福助被害者ファイルNO.1

ジュディ(仮名) 19歳   学生

わたしの名は、ジュディ・オトランドー。元は、ヨーロッパの貴族だったらしいのですが、今はアメリカのニュージャージーに住んでいます。

一年前までは、ニホンに居たのですが、ある事件をきっかけに人間不信になってしまい、アメリカに帰ってきました。ですが、いまでもあのときの悪夢は、頭を離れません。

 

あれは、わたしが、ニホンに留学して3年目のことでした。留学先のハイスクールで知り合った剣崎あかねさんと一緒に受けた大学に合格しましたが、今まで住んでいたところから離れているので、二人でアパートを借りて暮らすことに成りました。ですが、わたしの両親とあかねさんの両親が心配したので、少し高かったのですが、女性専用のマンションを借りる事にしました。

ここは、警備もしっかりしているし、管理人の方も女性で、安心できました。わたしたちは大学生活をめいっぱい楽しみました。あのときまでは・・・

 

その日わたしたちはお互いに用事があり、夕方にこの部屋で落ち合って食事に行く事になっていました。たまたまわたしの方の用が早く済んだので、部屋に帰ってみると、あかねさんの方が先に帰っていました。

「あかね、早かったのね。」

「あら、ジュディ。おかえり。」

彼女はいつものようにわたしを笑顔で迎えてくれました。

夕食に出かけるにはまだ時間があったので、わたしたちは、ティータイムを楽しむ事にしました。あかねさんが買ってきたショートケーキを食べながらおしゃべりを楽しみました。

「本当、ジュディはきれいよねえ。その金髪も、その白い肌も。」

「なにを言っているの。あなたのほうがきれいよ。その濡れたような黒髪も木目細やかな肌も。それに、そのお人形のようにかわいい顔立ち。わたしは、あかねになりたいわ。」

「そう、なってみる。」

あかねが見たこともない薄笑いを浮かべた時、わたしの目の前がぼやけ、わたしの意識は深い闇の中へと落ちて行った。

 

「うう〜ん。ううぐ?うぐぐ?うぐぐぐ!」

「あら目が覚めたようね。ジュディ、おはよう。」

わたしはベッドの上に転がされていました。手足は縛られ、口には猿轡を噛まされているようで、声を出す事が出来ませんでした。

「いいかっこうね。ジュディステキだわ。縛られて身悶えるあなたも・・・」

わたしは、身体をねじらせて、声のするほうに顔を向けると、そこには、わたしのドレスを着たあかねが立っていました。

「ふぁふぁふぇ。ふぁんふぇ?」

「あら、まだわたしを、あかねだと思っているの。そうね、この巨乳に合わせた顔にならないといけないわね。」

そう言うと、あかねは、わたしに背を向け、左手に持っていた袋を被ると箸を首筋まで伸ばしました。そして、あちらこちらをさわり、足元に置いていたらしいかつらを被るとこちらに向きなおしました。そして、そのドレスの上にある顔は・・・わたしの顔でした。

「ふう、やっぱりこのボディにはこの顔ね。どお、ジュディわたしキレイ?」

その声もさっきまでのあかねの声ではなくて、わたしの声でした。

「わたし、ジュディになりたかったの。どお、そっくりでしょう。ん〜このおっぱいおも〜〜〜い。」

そう言いながら、その巨乳を両手で持ち上げたりして遊んでいました。わたしは、自分の胸がもてあそばれているような気がして、胸が苦しくなっていました。ですが、本当は、きつく縛られて胸が苦しくなっていただけかもしれません。

「あら、こんな時間。お出迎えしなくちゃ。ここで大人しくしていてね。ジュディちゃん。」

部屋の時計を見ていたわたしに化けたあかねは、部屋を出て行きました。戸を閉められ、縛られたわたしは、ただじっとしているしかありませんでした。

彼女が部屋を出て行き、しばらくすると玄関のドアが開きました。

「おかえりあかね。」

「ただいま、ジュディ。早かったのね。」

「ええ、用が早くすんでね。まだ、時間があるからお茶でも飲む?」

あかね?じゃあ、今までのあかねは誰?わたしはわからなくなってしまいました。わたしを縛り、わたしに化けたあかねと、今帰ってきたばかりのあかねがいる。どっちが本当のあかねなのでしょう。そんな事を思っているうちに、二人は、他愛もないおしゃべりをはじめました。

そして、連れ立って出かける音がして静かになりました。わたしは一人残された部屋でそのこと考えていましたが、あまりの静けさにいつの間にか眠ってしまいました。

どれくらい時間がたったのでしょう。わたしは、揺り動かされて目が覚めました。そこには、心配そうな顔をしたあかねがいました。

「ジュディ大丈夫。」

「あかね?」

「そうよ。一緒に食事に行ったジュディの様子がおかしかったので、眠らせて隣の部屋に縛り上げているわ。さあ、ジュディ、楽にしてあげるわよ。」

それはまさしくいつものあかねでした。あかねは、わたしの手足の紐を解き、猿轡を外すとわたしを立たせてくれました。

「大丈夫。立てる?」

「うん、大丈夫。立てるわ。」

「そう、それでは、わたしは警察を呼んで来るから、彼女を見張っていてね。」

そう言うと、彼女は部屋を出て行きました。まだ、縛られていた時の感触が残っていましたが、わたしは、彼女が縛られている部屋に行きました。

彼女は、わたしと同じように手足を縛られ、あかねのベッドに転がされていました。わたしは彼女のそばに座りました。わたしに気がついた彼女は、ぶるぶると震えだしました。そうでしょう、わたしにあんな事をしたのですから。

わたしは、彼女の猿轡を外しました。彼女になぜこんなことをしたのか聞きたかったからです。

「ジュディなぜこんなことをするの。」

開口一番、彼女が叫んだ言葉がこれでした。

「あなたこそ、あかねに化けてわたしを縛ったくせに。あなたこそ誰よ。」

わたしの剣幕に彼女はきょとんとしました。そして、わたしに恐る恐る聞いたのです。

「もしかして、さっきまでのジュディとは違うの?」

「それはどういうこと。わたしはジュディよ。見たら判るでしょう。」

「鏡を見て御覧なさい。」

わたしは、彼女の言葉が気になり、わたしは洗面所の前に立った。そこに映し出されていたのは、あかねだった。顔ばかりではなくスタイルもあかねそのものだった。そこには、わたしはいなかった。

わたしは、張り裂けんばかりの悲鳴をあげ、そして、気を失った。

 

それから、わたし達は、わたしの悲鳴を聞きつけた人に発見された。だが、姿の入替ったわたし達の話をすぐには信じてはもらえなかったが、声が入替っている事と、被されていたマスクが数日後、溶けて元の姿に戻ったところから、何とか信じてもらえた。

いったい誰がという事だが、警察の中では部外秘になっている噂があって、その人物の仕業だろうという事だった。

その人物とは、怪人福助二世。