TSカード?

 

銀行のキャッシングコーナーは、それほど混雑していなかった。

「ちえ、今月もピンチか。なにが皆様のためを思った心のこもったサービスを心がける銀行ですだ。どの銀行も同じようなサービスしかないじゃないか。預けても、どこも同じような利子だし、借りれば預金以上の利子が取られるし。借りれば借りるほどお金が入ってくるようなサービスをしてみろよ。ほかと違ったサービスしないと他の銀行に口座を変えるぞ!」

キャッシングの前で、若い男がブツブツとつぶやいていた。と、隣の方から声がした。

「おい、じいさん、さっさとしろ!後が支えているんだよ」

それは、キャッシングの前で、機械の操作にオタオタする老人に、他にも開いたコーナーがあるのに、わざわざ老人の後ろに並んでチンピラ風の男が嫌がらせをしていたのだった。そんな様子を知りながらもだれも何もしようとはしなかった。だれもが係わり合いになりたくないと思っているからだ。

「はやくしろよ!俺は急いでいるんだよ」

その脅しに、老人はさらにあせり、操作がさらにうまく出来なくなってしまった。それを見ていた隣の若い男が、老人に声をかけた。

「おじいさん。手伝いましょうか」

「す、すみません。お願いします」

老人は、声をかけてきた若い男にすがるように、懇願した。若い男は、老人に聞きながらキャッシングのタッチパネルを操作した。

「あの、各種サービスを・・」

「これですね。はい。で、つぎは?」

「カードサービスをお願いします」

老人の言うとおりに、男はパネルのインデックスをタッチした。パネルの画面は次々に変わって行った。

「オトコ?オンナ?」

「オンナで」

「年齢は?」

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タッチ画面に若い女の子の写真が数枚現れた。老人は、若い男に礼を言うと、その中の黄色いスカーフネクタイをした半袖のセーラー服にミニスカートの可愛い女の子をタッチして、確認のインデックスを押した。すると老人は光に包まれた。老人斑点があちらこちらにあり、シワだらけでカサついていた老人の肌から斑点が消え、シワが伸び、肌に潤いが戻っていった。そればかりではなく、腰の曲がっていた老人の身体がしゃんとなり、産毛程度だった頭の髪の毛が伸び始めた。骨と皮ばかりだった老人の身体にふくらみだし、白く濁っていた瞳に輝きが戻ってきた。だが、変化はそればかりではなく、老人の着ていた服も変化していった。サンダル履きの足は、紅いスニーカーに変わり、素足にはいつの間にかグレーのロングソックスを履いていた。そして、よれよれのシャツとズボンは、半袖のセーラー服とウォーターカラーのミニスカートに。セーラー服の胸元は膨れ上がり、腰は引き締まり、伸びてきていた髪は両肩にかかる程になった。それはまるで、怪奇映画のモーフィングシーンを見ているかのようだった。

さっきまで、よぼよぼの老人がいたところには、老人が画面タッチした写真の可愛い女の子が立っていた。

「おにいさん、ありがとう」

キャッシングのカード差込口からカードを抜き取ると、ちょっとポーズをとって、女の子が微笑んだ。

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ナレーション「あなたのトレンディーなセカンドライフをサポートするあなたの近くの○○銀行。いま素敵なTSライフスタイル体験キャンペーン実施中!詳しくはお近くの窓口でお尋ねください」

 

慌ててビデオの録画スイッチを入れたのですが、間に合いませんでした。どなたかこのCM録画していませんか?ねえ、コピーさせて!

 

 

あとがき

大阪での「妖精さんと文庫のオフ会」のときに、キャッシュカードでのTSを話していたら、MONDOさんが、イラストを描いてくださいました。イラスト負けしていますが、こんなおはなしはいかがでしょう?