アルバイト

「すいません。遅くなりました。」

俺は、従業員通用口からそ〜〜と顔を出して更衣室を覗いた。そのとき運悪く俺はマネージャーに見つかってしまった。

「この呆け介。今何時だと思っていやがるんだ。」

店のマネージャーが、俺の顔を見ると烈火のごとく怒った。

「すみません。バイトの日なのを忘れていました。すみません。」

「忘れていただと、お前は仕事を何だと考えているんだ。」

つい、本当のことを言ってしまった俺は、マネージャーの怒りに油を注いでしまった。

「まあまあマネージャー。あまり怒っていても仕方がないでしょう。開店まであまり時間がないのだから、準備しなくては・・・」

「由紀(よしのり)さんがそう言うのなら。こら、バイト。お前の仕事は由紀さんがしてくれたのだから、礼をいっておけよ。」

そう言うとマネージャーは更衣室を出て行った。由紀さんはこの店の古株で、店長に一目置かれていた。

「さて、バイト。何で遅れたかは聞いたが、あまりにもバカ正直に答えるなよな。」

「ハイ、今度からは気をつけます。」

「そう何度も遅刻されてたまるか。」

そう言いながら由紀さんは豪快に笑った。由紀さんは今年45になる人で、ここの店が開店したときからの人だった。

この店は、男性が20人いて、女性は、まったくいなかった。由紀さんも、これだけ言うと女性のように聞こえるけど、立派な男性で、体格もかなりよく。頼れる兄貴というよりも、親爺という感じだった。それだけ、やさしくて厳しい人だった。

そんな話をしている間にほかの人たちも、次々にやって来て、更衣室の中は、にぎわってきた。

「さあ、みんな。今日も一日がんばるぞ。」

「お〜〜〜。」

由紀さんの掛け声に、更衣室の男たちは声を上げた。

各自、思い思いにロッカーを開けると、着ている服をすべて脱ぎだした。俺も、彼らに遅れないように服を脱ぎ、脱いだ服をロッカーの中のハンガーにかけた。さらに、シャツとパンツを脱ぐと素っ裸になった。股の間では、抑えるものがなくなった息子が、ぷらぷらと遊んでいた。

俺は、ロッカーの中のハンガーに掛けてある肌色のゴムのような素材でできたボディタイツを取り出した。それは、手や足の爪先まできれいに分かれ、すっぽりと包み込むタイプで、俺の体よりは2回りはちいさかった。俺の周りの人たちは、これと同じ物を手早く着込んでいた。

俺は、首のところを広げると、かかとのところまでめくり右足からその中に差し込んだ。ゴムのような伸縮が自在な素材なのだが、中にすべりをよくするパウダーがつけてあるので思っているほどは履きにくくはない。履いた右足はきゅ〜と引き締められて窮屈だった。まるで薄いゴムのストッキングをはいたようになった。そして、左足にも同じように履いた。

俺は、つま先から付け根まで両手を沿えて足をさすってしわを伸ばし、タイツを足にフィットさせた。俺の足はまるですね毛を剃ったようだった。男の足はきれいだと聞いたことがあるが、毎回自分の足を見ているだけなのに俺の息子はいきり立っていた。いつものこととはいえ、俺はこの処置に戸惑ってしまう。

だが、時間がないので、俺は、パンティストッキングを履くように腰まであげた。タイツは小さく、窮屈に息子を抑えた。はちきれんばかりに元気な息子を感じながらも、俺はそのタイツを着込んだ。尻には、パットが入っていて、さらに股間や、お腹を締め付けた。そして、ウエストは息ができないほどに引き締められた。

両手を差込、首の付け根まで着込むとロッカーに備え付けられた鏡に自分の姿を映してみた。そこには、小さなダッチワイフの首だけを取って無理やり着込んだような男の姿があった。胸は思いっきり引っ張られ、パッとのはいった膨らみを無残な形に変えていた。毎回思うのだがなんとも異様な光景だ。はちきれそうなそのタイツを見るといつものことながら、破れないこのタイツが不思議に思えた。

体中を締め付けられて、窮屈な体を無理に動かして、俺はロッカーの中のマネキンの首をつかみ取り出した。そして、今までかぶっていたカツラを自分の頭から剥ぎ取るとマネキンの首にかぶせてあったカツラつきのフルフェイスマスクを剥がした。俺の頭は毛の一本もないスキンヘッドだった。その顔は、○田愛を模してあるが、あまり似てはいなかった。どう見ても口を開けていないダッチワイフの首といった感じだった。俺はそれをスキンヘッドの頭に被ると目鼻を合わせ、しわを伸ばして、顔にフィットさせた。鏡の中には、不細工なダッチワイフが立っていた。タイツとマスクの境目を隠すように、俺は、ロッカーの鏡の下にある小物置に置いてあった小さなクリームの容器を手に取ると、境目に塗った。クリームを塗ったところからその後は消え、タイツとマスクはひとつになった。

すると今まできつかったタイツとマスクの感触が消えていった。もし、このときの俺を見ていた店以外の人がいたなら驚いただろう。俺の体は縮まり、顔も小さくなっていったからだ。クリームを塗って15秒後には、全裸の前〇愛が立っていた。股の間の感触も消え、胸も膨らみ、マスクとタイツは俺の体の一部になった。今の俺はどこから見ても前田○に瓜二つのかわいい女の子だった。このマスクとタイツは二つをクリームで繋ぐと着ている者を女性に変化させる働きがあった。だから今の俺は完全な女性なのだ。ただし、子供は作れないけどね。それに、もし脱いでなくしても、このクリームがなければただのダッチワイフの抜け殻でしかないのだ。このツールで男性を女性にして、過剰なサービスも可能にしたのがこの店の特徴だった。もちろん、関係省庁の手回しも怠っていなかった。

「よし、今日も一日がんばるぞ。」

そうつぶやくと、ロッカーの中のブラジャーやパンティ、それに、ドレスを取り出すと着込んだ。

「愛。行くわよ。お客様が待っているわ。」

ノリカそっくりの姿になった。由紀さんが、俺をせかした。

「は〜い。」

俺はできるだけ手早く着替えると、由紀さんの後を追った。

 

店内側の店の入り口には先輩たちが向かい合って立っていた。どの姿もどこかで見た美女ばかりだった。

「さあ、店を開けるわよ。」

由紀さんの言葉に全員姿勢を正した。

店のドアが開き、最初のお客様が入ってきた。

「いらっしゃいませ。karafuruへようこそ。」

 

こうして、おさわりOK。店外デートOK。料金は良心的(?)なキャバレー・カラフルの一日が始まった。

 

 

私評?

師匠、支障はございませんでしょうか。

ふと、昔書いた変身部分を使ってと思って書きましたが、うまくいきませんでした。次回は(次回があればですが・・・)もうすこしまともなものを書きたいです。

それでは、また。