英明さんへの誕生日の贈り物作品。
ウィンブルドンの奇跡
「みなさん、ここ。ヘルデンブルドンでは、大変な番狂わせとなりました。優勝候補ヘルグや、ジゴッケンバウア〜が、敗れ去り、今回からの何でもOKのルールに助けられ、いつも初回戦で敗退していたズルインスキーが、決勝戦まで残り続けてしまいました。そして、対するは・・・ちょっとお待ちください。資料を探しますから、エ〜トどこだどこだ。彼の資料はどこだ。見つからん。エ〜イ、まったくの無名の選手が、最後まで残ってしまいました。果たしてどちらが優勝するのか予断を許しません。お〜い、はやく奴の資料を探せ。これじゃあ放送にならないぞ。」
観客席は、埋め尽くされ、階段はおろか、通路にまで、いっぱいの観客だった。
「勝てますかしら。かれ。」
「勝ってもらわないと、われわれが困ります。それもこれも、こいつのせいですけどね。」
「シュン。反省してます。お詫びの一升瓶の丸呑みうぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜っ。」
「すんな。」
一升瓶を丸呑みしようとした五分刈の男は、両側に立っていた男女に、袋叩きにあって、一升瓶を墓標とした。
「こいつは、反省というものがないのか。わたしたちをこのような目に合わしたのは、その一升瓶のせいだろうが。」
「わたしたち?あら、わたしの体に入って、『これが酔いというものですか。ふぁ〜〜い。』とかいって、踊りまくって、深酔いさせたのはどなたかしら?つ○りんどうさん。」
「いえ、あの、わたし、あまり飲めないもので、つい、楽しくなって・・・・すみません、S○llyさん。」
「いいのよ。つるり○どうさんの、働きで、この試合に出れたのだから。あとは、彼が勝ってくれるのを祈るだけですわ。」
「本当に、地獄に仏ですからね。」
「イヤ〜、もどれたら、祝杯を挙げますか。みんなで・・・」
「おまえは死んでろ。」
起き上がった五分刈の男を、また二人は葬った。
「まったく反省に色がないんだから。わたしの体と入れ替わって、一升瓶でがぶ飲みしたあげく、○るりんどうさんと入れ替わって、ウォッカを、大ジョッキで29杯飲んで、酔いつぶれていたわたしになったつるり○どうさんと、また入れ替わって、外回りから帰ってきた○明さんに、冷えた麦茶だといって、電気ブランわりのエチルアルコールを飲ませ、わたしたちにも、酔いがたらンとか言って、残っていたエチルを飲ませるんだもの。」
「ほんと、エチルって効くんですね。昇天するとはおもいませんでした。」
まじめにぼけるつるりん○うに、突っ込めないSa○lyであった。
金髪の目のつりあがったきつそうな美女と、ブルドックを押し潰したようなずんぐりむっくりの男が、試合の成り行きを見守っていた。
「メージョさま。ズルやン。今回はやりまんな。」
「当たり前よ。こんなことになったのもズルインスキーのせいですからね。『メージョさま。お仕置き逃れのいいアイデアが浮かびました。』って言うから任せたら、火薬の使いすぎで、この有様よ。ア〜〜ン、わたしの青春を返して!」
「青春て、もうとっくの昔に・・・」
「ゴツイヤン。なにか言った?」
「いえ、何にも・・・」
ここで、説明しなければなるまい。メージョたち悪玉トリオは、いつものごとく正義の味方タダシマン1号2号に破れ、スカルダベ〜にお仕置きされそうになったのだが、ズルインスキーの「お仕置き脱出装置」の失敗で、ここ地獄に吹き飛ばされてしまったのだ。そして、生還をかけた地獄最大のイベントのひとつ「デビルカップ」の優勝商品:5名様まで生き返り券を狙っていたのだ。
「でも、相手の男。意外とやるわね。ズルインスキー大丈夫かしら?」
「大丈夫でまんねん。相手の男は、無名プレーヤーですから。ズルやンのずるがしこさは、誰にも負けませんよ。メージョさま。」
「そうね。ズルインスキーは、ずるさの天才だもんね。」
と、彼女たちが観戦している前の席の背もたれの頂点が、ぱかっと開き、するするとやしの木が伸びてきたかとおもったら、豚がそのやしの木を上り詰めた。
「ブタモオダテリャキニノボル。ブ〜〜〜。」
「ずこ!」
さて、試合はラブオールのまま、緊迫した展開を見せていた。
「なかなかやるじゃないの。このままでは、わたしの勝利はないわ。ということは、メージョ様の祝福のキッスもない。見ていろよ、この天才ズルインスキーさまの頭脳の冴えを、メラメラメラ。って、あつ〜〜〜。」
ズルインスキーは、闘志を燃やしすぎて、自分の目を本当に燃やしてしまった。
「ア〜びっくりした。沖縄の女子高生?の静○ちゃん。闘志燃やしすぎちゃダメよ。それでは、いくわよ。今セットの山場〜〜。あ、ポちっとな。」
ズルインスキーは、そういうと、ラケットのグリップについていたボタンを押した。
そして、飛んできたボールを打ち返した瞬間。それは起こった。なんと、打ち返したボールが、13個に増えたのだ。
「このメカは、ラケットに仕掛けられたマシーンが、ボールを言った瞬間に、そのボールをコピーして、相手に飛ばし返すのよ。もし、一個でも打ち返し損ねたら、爆発してゲームセットってわけ。くくく。
このアイデアは、東京は国分寺の女子中学生みん○んちゃんからでした。アイデアありがとうね。」
「これで、ズルインスキーの優勝は確実ね。ちょっと、占いオバサンで、占ってみましょうか。」
「メージョさま、それだけはやめましょうよ。今回は勝てそうなんですから。」
「だからじゃないの。勝利を確信するためにも、オバサンの占いを聞いておいたほうが・・・」
メージョは、ゴツイヤンの留めるのも聞かずに、バッグからコンパクトを取り出すと、そのふたを開けた。
『最初は、小さな雪球も、最後は、大きなものになり、大雪崩が起きるでしょう。気をつけよう。大きな過信は、大災害を招く。』
「なにこれ?」
「さあ?」
二人が首をかしげていると、オバサンは、後ろの襟をつかんで、着ていた服を引き剥がした。その下から現れたのは、着物を着たかぶ御前だった。
「おろかぶ。」
そういうと、かぶ御前は消えた。
「がんばれ、英○さ〜〜ん。わたしたちの運命は、あなたにかかっているのよ。」
「○明、まけるな。」
飛んでくる13個のボールを英○は、見事に打ち返した。だが、ズルインスキーも負けてはいなかった。ラケットを分身させ、起用にうちかえしたのだ。
(ふふん、誰も気づいてはいないだろうが、あのボールにはコントロール装置が付けてあって、わたしのラケットには、どんな角度で来ても、必ず当たって跳ね返るようになっているのよ。)
「さあ、お遊びは終わりだ。これがファイナルスマッシュだ。ポちっとな。」
説明せねばなるまい。ズルインスキーは、ボールの安全装置をはずしたのだ。これによってボールは、○明が、2度目に打った瞬間に爆発してしまうのだ。
「こなくそ。」
だが、英○は、何とか、すべて無事に打ち返したが、そのうち一個だけは、ずれてラケットのふちに当たってしまった。そして、それが、彼らの運命を決めた。
戻ってきたボール12個をすべて打ち返したズルインスキーだったが、○明のラケットのふちにあたったボールは、力なくへろへろと帰ってきた。ズルインスキーは、そのボールを、余裕を持って返そうとした瞬間。さっきふちに当たった衝撃で起爆装置がおかしくなっていたそのボールは、ズルインスキーが打った瞬間に爆発してしまった。この衝撃で、コントロール装置にも異常が出て、すべて方向を変えてズルインスキーのほうに戻ってきた。
「わ、わ、わ、めーじょさま〜〜〜」
「こっちくるな、こっちくるな。」
「ずるやン、巻き添えはいやであります。」
「わたしも一人で死ぬのはや〜よ。ね、みんなで仲良くね。」
「わ、いや〜〜〜ん。」
大音響とともに、三人は、はるか彼方に飛ばされていった。
「またらいしゅ〜〜〜〜〜う。」
「やった〜、英○さん。」
Sall○は、○明に飛びつくと彼の顔に祝福のキッスをした。
「さあ、それでは、賞品を頂いてもどりましょうか。」
「さんせ〜〜〜い。」
「うぃっく、しゃんしぇいのはんた〜〜い。」
また酔っ払っているたか○んにに、あきれながら苦笑して、三人は、一升瓶を抱いて、こっくりこっくりする彼を見つめていた。
インクエスト商事のオフィスには、4人の社員の写真が飾られ、その前には、四つのお棺が並べてあった。その中を読経が響き渡っていた。
北海道支社から急遽もどった○ょうじは、あさ○りに、話しかけていた。
「いったいなんで、4人とも急死したんだ。」
「僕にもよくはわからないんですよ。」
「たかしんにが、3人に無理やり飲ませたんじゃないか。」
今は、居酒屋のおやじになったジョ○ーが、鋭いことを言った。新規開拓で飛び回っていたらん○うが、遅れてやってきた。
「すみません、遅くなって。」
「いや、今始まったところだ。でも、優秀な仲間を失ったのは痛いな。」
きょう○が、そういったときに、読経は終わった。
「それでは、最後のお別れを・・・」
きょ○じが立ちョニーが、そして、ら○おう、最後に、あさぎ○が、立って、4人に別れを告げようとしたとき、先に立っていた○んおうが、声を上げた。
「う、動いた。動いた・・・」
悲しみのあまり、錯覚を見たのだろうとみなが思ったが、それは、間違いではなかった。棺の中の白装束をまとった遺体たちが、動き出したのだ。
「やった〜、酒がのめるぞ。」
「また言ってる。つる○んどうさん。どうにかして。」
「でも、○allyさん。死んでも治らないんですから無理ですよ。」
「ちょっとみなさん。周りの様子がおかしいですよ。」
「さ、さ、Sall○さん、英○。どうしたんだ。それに、○allyさん。独り言言ったりして?」
き○うじは、様子がおかしい二人を見つめた。つる○んどうも、たかしん○も、生き返っていたが、起き上がる気配はなかった。
「あれ、どうしてそこにわたしがいるの?」
○明は、不思議そうにSa○lyを見つめた。
「あれ、俺が寝てる。あ、わたしもだ。どうして、僕がそこに・・・?」
Sal○yの口からこぼれた言葉は、彼女の声なのだが、ニュアンスがすべて違っていた。
「ま、まさか、おまえは、Sall○さん?」
らんお○が、英○に聞くと彼は頷いた。
「それならば、こっちは、たかし○にに、つ○りんどうさんに、○明さん?」
今度は。○allyに、あさぎ○が聞いた。すると、彼女は3回頷いた。
「大変だ。身体がいれかわってる。それに、奴らは、彼女の身体を狙ってたから、3人とも彼女の身体に入ったんだ。う〜〜ん、俺も、混ぜろ。」
ジョニ○は、S○llyに迫ると、言い寄った。彼の行動を見ていたほかの者たちも、彼女に詰め寄った。
インクエストのオフィスのパニックは、広がっていった。
あ〜あ、合掌。なんていってる場合じゃないわ。わたしもまぜろ〜〜〜〜。