相棒はつらいよ!
作・2代目福助
わたくし、生まれも育ちも、TS・変装サイトです。言の葉亭で産湯を使い。
姓は福助。名は2代目。人呼んで風来の2代目と発します。
と言う事で、お兄ちゃんは旅に出ます。
由希、二世と幸せに暮らすんだよ。おいちゃん、おばちゃん、元気でな。いか社長。あまり労働者を泣かすなよ。
それじゃあ、みんな、あばよ。
2代目福助
「二世さま。これが、2代目さまが残していった書置きです。」
「あのバカ。何考えているんだろう。もうすぐ先代がお越しになるというのに。どうすればいいんだよ。俺は・・・」
二世は、放浪癖のある2代目を思い浮かべて、頭を抱え込んでしまった。
福助二世と2代目福助。決して後継者を育成しようとはせず、終始一匹狼のままで終わるつもりであった初代福助の目に留まり、愛弟子として想像を絶する技と知識を受け継いだ二世と、いつのころから初代の隠れ家にいつき、いつもふらふらとあちらこちらにふらつき回る2代目とでは、月とすっぽん、ダイヤと炭団、野に咲く可憐な白百合と便所の横に捨てられて、古ぼけた汚れた鬼百合の造花、だった。
これほど違う二人だったのだが、なぜか二世は、いつも2代目のことを気にかけていた。というよりも、しっかりと掴んでおかないと、ふらふらと飛んでいってしまう2代目のことが心配だったからだ。
「うむ〜。2代目の奴。一体何処に行ったんだ。」
中央コントロールセンターのキャップチェアで、二世が悩んでいると、両手に抱えきれんばかりのアンパンを持ち、口には、特大のアンパンをくわえた福娘が入ってきた。
「おい、福娘。今まで何処に行っていた。今は緊急事態なのだぞ。」
「ふごぐご・・・」
福娘は、特大のアンパンを咥えたまま答えた。
「食べるか、話すか、どっちかにしろ。何言っているのかわからん。」
「むごぐがぐ、ぐごぐご。むしゃむしゃごっくん。」
あっという間に特大のアンパンを食べ尽くした福娘が、残念そうな顔をして、二世を見た。
「どうしたというのだ。」
「ハイ、あのアンパン。ゆっくりと楽しむつもりだったのに・・・」
「あとでまた買ってやる。それより何処にいたんだ。」
「はい、2代目の命で、コンピューター室で、作業をしていました。」
「なに、2代目の命だと。いま、2代目は何処にいる。」
「さあ、格納庫の方に向かわれていましたけど・・・」
「格納庫だと、あいつ何処に行くつもりなんだ。」
「あの〜」
「なんだ。」
「そろそろ、初代がお越しになる時間なんですけど・・・」
「あ、そうだ。どうしよう?」
「わたしが、おむかえにまいりましょうか?」
「ああ、そうしてくれ。くれぐれも粗相のないようにな。」
「あい」
二世はチェアから立ち上がると、いつもの冷静な二世とは違って、躓き転びながらコントロールセンターを飛び出していった。その姿を見て、福娘はにやりと笑った。だが、福娘の笑いに、2世は気づいてはいなかった。
2世が、格納庫への扉を開けた瞬間。ジェットヘリに乗り込む人影が見えた。2世は、気づかれないように、ヘリに近づくと、中に忍び込んだ。そして、操縦席に座るその人影に、いつも隠し持っているロープをかけて、縛り上げた。
「こいつ、もう逃がさないぞ。観念しろ。」
「ふぐぐ、ふごぐ」
操縦席のその人影は、口の中に何か詰まっているのか、もごもごと、わけのわからない声をあげた。身動き取れないように縛り上げると、2世は、前に回った。そして、自分が縛り上げた人物の顔を見て、唖然となった。なぜなら、そこに縛り上げられていたのは、特大のアンパンを咥えた福娘だったからだ。
「何でお前がここにいるんだ。それにそのアンパン。さっき食べてしまったはず・・・あ、やられた。あいつが、そうだったんだ。」
2世は、ポケットから、携帯用の高性能シーバーを取り出すと、門番を呼び出した。
「2世だが、誰か出て行かなかったか?」
「はい、いま、福娘様が出ていかれましたが?」
「一人でか。」
「はい」
「何に乗っていた?」
「はあ、ミゼットです。なんでも、2代目さまよりお借りしたとかで・・・」
「やられた!」
2世は、下唇を、血がにじんでくるほど、噛み締めた。
「あれは、2代目の変装だったのか。あの天然ボケに騙された。2代目もそうだったんだ。くそ〜」
2世が臍をかんでいたころ、2代目は、のんびりと、愛車のミゼットを走らせていた。
「ふふふ、まさか、自分の前に、探している人物が現れるとは、思わなかっただろう。2世君。今回は、わたしの勝ちだね。わははは・・・・」
まだ、福娘の姿のまま、運転しながら、高笑いをする2代目であった。だが、彼はまだ、荷台に潜む影には気づいてはいなかった。あの、2世のパートナーの姿には・・・