もうひとつの「階段を落ちたらサヨウナラ」?

原作・じょにぃ〜っち

贋作・よしおか

 

 けたたましく、砂煙?を上げながら、二つの影が、廊下を走り去っていった。

 「なんだ、あれは?」

 「ああ、リナと竜司のふたり。元に戻ったそうだ。リナになっている間に竜司の奴、かなり派手なことをやっていたのが、リナにばれたみたいだ。竜司、リナに半殺しにされるぞ。」

 「いや、殺されるだろう。あのことがばれたら。」

 「あれって、更衣室のあれか?」

 「いや、保健室で・・・・やっていたそうだ。」

 「そりゃやばいな。リナけっこうまじめだから、こりゃ殺されるぞ。」

 そんな会話を聞きながら、俺は別のことを考えていた。ひょっとすると、これは、チャンスかも・・・

 俺は、教室を出ると、二つ隣の教室に行った。そして、そこの入り口から中を覗いた。いたいた。窓際に座り、外を眺める美少女。いつ見てもきれいだなあ。そんなことを、俺は、見つめながら、考えていた。

 「あら、啓二くん。今日も来たの?麻美。白馬の王子様よ。」

 教室に、入りかけていた女生徒が、こっちが恥ずかしくなるくらいの、大声で、窓辺の女の子を呼んだ。

 「あら。」

 俺に気づき、笑顔を返してくれたが、一瞬、いやな顔をしたことに気づくものは、俺以外にいなかっただろう。

 「ちょっと、いいか?」

 「うん。」

 頷くと、彼女は、俺についてきた。俺たちは、誰もいない校舎の屋上に出た。

 「あのなあ、おまえ戻りたくないか?」

「いいのよ、無理しなくても。誰も聞いていないから。あなたが、その姿になじめないのは知っているから。」

 「そう、でも、あなたは、馴染んでしまったわね。ほんと、わたし以上にわたしだわ。」

 「ありがとう。」

 そう言って、微笑む彼女が、六ヶ月前まで、今、わたしがいるこの男の身体の持ち主だとは、誰も信じないだろう。柔道部の猛者や空手バカを相手に喧嘩しても、決して負けたことのない男だとは・・・

 

 六ヶ月前、病弱だったわたしは、丈夫になりたいと、近くの神社にお参りに行った。でも、100段は軽くある石段を登るには、わたしの体は弱すぎた。30段ほど何とか登ったとき、わたしは、立ちくらみがし、足を踏み外した。そのとき、神社から帰りかけていた彼が、バランスを崩し、ふらつくわたしに気づき、階段を駆け下りて、わたしを抱きとめてくれたのだが、勢いがついていたので、わたしと彼は、一緒に転げ落ちてしまった。彼が、わたしをかばってくれたので、わたしには、怪我はなかったのだが、そのときのショックで、わたしたちは入れ替わってしまった。わたしは、今でも、病院で気がついたときのショックは、忘れられない。

「いや〜〜〜〜。」

その後、わたしになった彼に、励まされ、二人で相談して、入れ替わった姿の生活をすることにした。つまり、わたしは、彼として、彼は、わたしとして、生活をすることにしたのだ。入院生活の間に、二人のことを話し合い、何とか、今まで来たのだが、(妙に彼が、すんなりと、女の子の生活ができたのが気になるけど・・)やはり、わたしは、元の自分に戻りたかった。彼が、わたしになってから、身体も丈夫になり、病弱を理由に引っ込み思案だったわたしは、明るく、朗らかな子になっていた。自分じゃない自分が、なりたかった自分になっていくことが、いやだった。そして、そんなことを考える自分もいやだった。

 「もとにもどりたいの?」

 彼女は、そう言って、わたしの顔を見た。もう、男だった面影はなかった。

 「そう、辛いかもね。わたしは、本当は、女の子になりたかったの。喧嘩に明け暮れる生活がいやだった。静かに暮らしたかった。だから、今の生活を失いたくないのも本当。でも、あなたを悲しませるわけにも行かないわ。で、どうするの?」

 最近の彼女の行動(彼とは言いがたい雰囲気があるの)を見ていると、こんなに簡単に了解してくれるとは思わなかった。こんな良い人の望みを壊すなんて。でも・・・

 わたしは、考えていた計画を話した。

 「放課後、あの神社に行って、入れ替わったときと同じようにするの。もどれるかもしれないわ。」

 「わかったわ。放課後ね。待ち合わせは、あの階段の下で・・・」

 そういうと彼女は、スカートをふわりと舞い上がらせて、階下へとつながるドアを開けて、もどっていった。その彼女の目に、光るものがあったのを、わたしは気づいてた。

 

 放課後、彼女は、約束の場所に現れた。

 「来ないと思った?」

 実は、わたしは、彼女が、来ないのではないかと思っていた。

 「人を犠牲にしてまで、このままでいたいとは思わないわ。さ、すぐに始めましょう。」

 明るく言うと、彼女は、さっさと、階段を上がり始めた。あたりはだんだんと、暗くなって来た。

 「それじゃあ、行きましょう。」

 彼女の声に、わたしたちは、階段を落ちた。傷つけないように、しっかりと彼女を抱いて。でも、今回は、力が入りすぎていたのか、身体がこわばり、落ちていく途中で、ぼこっという、いやな音がした。そして、わたしたちは、地面に叩きつけられた。その衝撃で、わたしたちは、気を失ってしまった。

 

 どれくらい経ったのだろう。気がつくと、あたりはすっかり暗くなっていた。わたしは、落ちたショックで、弾き飛ばされたのか、階段の上り口のところにある石灯籠に、背もたれていた。かなり強く打ったはずなのに、身体には、痛みはなかった。起き上がると身体をさわった。

 「あ、あ、ある。な、な、ない〜〜。」

 胸の膨らみも、股間の感触も、六ヶ月前のものに、もどっていた。

 「か、身体も軽いわ。もどったんだ。あれ、彼は・・・」

 すっかり暗くなった辺りを見回してみたが、彼の姿はなかった。石段の上り口のところに、小さな黒い水溜りと、わたしが、背もたれていた石灯籠にも、黒い汚れがあった。誰かが汚したのだろう。そんなことは気にもかけずに、わたしは、六ヶ月ぶりに、自分のうちに帰った。

 

 久しぶりの自分ちの前には、大きなちょうちんが下げてあった。それは、葬式のときにかけてあるものだった。

 「いや、誰か死んだの。お父さん?お兄ちゃん?まさか、おかあさんじゃあ。」

 わたしは、あわてて、家の中に駆け込んだ。そして、お母さんを探し回った。お父さんとすれ違い、お兄ちゃんとも・・・すると、やっぱり、お母さん。

 わたしは、無我夢中で、家中を駆けずり回った。ぶつかりそうになる訪問客をどう交わしたか覚えていないけど、台所で、もてなしの準備をするお母さんを見つけた。

 「おかあさ〜ん。よかった。お母さん。」

 わたしは、お母さんに飛びついた。六ヶ月ぶりにお母さんに甘えられる。ところが、お母さんは、わたしをするりと交わした。交わした?・・・・いや、交わしたんじゃない。すり抜けたんだ。じゃあ、このお母さんは、幽霊?

 でも、手伝いに来ていた近所の人は意外なことをつぶやいた。

 「気を落とさないでね。あっちで、休んでいたほうがいいんじゃないの?」

 「いいえ、何かしてないと・・・だめになりそうで・・・」

 お母さんは、近所の人の言葉に、涙声で答えた。この人には、お母さんが見えている。でも、さっきからわたしを無視している。なんで?

 「やっと、元気になって、明るくなったと思ったのに、何で、何で、あの子が・・・」

 そう言うと、お母さんは泣き崩れてしまった。なに、わたしが何かしたの?わたしは、なにがなんだかわからぬまま、居間の方へと歩いていった。そこには、祭壇が飾られていた。そして、華に囲まれた中央の遺影は・・・わたしだった。

 「やっと来たようね。」

 その声に振り向くと、そこには、わたしが立っていた。

 「今日は、あなたのお葬式よ。そして、わたしのお葬式もやっているわ。」

 「あなたはだれ?」

 「この姿では、わからないかも知れないわね。魂は、その人の望む姿になれるらしいわ。だから、魂だけになったわたしは、この姿になったの。」

 「え、じゃあ、あなたは・・・」

 そう、わたしそっくりの女の子は、彼だった。イマナンテイッタノ。ワカラナイ。

 「わたしたちは、死んだのよ。あの時と同じにしようとしたけど、落ちていく恐怖から、身体がこわばり、打ち所が悪く、わたしは、死んでしまったの。あなたは、落ちたショックで、弾き飛ばされ、石灯籠に、叩きつけられて、頭を強く打って、死んでしまったの。こうなるかもしれないと思っていたから、戻りたくはなかったの。でも、これでよかったかもね。お互い、本当の自分になれたのだから。」

 本当の自分、こうなるかもと思っていた。そんな。何でわたしは、こんなことをしたの。何で、こうなるの。なぜ、止めてくれなかったの。

 「いや〜〜〜。」

 誰にも聞こえないわたしの魂の叫びが、静かな夜の帳の中を駆け抜けていった。

 

 

あとがき

 

やっぱ、じょに〜さんは、すごいわ。偉いわ。天才だわ。

じょに〜もおだてりゃ、次作書く〜〜〜。という事で、新作お待ちしております。

(どこが、あとがきじゃ)

 

サテ、本気はこれくらいにして、これは、じょに〜さんの「階段を落ちたらサヨウナラ」の別バージョンです。これは、この作品の題名を読んだとき、こういう話かな?と思っていたのにまったく違ったため、慌てふためいたよしおかが、でっち上げた作品です。

だから、本作品の不出来は、じょに〜さんのせいではありません。念のため。

それでは、また。