レディース・バーガーショップ
ある日の午後。俺は、久しぶりにハンバーガ-ショップに立ち寄った。スマイルただのあの店だ。
店の中はけっこう繁盛していた。数ヶ月前までは、半額サービスなんかしていたが、いまはやってないはずなのに、カウンターの前には列ができるほどの盛況ぶりだった。
ただ、店の中には女の子ばかりなのに、列を作っているのはむさい野郎どもばかりだった。男女の席でも分けてあるのだろうか。カウンターで注文の商品を受け取った野郎どもは、一階はすでに一杯なので、二階席へとあがっていっていた。
かなり待たされたが、何とか俺の番がきた。ふと店の中を見回すと、やはり女の子だらけだ。いくつか席が空いたので、何人かの野郎が坐ったはずなのだが、居づらくてそうそうに食べると帰ったのだろう。これには関係がないことだ。
「今日はこちらで、お召し上がりでしょうか。」
さすが、ファーストフードの店の中でも可愛い子を選りすぐっているという噂がある店だ。カウンターの中の子はけっこう可愛く、俺好みだった。
「ああ、そうだ。」
俺は、できるだけニヒルに言った。好みの子の前でいつも俺がするポーズだった。
「ご注文はお決まりでしょうか。」
「そうだな。君の笑顔をもらおうか。」
「はい、スマイル一つですね。」
何の不自然さもなく応対した。さすが教育が徹底している。
「あと、お飲み物とかはよろしいでしょうか。いまですと、ルナテックバーガーとナプキンのセットが好評ですが・・・」
「じゃあそれをもらおう。」
「セットにお付けするお飲み物はどうしましょう。」
「なにがあるのかな。」
「はい、こちらの品になります。」
「なになに、フレッシュオレンジジュース(13〜16)。コーク(17〜21)。ジンジャーエール(16〜22)。コーヒー(22〜27)。紅茶(23〜30)。スプライト(14〜18)。ミルク(9〜14)。なんだこの数字は?」
名前の横に書いてある数字書きにはなったが、俺はあえて聞かない事にした。
「じゃあ、コークをもらおうかな。」
「はい、エイジはどうなさいます。」
『エイジ?何だそれは・・・』
それを聞くといい年こいたおっさんがそんなことも知らないのかと思われそうだったので、俺は、コークの横に書いてあった数字を適当に言った。
「そうだなあ。18で。きみもそれくらいだろう。」
それを受けても、カウンターの女の子は、ただ微笑んでいるだけだった。さすが、スマイルタダだ。
「以上でよろしいでしょうか。」
「う〜ん。あと君のお勧めは・・・」
「パイなどいかかでしょうか。」
「パイか。ポテトがついているしなあ。」
「あの〜、セットにはポテトはついておりません。単品になりますが・・・」
「え、そうなの。それじゃあ、パイをもらおうかどんなのがあるの。」
「はい。Aクラスですと、アップルパイ。Bは、パパイア・マンゴー。Cは、パイナップル。Dは、スイカ。D以上になりますとパンプキンパイがございますが・・・」
「(また、変なクラスわけだ。う〜ん、どれも甘そうだが、かぼちゃにしとくか。)じゃあ、パンプキンパイをください。」
「パンプキンパイでよろしいのですか。」
「ああ、かぼちゃが好きなのでね。」
「は、はい。あとポテトですが、SS・S・M・L・LLとございますがいかがいたしましょう。」
「ポテトはいいよ。これ以上お腹に入りそうもないから。以上で。」
「は、はい。それではオーダー繰り返します。ルナテックバーガーセットが、おひとつ。お飲み物はコークの18で、それと、単品で、パンプキンパイがおひとつ。以上でよろしいでしょうか。」
「はい。」
「それでは、お会計ですが、税込みで、945円になります。」
俺は、おもむろに、財布から千円札を取り出して、カウンターに置いた。
「ハイ、それではこれからおねがいね。」
「千円からでよろしいでしょうか。」
「ああ、いいよ。おつりはその募金箱にでも入れておいてくれ。」
「はい、ありがとうございました。55円のおつりです。お確かめください。」
「いいのにもう。」
そう言いながらも、手を添えて渡してくれる彼女の手のぬくもりにビンビンと来ていた。おつりを俺に渡すと彼女は後ろに振り返り調理室に向かって叫んだ。
「オーダーはいります。ワン・ルナ。ワン・ナプ。ワン・コーク17。ワン・パンプパイ入りま〜す。」
「は〜〜〜い。」
調理室の中にも可愛い女の子ばかりで男の姿はなかった。俺が注文した物をトレイの上に乗せると振り返って、俺にトレイを差し出した。
「毎度ありがとうございました。どうぞごゆっくりお楽しみください。」
俺は注文の品が乗ったトレイを受け取ると、空席を探したが、一階は満席だった。俺は仕方なく2階への階段を上がった。途中、女の子とすれ違ったが、俺が来る前から居たのだろう。俺が来てから2階に上がった女の子はいないのだから。
2階もけっこうにぎわっていた。だが、不思議な事にあがっていったはずの野郎どもの姿はなかった。キャピキャピとにぎやかな女の子達の間に入ると、俺はおもむろに、コークを手にとった。待っている間に喉が渇いたからだ。
ストローを差し込むと俺は一気に吸い込んだ。冷たく刺激的な液体が口の中に広がった。
「う〜ん、うまい。さて、ルナバーガーから頂くか。ナプキン付とか言っていたが、本当に付いているぞ。どうも、外資系のジョークはわからん。」
俺は、目玉焼きが入ったバーガーをパクついた。思った以上においしく。あっという間に平らげてしまった。そして、俺は、パンプキンパイに取り掛かった。それほど甘くなくおいしかった。コーラを飲み干して、俺はやっと一息つくことができた。列を作って食べるほどではなかったが、まあ、あの子の笑顔が見られただけでもよしとしよう。などと思っていたとき。お腹のしたあたりが、しくしくと痛んできた。食べ過ぎによる腹痛とも違う、未体験の痛みだった。そして、胸がむずむずとしだし、身体のあちこちがきしみだした。そして、腹のしたの痛みは増してきた。
「雅代。あなた、お客にルナバーガー勧めていたわね。」
「ふん。だってあの客。君の笑顔が欲しいだなんて、以前の私でも言わなかったようなキザったらしいこと言うんですもの、ちょっと懲らしめたのよ。」
「あのお客。驚いているわよ。初めてのアンネちゃんに・・」
「そのうえ、パンプキンパイを頼んでたから、どうなる事やら。」
「え〜、あのパンプキンパイを・・・わたししらな〜いっと、このあいだ、あれ食べた客がZサイズになったの知ってるでしょう。」
「ええ、しってるわよ。でも、お客の注文だから。あのときのお客は、ポテトのSを頼んでいたけど、今日のお客は頼んでないからどうなる事やら。」
「頼んでないの。ポテトを取らないと、ボディサイズの調整がきかないのに。こりゃみものだわ。」
「ふふ、あの客。どんな女の子になるのかしらね。楽しみだわ。」
ルナテックバーガーは、生理の女の子になるハンバーガーで、飲み物は、女の子のタイプ。その後の数字は年齢。パイは、バストのサイズ。パンプキンは、超巨乳になる。そして、身体の大きさを調節するのがポテトのサイズなのだが、あの客はそれを頼まずに行ってしまった。そのため、身長、体形は変わらずに、18歳の超巨乳で、生理中の女の子になるのだ。
カウンターの女の子は、溢れんばかりの笑顔を浮かべて、2階のほうに目をやった。そこで起っているであろうことを想像しながら・・・・