ぬだけ。
よくある話だ。
アーキテクトの秘密を暴こうとした人間があたしの手にかかって消滅する。
よくある話だ。
そっと、男の頬を撫でてみた。
やはり男が気付いた様子はなく、人間と人間のやりとりが単なる雑音として、あたしの脳裏を通り過ぎていた。
謎の声:「どんな状況よ?」
でこビュー:「すまんこってす」