誕 生 日

 

今日は、ボクの弟の5歳の誕生日。今日の主役の弟の前には、歳の数だけ蝋燭のたったバースディケーキが、置かれていた。

「ハッピバースディツーユー、ハッピバースディツーユー。ハッピバースディ、ディアたかしちゃん。ハッピバースディツーユー」

「おめでとう、たかし」

「おめでとう、たかしちゃん」

「おめでとう」

みんなにおめでとうを言われて、たかしは、恥ずかしいのか、頬がすこし赤くなっていた。

「さあ、一息で、消してしまうのだぞ」

「そのまえに、お願い事をしてね」

パパもママは、たかしにそう言った。パパもママも、ただ、蝋燭を消す前の儀式としてそうっているだけだろうが、一息で、蝋燭を消すことができると、本当に望みがかなうのだ。

そのことは、僕だけしか知らないことだった。なぜ、僕がそんなことを知っているかというと、一年前のボクの誕生日に、それは起こった。

「ハッピバースディツーユー、ハッピバースディツーユー。ハッピバースディ、ディアゆうじちゃん。ハッピバースディツーユー」

「おめでとう、ゆうじ」

「おめでとう、ゆうじちゃん」

「おめでとう。さあ、願い事をして、ろうそくを一息で吹き消して。」

お姉ちゃんは、ボクにそう言った。そして、ニヤニヤしながら、ボクが、ろうそくを吹き消すのを見ていた。なぜなら、ボクが、7本のろうそくを吹き消せないと思っているからだ。ボクは、そんなイジワルなお姉ちゃんが嫌いだった。ボクのほうが、お兄ちゃんだったら。

そんなことを思いながら、ボクはろうそくを吹き消した。

「お兄ちゃんになりたい。かわいい弟がほしい」

心の中で、そんなことを思って、ボクは、ろうそくを吹き消した。