エ〜毎度、ばかばかしいお話で、ご機嫌を伺おうと思いますが・・・・
出来ましたら、落語の「死神」を先にお聞きいただくといっそう、あたしの話を聴かないほうかいいとお思いになられ・・・(て、それじゃあ、あたしは、おまんまの食い上げだ)
TS版 死神
演者・よしおか
え〜今宵はたくさんのお越しで、ありがとうございます。これだけ来ていただくと、わたしらへの割りも結構なものに・・・なりそうもありませんな。今宵のお客さんは懐が寒そうで・・・
え〜懐があったかいと申しますとやはりお医者でしょうな。人の生き死にかかわりますので、御代のほうは吹っかけ放題だそうで、儲かったそうですが、ただし、昔の話でございます。
今じゃ、大学だ、やれ国家試験だ、医師免許だ、とうるさいですが、昔はおおらかで、仕事もねえし、腕に覚えもねえから、明日から医者にでもなるかって申しまして、犬や猫のしょんべんで、よ〜く育った裏の草をもって来まして、これを天日で乾かして、薬箱に入れますってえと、これで準備万端です。
これで、看板でも上げりゃあ、立派な土手医者が出来上がります。下手な医者を、「やぶ医者」。藪にもなれないのを「たけのこ医者」。たけのこにもなれないのを「土手医者」っていいまして、たけのこも生えないと言うどうしようもない医者のことだそうで・・・
ある男が、金もなく、仕事もなく、死ぬしかないっと、首を吊ろうとしますが、昔、世話になったという死神に助けられ、死期の見方を教わりまして、それを使って、医者をはじめます。死期を言い当てますので、大評判になり、あっという間に金持ちになってしまいました。そうなるって〜と〜、持ちなれないものですから、湯水のように使って、すっからかんになってしまいました。そんな時、大金をもらえるってンで、死期の来た金持ちを助けてしまいます。それを知って怒った死神にあの世へと連れて行かれてしまいました。
「暗いところから急にあかるきなってきましたが・・・明るいと思ったら、すごい蝋燭だ。」
「人の命は蝋燭の炎というだろう。それがこれだ。」
「へえ、そうなんで、いろんなのがありやすね。長いのや短いの、赤とか、青とか。お、紫までありやがる。これなんぞ、上と下の色が違ってやがる。」
「そんなことはいいからこっちに来な。」
「へい、ここに青くて太くて威勢良く燃えてるのがありますが・・・」
「それは、てめえの息子のだ。」
「へえ、あいつは長生きするんですな。お、横でこれも威勢良く燃えてやがる赤いのがありますが・・・」
「それは、てめえのかかぁのだ。」
「あいつも死にそうにねえな。その横で、ちょろちょろと燃えてるのがありますね。なさけねえなぁ。」
「それが、てめえのだ。つまらねえことしやがるから、もう消えそうだ。」
「え、俺は、まだ死にたくねえ。死神さん、いや死神様、助けてください。」
「死にたくなけりゃあ、そこの消えさしの蝋燭に火をつげるんだ。そうすれば、てめえの命はそれだけ延びる。だがな・・・・」
「それを早く言ってくださいよ。こいつは、太いが短いし、そいつは長いが細いし・・・お、こいつは・・・」
死神の言うことを最後まで聞かずに、太くて長い赤の蝋燭に火をつげてしまいました。
「お、おい、そいつは・・・・ああ、変わっちまった。」
さっきまで、男のいたところは、どこかのおかみさんが立っておりました。
「死神さん、なんだか身体がおかしいんですけれど・・・」
「ああ、おまえさんが人の話を最後まで聞かねえものだから、女の蝋燭に炎をつげちまった。だから、おまえさんは、女になっちまった。」
「そ、そんな。どうにかしてくださいよ。」
「どうにもならねえ。だが、安心しな。おまえさんはもう大丈夫だ。」
「どうしてですか?」
「俺たち死神は、仲間には手はださねえよ。だって、おまえは、山の神だ。」
え〜お後がよろしいようで・・・・
(ツンテンシャンシャン、ツテシャンシャン)