恋人同士

 

「ユミ」

「カオルさん」

二人は、静かに歩み寄ると、相手を優しく抱いた。

「ユミ、ユミ、ユミ」

「カ、カオルさん・・・」

二人はお互いの名を呼び合いながら相手を強く抱きしめた。ふくよかな胸とあわれなほどふくらみのない胸をした美人カップル。二人の激しくお互いを求めながら抱擁しあう姿は、まるで、愛し合う美神を描いた一枚の絵画のようだった。

女と見まがうばかりの美貌の青年と、誰もが視線を奪われるほどの美貌を持った女性。その二人の愛し合う姿は、崇高な芸術を感じるほどだった。

だが、二人への視線を下げていくと、その様相は一変した。

ふくよかな胸をした美女の股間には、その美貌には似つかわしくないものが存在し、美青年の股間には、あるべきはずのものがなかった。

二人は、何度も重ねあった唇をゆっくりと離すと、女と見まがうばかりの美青年が囁いた。

「ユミ。これで僕達は結ばれるんだな」

「ええ、カオルさん。これで私たちは誰はばかることなく愛し合えるのよ」

美青年は美女にうれしそうに答えた。

「もうはなさないよ。ユミ」

「わたしもよ、カオルさん・・・」

女のように美しい容貌をした男色のカオルと男なら誰もが振り返るほどの美人で百合のユミ。同性愛者だった二人は出会い、そして、性癖を超えてお互いに愛し合ってしまった。だが、彼らの愛を拒むものがあった。

それは、皮肉にも自らの肉体だった。

いくら心では愛し合っていても、肉体的には相手の性を受け入れる事が出来なかった。二人は悩み苦しんだ。心では愛し合うふたり、だが肉体は、お互いを拒否しあった。結ばれる事が出来ないと分かっていても、どうしても別れることのできない二人はある究極の選択をした。

それは、お互いの性を取り替えること。

男だったカオルと、女だったユミはお互いの股間を交換し、自らの身体を相手の好むものへと作り変えた。

「ユミユミユミ」

「カオルさん、カオルさん、カオルさん」

ユミが新たに得た体の一部を、カオルの失った体の部分がやさしく包み込んだ。

「ア、ア、ア、ユ、ユミィ~~」

「カオルさ~ん」

それは言葉では、表す事のできない愛のいとなみ。そして、究極の真実の愛。