SWAP?とらぶる!?


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 名古屋で大惨事!!アイドルが放電!

 十六日午後零時三十分ごろ、名古屋市中村区名鉄ビル前にある2体の巨大人形(愛称・ななちゃん・めりーちゃん)の間に放電現象が起こり、2体の人形の間にいた十数人の通行人がその被害にあった。

 中村署の調べによると、工事中だったアーケードの照明の電線が何かの原因で、両人形に落ち、人形の間で放電現象が起こった模様。同署では、そのとき作業を行っていた電気工事請負業者を、業務上過失の疑いで調べている。

(名古屋新聞 3月16日夕刊より)





 「こんばんは。イブニング・ニュースの時間です。

 本日、正午。名鉄ビル前のななちゃん、めりーちゃんの間で放電が起こり、その間を通行中だった25名の方が、感電し、病院に運ばれました。警察では、作業中だったアーケードの照明への電線が、両人形に落ち、人形の間に放電が起こったと考え、電気工事人に事情を聞いています。

 なお、病院に運ばれた方々には、異常はなかったのですが、突然のショックのために意識の混乱が見られ、しばらく入院することになりました。

 次のニュースです。本日、午後2時ごろ、中区生涯教育センターにて国際TSF連盟中部支部主催の第3回TSFシンポジウムが、開催されました。今回は・・・・・」

CNC3月16日午後6時40分のニュースより)





 名鉄ビル前放電事件 電気工事作業者を逮捕

 16日正午ごろに発生した放電事件を捜査していた中村署はアーケードの照明工事をしていた電気工事請負業 笹田輝彦(51)他作業員3名を、監督不行き届きおよび、業務上過失で、名古屋地検に書類送検した。笹田は、工事当時、送電停止を確認せずに作業を行い、送電中の電線を両人形の肩にかけたまま作業を行い、今回の事故を発生させた疑い。笹田は、今回の過失を否定している。


(名古屋新聞 3月18日朝刊より)




 今世紀最大の謎! わたしの体は彼のもの?彼の体は・・・

 わが誌の優秀な記者の調査によると、このときの事故により信じられない出来事が起こっていることが判明した。それは、映画などでしかお目にかかれない「入れ替わり」現象が起こったという新事実だ。本誌は、身体が入れ替わったという男女にインタビューすることに成功した。

 向こうの指定した場所に、本誌の記者は早めに着いたのか、らしき人物はそこにはいなかった。約束の時間を過ぎても誰の現れそうもないのに本誌の記者は、ガセネタを掴まされたと、怒りながらその場を離れようとしたとき、記者に声をかけるものがいた。

 「あの、遅れてすみません。ご連絡させていただいたものです。」

 そこに現れたのは。白く美しい毛並みをした猫を抱いた長い黒髪を肩までたらし、純白のワンピースにつばの広い白い帽子をかぶった清純そうな絵画に出てきそうな良家の令嬢のような美少女でした。

 「あ、いえ、とんでもございません。今来たところです。ここではなんですから、近くの喫茶店でも入りましょうか。」

 「いえ、できれば、どこか見晴らしのいい公園のほうがよろしいのですが・・・」

 少女は、何か気になることがあるのか、視線を絶えず回りに向けていた。本誌の記者は、その美しい顔に似合わないその行動に異様な感じを受けたという。少女の言うとおりに、近くのあたりの見晴らしのいい公園のベンチに座った。美少女とさえないおっさんのツーショットだから、公園でくつろぐ疲れたサラリーマンやカップルなどの視線を集めた。誇らしげになるというよりも、あまりのギャップに記者は緊張しまくった。

 「あ、あの〜大体のお話はお聞きしたのですが。あの、直接、詳しいお話しをお聞きしたいのですが・・・」

 「信じてもらえていないとは思っております。このわたくしも信じられないのですから。でも、この子を見ておりますと、事実であったことを確信するのです。」

 そういって、少女は、ひざに乗せた猫の頭を優しくなでた。自分のことを言われているのが分かるのか、その猫が鳴いた。

 「どこからお話すればいいのか分かりませんが、わたくしをご覧になってどう思われます。わたくし、男性に見えます。」

 記者は、少女の挙動不審の原因が分かったような気がした。彼女の頭はおかしいのだ。記者はその場を何とかごまかして逃げようとした。

 「こんなことを急に申しましたら、頭がおかしいと思われますわね。でも、これは真実なのです。」

 「男だと申されますが、お言葉遣いは、上品な女性でございますよ。」

 ついつられて、記者の言葉遣いもおかしくなった。

 「それはですね。この姿になって3ヶ月。病院に入れられないようにするうちにこうなってしまいましたの。それにこの子も最近は本当に猫になってしまって、わたくしがあの出来事についてお話できるのも、これが最後のような気がしましたの。」

 「はあ、それで、いったい何が起こったのですか。」

 とにかく、話を聞いて、早いトコこの場を去ることにして、記者は少女に話をせかした。

 「そうですわね。あれは、3ヶ月前。わたくしは友人と待ち合わせをして、MELSA前にあるまりーちゃんの足元で待っておりました。すると、友人が、Meitetsuセブンの前にあるななちゃんのほうから来るのが見えましたので、わたくしは、まりーちゃんの前に出たのでございます。すると、そのとき、わたくしの頭の上のほうで、何か音がしまして、ふと見上げかけたとき、何かからだの中を貫いて、わたくしは、前へと弾き飛ばされました。そのときちょうど黒塗りのリムジンから降りてきたこの子にぶつかったのです。(そういうと、少女は猫の頭を優しくなでた)そして、なにか壁のような物にぶつかって、わたくしは、気を失ってしまいました。

 そして、わたくしが、気がついたのは病院のベッドの上でした。

 まるで、高級ホテルのような部屋で、わたくしは、驚きました。そして、起き上がると何かが違っておりました。わたくしの周りには、見知らぬ方々が取り囲み、わたくしが目を覚ますとその方々は狂喜乱舞なさいました。そして、わたくしのそばの小さなペット用のベッドには、この子が横たわっていたのです。

 わたくしは状況が理解できずにいました。ふと、髪が顔にかかっているのに気づきました。先日、散髪に行ったばかりで、これほど長いはずはありません。それより、顔にかかるほど長く髪を伸ばしたことがありませんでした。

 『なんで?』

 わたくしは、髪を触りました。さらさらの髪。そのとき、胸に重さを感じ、前かがみになっている自分に気づきました。そっと胸に手をやると、そこにはやわらかい重いふくらみがあった。

 『そんな馬鹿な。なんでこんなものが、僕の胸にあるんだ。いったい・・・まさか!』

 下のほうに手をやりますと、あるべきはずのものはありませんでした。そして、そこには・・・」

 少女は、顔を赤らめ下を向いてしまった。自分の言ったことに恥ずかしくなったのだろう。

 「わたくしは、混乱してしまいました。どうして、なんで、どうしたらいいのかわ
からなくなってしまいました。そんなわたくしに気づいた医師が、わたくしに、鎮静剤を注射してしまいました。

 『ひどいショックで、一時的な錯乱状態になられたのでしょう。意識が戻られたので、もう大丈夫です。さあ、少しオヤスミなさい。』

 そんな医師の声を聞きながら、わたくしの目蓋は重くなり閉じてしまいました。気が付くとわたくしは、白く濃厚な霧の中に立っていました。どこからともなく誰かが呼ぶ声がしました。

 『そこにいるあなた。聞こえるなら返事をして。』

 『だれだ。どこにいるんだ。』

 『あなたのすぐそばです。目を凝らしてくださいませ。』

 わたくしは、言われるように目を凝らして、声のしたほうを見ました。すると、今まで濃かった霧が晴れ、そこには、一人の美しい少女が立っていました。まるで天使のようでした。それが・・」

 「今の君かい。」

 少女は、頷きました。

 「少女は、わたくしを見つめ、問い掛けました。

 『あなたはどなた?』

 『僕は、四谷陽一。東南大学の学生です。あなたは?』

 『東南大学?申し訳ございません。存じ上げません。申し遅れましたが、わたくしは、公光寺幸美。白鳥女学園高等部2年生でございます。どうか、わたくしのからだをお返しください。』

 『うちの大学は五流大学だから知らなくても仕方がないさ。でも、白鳥ということは、君はお嬢様かい。まてよ、公光寺といえば、公光寺コンチェルンのあの公光寺かい。』

 『そうです。わたくしの身体を返してくださいますか。』

 『身体を返せといわれても、どうすればいいかわからないし、それに、僕はもう女の子になって・・・いない!?』

 そこでは、わたくしは、元の姿のままだったのです。

 『それは、ここは、意識の世界だからですわ。何かの出来事で、わたくしは、自分の身体からはじき出され、抱いていたユキの身体に入ってしまいましたの。あなたもそうでしょう。』

 そう言われて、わたくしは、弾き飛ばされたときに彼女が白い猫を抱いていたことを思い出しました。

 『じゃあ、もしかして、今の君は、猫かい。僕のそばに横たわっていた。』

 『そうです。わたくしは、元に戻りたい。』

 『それは僕も一緒だ。だが、僕の身体はどこにあるんだ。探してくれないか。』

 『はい、それはもちろんですわ。さあ、入れ替わりましょう。』

 『ああ、女の子の身体よりも猫の身体のほうがマシかもしれないからな。』

 『まあ、わたくしの身体が不満ですの。』

 お嬢様は、膨れてしまいましたの。

 『そういう訳じゃなくて、なれないからさ。猫ならまだごまかしが利きそうだ。』

 『そういうことですの。わかりましたわ。』

 『ところで、どうやれば入れ替われるんだい。』

 『お互いにいる場所を変わればいいのではないでしょうか。』

 彼女の言葉にわたくしは、初めて、彼女とわたくしの間に狭い亀裂があるのに気づきました。わたくしと、彼女はその亀裂に近づき、お互いに渡ろうとしたときです。狭かった亀裂が渡ることができないほどに広がったのです。後ろに下がると元に戻ります。でも、近づくと広がります。そこで、一人ずつ渡ろうとしたのですが、結果は同じでした。

 『渡ることができないみたいだ。どうしよう。』

 『元に戻れる方法がわかるまで、陽一様には、わたくしを演じていただくしかないようですわね。』

 『君を演じるといっても、僕は君のことは何も知らないし、女のこのことなんてなおさらだよ。』

 『無理なら病院に入れられますわよ。わたくしもそうなってほしくはありません。』

 そうです。わたくしが、不審な行動をしたらおかしくなったと思われ、病院に入れられるのは間違いないでしょう。わたくしは、彼女を演じることにしました。

 『でもどうやって演じればいいのか?』

 『夢の中では、二人は、会話ができそうですので、眠っているときにわたくしのことをお話しますので、それで、わたくしになってください。』

 そのときから、彼女のわたくし教育が始まりました。最初は失敗もしましたが。このごろでは、自然にわたくしを演じられるようになりましたの。ところが、最近、夢で会う彼女の姿は、徐々にユキになり、わたくしも、男の姿から、今の姿に変わってきました。ですから、このことをお伝えできるのも今のうちと思いまして、お会いいただきましたの。わたくしと、彼女の姿が今の姿になったら、このことは忘れてしまいそうですから。」

 記者は、その不可思議な話を聞き終わっても、彼女の正常さを疑っていた。

 「どなたかに聞いていただきたかっただけですから、こんな話、信じてもらえなくても仕方がございません。」

 語り終えた彼女の顔は晴れ晴れとなっていた。そこに、二人の黒いスーツ姿の男が近づいてきた。

 「お嬢さま。用件はお済でしょうか。」

 「ハイ、無理を言ってすみませんでした。それでは参りましょうか。ありがとうございました。」

 そういうと少女は、二人の男にはさまれて、その場を去っていった。信じがたい話だが、これを語るときの彼女の顔は真剣そのものだった。だから、一語一句かえずに、彼女の言葉を乗せることにした。

 その後、彼女に二度と会うことはなかった。

(週刊ユウヒ芸能 7月26日号より)




 雑誌社社長、放火容疑で逮捕

 7月22日午後3時ごろ、名古屋市中区にある雑誌社「ユウヒ芸能」社長 優雅 守(ゆうが まもる)(48)が、ホウケイビル3階にある自社事務所を放火した疑いで、中警察署に逮捕された。優雅容疑者は、傲慢経営でしられ、かなりの借金があり、その支払いのために、火災保険を得るために事務所に放火したもようで、近く身柄は名古屋地方検事局へと引き渡される。

(名古屋新聞7月24日朝刊より)





『すべての真実は、闇の中』

(クフ王のピラミッドより発掘された壁画より)





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あとがき

 このあいだ、名古屋OFF会に行ったときに聞いた「ななちゃん」(名古屋の待ち合わせのシンボル)は、双子だったという話から思いつきました。形態は、星新一氏のデビュー作「セキストラ」みたいなものが書きたいと思っていたもので・・・

(「セキストラ」は、通信社の記事の形式で物語が進む話で、面白いですよ。)

 わたしの「セキストラ」は、とても、本家には地球とα―ケンタウリ星ほどに違いますが(それ以上かな。いや比べること自体問題か)

 いかがでしょう。こんなTSFもあってもいいかも。