青蛙堂シリーズ

 わたしは、またあの路地を入り、あの店に来てしまった。いつものように雑然と並べられた(と言うよりも、ただ、おきっぱなしの)の本の中から、一冊の奇妙な本を取り出した。

 それは、日本語に訳すとこうなった「不思議の国のアリスン」。そして、その内容は、こんなものだった。

 

第二話「Alicen’s Adventures in Wonderland」

(『Alice Adventures in Wonderland』より)

 

 アリスンは、その時、池のそばにある土手の草の上で大好きな一番上のお姉さまのひざを枕にすやすやと眠っていました。大好きなお姉さまがお嫁に行く事は辛いのですが、それを言うとお姉さまが悲しそうな顔をなさるので、アリスンは言う事ができませんでした。だから、こうして大好きなお姉さまのひざの上で眠るしかないのです。この間だけはお姉さまはアリスンのお姉さまだからです。

 「まあ、アリスンたら、眠ってしまっているわ。困った子ね。」

 お姉さまはそっと優しくアリスンの小さな頭を持ち上げて、自分のひざをどかすと、かわりにハンカチーフで包んだご本をその下に置きました。アリスンが起きるまでそっとして置きたかったのですが、婚約者のロバートが土手の上で手招きをしていたのでそうもしておられません。お姉さまは眠っているアリスンの事も気にはなりましたが、ロバートのほうに静かに駆けて行ってしまいました。そんなことは知らずにアリスンは、すやすやと気持ちよさそうに眠っていました。

 

 アリスンが目を覚ますとお姉さまは居ず、アリスンは一人ぼっちでした。アリスンはまだ、しっかりと開かない目を擦りながらあたりを見回しました。でも、何処にもお姉さまの姿はありませんでした。

 「おねえちゃま。」

 アリスンは心細くなって泣きそうになりました。と、そのときです。土手の向こうから何かがやって来ました。

 それは、輝くような銀髪にシルクハットを被り、大きな胸で張り詰めた黒いチョッキのお尻のあたりには丸くふわふわのパフのような尻尾をつけて、懐中時計を手に持った綺麗なお姉さんでした。銀髪の頭からにょきっと出た白く長いウサギの耳は、シルクハットが落ちないように抑えていました。

 「大変だわ、大変だわ。遅れては大変。女王様にまたくっ付けられてしまう。」

 そのウサギのおねえさんは、その細く長い足でホッピングを器用に操りながら飛び跳ねて、アリスンの前を通り過ぎていきました。でもあまりに急いでいたので何か落としたのにも気づきませんでした。アリスンもすぐにはそれに気づきませんでしたが、ウサギのおねえさんが通り過ぎた跡を眺めていてそれを見つけ、近づいて見ました。それは、紋章の入った招待状でした。

 「3月ウサギ殿。

   我が美しくすばらしく慈悲深き白の女王陛下のお茶会に貴殿をご招待いたします。もし、時間に遅れたり、欠席をした場合には、処罰を受ける事となります。また、招待状がない者は、城に入れず、処罰を受けることとなりますので十分お気をつけください。当方はそれでもかまわないのですが念のため、申し送りいたします。

                                                   白の女王陛下側近・白の僧侶より 」

 大変です。これを持っていないとさっきのウサギのおねえさんは処罰されてしまいます。アリスンは、その招待状を手に握り締めると、ウサギのおねえさんの後を追い掛けました。

 ホッピングに乗ったウサギのおねえさんの姿はもう見えなくなっていました。困ってしまったアリスンが、何気なく地面を見ますとそこには、小さく丸いあなぽこが転々と空いているではありませんか。それは、あのホッピングの跡に違いありません。アリスンはその穴をたどっていきました。

 すると、その跡は、小さな穴の中に消えていました。その穴は大人では入れないでしょうが、まだ小さなアリスンにはどうにか入れそうです。アリスンは、迷いましたが、何処となく大好きなお姉さまに似たウサギのおねえさんの姿を思い出し、この穴の中に飛び込みました。

 この穴はかなり深くアリスンは何処までも落ちていきました。最初は真っ暗で怖かったのですが、だんだん目が慣れてくると周りに色んなものが見えてきました。きれいな金の鉱脈とか、むかしむかしの動物の骨とか、ヒョッコリと顔を出したモグラの親子とか。ただ落ちていくだけなのですが、アリスンは退屈しませんでした。

 あれからどれくらい落ちたでしょうか。アリスンは、厚く降り積もった枯葉のクッションの上にぷわんと落ちました。そのクッションがあまりにも柔らかだったので、アリスンはケガ一つすることはありませんでした。

 枯葉のクッションの少し上にドアのようなものがありました。でも小さなアリスンには届きません。かしこいアリスンはあきらめたりせずに、枯葉のクッションの上で飛び跳ねて、そのドアのところまでトランポリンのように飛び上がりました。そして、そのドアを開けると、その中に入っていきました。

 そのドアのところにはプレートに何か書いてあったのですが、アリスンにはまだ読めませんでした。そこにはこう書いてあったのです。ただ何箇所かは、削れて読むことはできませんでした。

 『ここを通る者は××を×××ことになる。こころして通れ。』

 

 アリスンは、ドアを出るとテーブルが置いてある部屋に出ました。反対側の壁にはアリスンが屈んで通れるだけのドアが一つありました。テーブルの上には、冷たいジュースの入ったコップと5個のクッキーののった小皿が置いてありました。

 冷たいジュースの入ったコップの下には『わたしをのんで。』と書かれたカードが、クッキーののったお皿の前には、『ぼくをたべろ。』と書かれたカードが置いてありました。急いであのウサギのおねえさんの後を追わなくてはいけないのですが、追い掛けてきて喉が乾いていたアリスンは、その冷たいジュースを飲んでしまいました。それはラズベリージュースで、甘酸っぱくおいしいジュースでした。

 アリスンがそのジュースを飲み干し、ホッと一息をついたとき、アリスンの身体中がバリバリと音を立て始めました。そして、アリスンは見る見る大きくなっていきました。肩までだった髪はお尻のあたりまで伸び、胸は南洋にいるおじさんが送ってくる写真に写っているマンゴーのように大きく膨れ、腰は、お姉さまの仮縫いに使っている裁断用のマネキンのように引き締り、お尻はクッションのように柔らかになりました。服も縮み、お腹が出てしまいました。

 「これじゃあ、おうちにかえれないよ。」

 アリスンは悲しくなって泣き出してしまいました。どれくらい泣いたでしょう。アリスンが着ていた服はなみだでぐっしょりと濡れてしまいました。泣くだけ泣いたらお腹がすいてしまいました。そこで、アリスンは、テーブルの上のクッキーを手に取るとそれをかじって見ました。それは今までにたべた事もないくらいおいしいクッキーでした。

 アリスンはあっという間に2個のクッキーを食べてしまいました。そして、残りをポケットに入れました。すると、今度は、ぎゅうぎゅうといって、体が縮みはじめました。そして、アリスンは元の小さな男の子に戻ることができました。そこで、アリスンは、元の小さな身体で反対側にあるドアをくぐってその部屋を出て行きました。

 ドアから出るとそこは、広々とした野原でした。見渡し限りの草原で、何もありませんでした。ん?目の錯覚でしょう。こんなところにあんなものがあるなんて。でも・・・ちょっと近づいてみましょう。

 それは純白のレースのテーブルクロスをかけたテーブルを囲んでお茶会をしている人たちがいるのです。肩まである黒髪をすその所で内側にカールして、白地に黒のぶち柄でスリットの入ったドレスではちきれんばかりの巨乳を包んだ人や、輝くばかりの金髪に赤い羽根飾りをつけて、スリムな白い鳥の羽をあしらったドレスを着た人、それに、ブラウンのくせ毛にカチューシャをしてぽっちゃりとして、裾にかわいいフリルのついたドレスを着た人が、テーブルを囲んでお茶をしていました。

 「なんだこのお茶は、ブランデーがたらん。おい、そこのブランデーを取ってくれ。」

 ぶち柄ドレスの女の人が怒鳴っていました。

 「はいよ。」

 羽をあしらったドレスの女の人が、テーブルの上にあった瓶を取ってあげました。

 「ありがとよ。」

 とってもらったぶち柄のドレスを着た女の人はそれをティーカップに注ぐと一息に飲んでしまいました。

 「かあ、やっぱ、酒はそのまま飲んだほうがうめえや。卸や茶だか、なんだかしらねえが、紅茶に数滴なんざ、ケチては、うまいものもうまくならねえや。なあそうだろう。」

 いつのまにかブランデーのボトルを1/3呑んでしまっていた鳥の羽のドレスを着た女の人が真っ赤な顔をしてうなずきました。

 「コンちくしょう。いつの間にそんなに呑んだのだ。おれにもよこせ。」

 二人はブランデーの瓶を取り合い始めました。

 かわいいフリルのついたドレスを着た女の人は、またかといった風に大きなため息をつきました。そして、二人の取り合いから目をそらした時、そばで、唖然として立っているアリスンに気がつきました。道を聞こうとしたら取り合いを始めるものですからアリスンは聞きそびれてしまったのです。

 「あら、かわいいぼっちゃん。どうしたの。」

 フリルのドレスを着た女の人が、アリスンに尋ねました。突然声をかけられて、アリスンはびっくりしましたが、行儀よく答えました。

 「ハイ、ぼくのなは、アリスンです。おとしものをとどけようとしているのですが、みちにまよってしまって、ここを、ホッピングにのったおねえさんはとおりませんでしたか。」

 「それは、ウサギの格好をした奴か。」

 ぶち柄ドレスの女の人が、取り上げたブランデーの瓶を口に当てながら聞きました。

 「そうです。」

 「そいつなら、お城の方に行ったわよ。」

 鳥の羽をあしらったドレスの女の人がブランデーの瓶を取り返して言いました。

 「お城はこの道を行ったところよ。きょうはごたごたしているからまた今度お茶会に誘うね。」

 フリルの付いたドレスの女の人がすまなさそうにそう教えてくれました。アリスンはお礼を言うと教えられた道を進んでいきました。

 しばらく行くと大きな赤と白のまだらのお城が見えてきました。アリスンは、その奇妙な柄のお城に向かって歩いていきました。

 門につくと、門番の人のところに行きました。門番は、背の高い体格のいい、きれいな男の人でした。普通、門番というとごつく怖い顔をした人なのですが、この国では違うのでしょう。アリスンは門番の人に言いました。

 「あの、おとしものをとどけにきたのですが・・・」

 そう言って、アリスンが拾った招待状を見せると、なにを思ったのか門番はアリスンを城の中へと入れてしまいました。

アリスンが戻ろうとすると門は閉まってしまいました。

 城の中は変な匂いで一杯でした。そして、お城の周りのお花畑では、白いバラを赤く塗っている女の人たちがいました。アリスンはその人たちに近づいていきました。

 「まったく、困った事をしてくれたものだわ。こんなところを女王陛下に見つかったら大変よ。」

 「そうよ。またくっ付けられてしまうわ。わたしこれで、3回目よ。」

 「あなたはまだいいわよ。わたしなんか8回目よ。この一年でね。」

 いや、わたしは何回目だ。と、わいわいがやがや言い合いが始まりました。

そんな会話をしている人たちにアリスンは声をかけました。

 「あの、すみません。何をしているのですか。」

 女の人たちはびっくりして持っていた赤いペンキの入ったバケツと刷毛を放りだしてしまいました。それは、運悪く侍女を連れて通りかかった女王の頭に落ちてしまいました。白金とダイアモンドで作られた王冠は愚か、その燃えるように赤い髪、雪のように白い肌、白テンで作られた純白のガウンにもべったりと赤のペンキがついてしまいました。

 女王はそのお美しい顔を恐ろしき悪魔のようにされて叫ばれました。

 「お前たちは、なぜ、美しい白きバラを赤く塗っておる。くっ付けておしまい。」

 ペンキを塗っていた女の人たちは恐る恐る女王に申し上げました。

 「あの、陛下お恐れながら申し上げますが、わたくし達は忌まわしき赤いバラを白く塗っていたのですが、それに、もうくっ付けられているのですが・・・」

 「それは、赤のペンキじゃ。では、牢にいれておしまい。衛兵、引っ立てよ。」

 その女の人たちは、赤白が判別できない色盲だったのです。侍女たちは、その女の人たちを両脇から掴むと連れて行ってしまいました。侍女に見えた人たちは、女王陛下を警護する衛兵だったのです。

 一人残されたアリスンは、女王の前に進み出るとふかぶかと頭を下げました。

 「じょおうへいか。あのかたたちはわるくはありません。ぼく、いえ、わたくしが、おどろかしたので、それで・・・」

 「お前は誰じゃ。」

 「は、はい、アリスンと申します。」

 「あれは、お前のせいだというのだな。衛兵、こやつも引っ立てなさい。」

 アリスンも両脇から抱え上げられて引っ立てられていきました。

 そして、アリスンは他の人たちと同じように牢に入れられてしまいました。その中には女の人がたくさん入れられていました。

 「あなたは何度目め。」

 「これで6回目よ。おかげでこんなに筋肉がついちゃった。あなたは?」

 力瘤を見せながらその女の人はほかに人に聞きました。

 「きょうは、ドジはすまいと思っていたのに、また捕まってしまったわ。」

 「こう何度もされたのではとれなくなってしまうわよ。」

 「そうよそうよ。」

 牢の中ではそんな話が飛び交っていました。アリスンは怖くなって隅で小さくなっていました。

 「あなた見かけない子ね、初めて。心配することはないわよ。すぐ済むし、後でもとに戻してもらえるから。」

 アリスンが震えているのに気がついた人が優しく声をかけてくれました。でも、アリスンの不安は消えませんでした。

 「お前とお前出ろ。」

 牢番から指名されて数人の女の人が出て行きました。そして、その女の人たちは戻ってきませんでした。また、門番が来て、女の人たちを連れて行きました。たくさんいた女の人たちが両手で数えられるくらいになったとき、アリスンも一緒に連れていかれました。

 アリスンが連れて行かれたのはお城の中庭で、そこには、白の女王陛下とその側近達。それにスカートをはいた、見知らぬ男の人たちが立っていました。

 「そのものたちの処刑は終わった。さあ、連れて行きなさい。」

 鎧を着けたきれいな女の人に連れられて、男の人たちはどこかに連れていかれました。

 「次のものを連れてきなさい。」

 アリスン達は女王陛下の前に連れていかれました。

 「この者達は、女王陛下のお身体に忌まわしい赤のペンキをかけた者達です。」

 先ほどは暗くて気づきませんでしたが、確かにあの時、白いバラを赤く塗っていた人たちでした。

 「くっ付けて押しまいなさい。」

 彼女達はやっぱりという顔をしました。そして、頷きあうとスカートをめくりました。

 アリスンはどうしていいかわからずに呆然として、立っていました。

 「そこな子。なぜ、ズボンを下げぬ。罰を受けぬつもりか。」

 女王は怒ってアリスンを怒鳴りました。

 「お嬢ちゃん。ただちょっとの間、男の子になるだけよ。女王陛下の怒りが収まればすぐに女の子に戻れるから我慢しなさい。」

 その時初めてアリスンは、自分が女の子と思われていることを知りました。

 「ぼくは、おとこのこです。ペンキをかけたのはわるいとおもっていますが、おとこのこにされるとはどういうことですか。」

 「この国では、男は女の奴隷なのだ。だから、罪を犯したものは男にされるのだ。お前は男だそうだから、そのままだ。」

 そう女王が言った時、あの、ウサギのおねえさんが両脇を門番につかまれて女王陛下の前に連れてこられました。

 「女王陛下。こやつは、招待状もないのに女王様のお茶会に招待されたと申して城に入ろうとしておりました。」

 「こやつを処刑しなさい。」

 「女王陛下。確かに招待状を頂いたのです。でもどこかに落としたみたいで・・・」

 「処刑しなさい。」

 ウサギのおねえさんの言葉を女王はまったく聞いていませんでした。

 「待って下さい。そのおねえさんの招待状はここにあります。」

 そう言うとアリスンは、拾った招待状を差し出しました。側近の一人がそれを受け取ると、女王様に差し出しました。

 「確かに、わたしが出させた招待状だ。そのほうをお茶会の開場に連れて参れ。これで、メンバーがそろった。お茶会を始めるぞ。処刑はそのあとじゃ。」

 衛兵はアリスンを両側から担ぐと、中庭に設置されていたお茶会の会場に連れて行った。あとには処刑途中の者と、ウサギのおねえさんが残された。

 「あの、ぼくはしょうたいされていないのですが・・・」

 「招待されておらぬのに、なぜこの招待状を持っておる。わたしは、この招待状を持っておるものを招待したのだ。」

 確かに間違ってはいないようですが、アリスンは何かが違う気がしていました。

 お茶会のテーブルには、あのおかしなお茶会をしていた3人のおねえさんがすでに坐っていました。

 側近が、しずしずと、女王とアリスンのティーカップに紅茶を注ぎました。

 「うむ、お茶会をはじめるとしよう。さて、きょうのおやつはなんだ。」

 女王のその言葉に側近達は顔を見合わせた。処刑騒ぎでおやつの準備を忘れたのだ。

 「どうした。わたしに客の前で恥をかかすのか。」

 女王の口調がきつくなってきた時、アリスンは、服のポケットの中を探った。そしれ、クッキーを3枚見つけた。

 「じょおうでんか。このクッキーをどうぞ。」

 そう言って、女王の前に差し出した。

 「おお、クッキーではないかわたしの大好物じゃ。」

 そう言うとそのクッキーを3枚ともほおばってしまった。バリ、シャクシャク。と噛み砕くと飲み込んでしまった。すると、女王の身体に変化が起こりだした。そのふくよかな胸はしぼみ、厚い胸板と変わり、雪のように白い肌は、焦がしすぎたもちのように黒く硬そうになり、白魚のような白い指は、ゴボウのような黒くごつごつした指に変わった。あっという間に女王はむくつけき男になってしまった。

 「じょおうへいか。あなたはおとこになったのだからあなたのめいれいはだれもききませんよ。おんながえらいとか、おとこはどれいだとか、そんなことはありません。おとうさんの、おかあさんもふたりがいて、ひとりなのですから。」

 そう言いながら、アリスンはふと、お姉さまのことを思い出していました。お姉さまも彼がいて一人前なのでしょう。そう思うとアリスンは無性にお姉さまに会いたくなってきました。でも、どう帰ったらいいかわからずに、アリスンは泣き出してしまいました。尽きる事もないくらいにアリスンは泣いたので、この国は水浸しになり、アリスンは、流されていってしまいました。そして、川から海へそして、地の果てまで流されて、その世界から落っこちてしまいました。

 

 すると、どうでしょう。お姉さまと一緒にいた土手に帰ってきていました。お姉さまは、彼と一緒に心配そうにありスンの顔を覗き込んでいました。アリスンが、目を開けるとお姉さまはアリスンをしっかりと抱きしめました。

 「ごめんなさいね、アリスン。お姉さんが、目を離してしまったから、あなたはこの先の池に落ちてしまったの。死んだかと思ったわ。」

 「ごめんなさい、おねえさま。おにいさま、おねえさまを、よろしくおねがいいたします。」

 ずぶ濡れの彼にアリスンはそう言いました。

 「もう、おしゃまさんね。」

 お姉さまは、その赤く長い髪や、白いドレスが濡れるのもかまわずにアリスンを強く抱きしめました。

 

 

あとがき

参考文献はなんとルイス・キャロルの「不思議な国のアリス」と「鏡の国のアリス」です。何処が、という突っ込みはやめましょう。それは、本人が一番自覚しているからです。

それと、登場人物にはモデルはいません。ある3人組を除いては・・・

それでは、また。(物が飛んでこないうちに逃げます。)