わたしおじいちゃんと、おじいちゃんわたし?

 

第一話わたしおじいちゃん

 

 わたしの名は、友里マリア。聖マリアンヌ女学院高等部の2年生。自分で言うのもなんだけど、かなりかわいくて、スタイルもいいのよ。でも、彼氏はいないの。

 だれ、かわいそうなんて言うのは、わたしのおじいちゃんを知らないからだわ。わたしのおじいちゃんは、世紀のマッドサイエンティストなの。どのくらいマッドかと言うと、おじいちゃんの失敗品の特許で、わたしのうちは、月間で、アメリカ合衆国年間予算の半分ぐらいの特許料が入ってくるの。でも、大半が、おじいちゃんの研究費に消えるから一般家庭よりちょっとリッチなぐらいかな。

 そんなおじいちゃんだけど、世界中にファンクラブがあるの。長身で、スマートで、ロマンスグレーだけど、身体は、30代と言っても通じるくらいだし、無表情だけど優しいし、わたし、おじいちゃん大好き。

 それと、わたしの家族についてちょっとだけ言っちゃうと、ママとパパは海外へ旅行中、と言っても二人とも仕事だけど。ママは、おじいちゃんの発明品の売り込み。超ハイテク企業のマリーメって知らない。そう、近未来的メカのアイデアを企業に提供しているところ。今のハイテク機器のほとんどがこの会社のアイデアなの。そして、メカに使われているシステムもこの会社のもの。元は、おじいちゃんの数十年前の発明品。それを、ママが特許を取って、マリーメを創ったの。ママが社長なのよ。そして、パパは、婿養子で、超古代文明専門の考古学者。会社の方にはノータッチで、好きな研究のために世界中を飛び回っているの。冴えないオジサンだけど、ママはメロメロ。

 ママって、超美人で、世界中の美人コンテストを総なめにしたほどの人で、誰と結婚するかが、世界中の雑誌(タイムまでも)がその話題で持ちきりだったこともあるんだって(わたしだって、ジュニアの美少女コンテストぐらいは、世界中のコンテストを総なめにしたわ)。それが、この冴えないおっさんと結婚したものだから、世界中の男のほとんどが落胆し、自殺しかかったものも小さな国の人口並みって聞いたわ。二人のラブロマンスは、小さいころからいやと言うほど聞かされたわ。かなり面白い話だけど、それはまた別の話。

 おじいちゃんは、ママが生まれてすぐにおばあちゃんを無くしてからずっと一人で暮らしをしていたの。そして、ママがパパと結婚して、わたしが生まれるとわたしたちと一緒に暮らし始めたの。だけど、ママもパパも外国へ行くことが多いから、自然とわたしはおじいちゃん子になっちゃった。

 無表情なおじいちゃんだけど、わたしは大好き。それに、おじいちゃんの発明品は、たのしいもの。そんなこんなで、おじいちゃんと二人っきりで暮らしていたわたしに、大変な事が起こったの。

 それは、夏休みに入る2週間前の事だったわ・・・・

 

 その日、わたしは、試験も終わり、家の地下に作られたおじいちゃんの研究室に遊びに行ったの。厳重な保安システムを通り、対核爆発、対細菌汚染、対・・・などの安全構造(全て、研究室からの汚染対策なの)を施されたこの研究所に遊びに来るのは3週間ぶりだったけど、おじいちゃんは、何処かに出かけたらしくて留守だった。

 わたしは、勝手知ったる研究室の中をぶらぶらと見て回った。3週間ぐらいでそんなに変わるものじゃないけど、けっこうおもしろいよ。みんなに、研究室の中の様子を話したいけど、ママに止められているので話せないの、ゴメンね。

 ふらふらと見て回っていたら、おじいちゃんの工作用デスクの上にカワイイ小さなピンクのハートのポイントがついた首輪を見つけたの。まるで、昔のアニメに出てくる「キューティ・○ニー」が付けていた物みたい。わたしは手にとると、ちょっと首につけてみたの。それは、まるでわたしのためにあつらえたみたいに、ぴったりだった。

 わたしは、おじいちゃんがこっそりと見ていたそのアニメの主人公がつけていた変身のポーズとセリフを言ってみたの。首のハートのところに指を当て、叫んだの。

 「ハ○―・フラッシュ! 変わるわよ。」

 ものすごい閃光が、首輪のハートから出て、目の前が真っ白になり、わたしはよろけた。

 目が慣れてきて、わたしはあたりを見回したけど、変わったことはなかった。ただ、身体が妙に楽になっているので、手で身体中をあっちこっち触って見るとそこにはあるべきものがなかった。服どころか、ランジェリーさえないの。わたしは裸になっていたの。

 両手で胸を抑え、しゃがみ込むと、心の中で『一・二・三』と数を数えると、お腹の底から力を振り絞って叫んだ。

 きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 叫んで、気持ちが落ち着いてくると、わたしは、身体の異常に気がついたわ。抑えている胸にふくらみがなく、閉じた股の間に奇妙な違和感があるの。わたしは、恐る恐る組んでいた腕を放し、胸をさわった。小ぶりだったけど、確かに膨らんでいた胸は平になり、股の方に手をやると、そこにはソーセージのようなものが、閉じた足の上に乗っていたの。そして、それはビクンビクンと動きながら、頭をもたげて来た。

 下を覗いたわたしの目に飛び込んできたのは、幼いころ、おじいちゃんと一緒にお風呂に入ったときに見たおじいちゃんの股に付いていたものと同じようなものだった。

 再び、わたしは数を数えなおすと、今度は、全てを吐き出すように泣き出した。

 「うわぁんあんあんあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。」

 そして、わたしはすべてを吐き出し終わると気を失った。 ドタン。

 

 「おい、起きろ。おい。」

 その声に薄めをあけて見ると、目の前におじいちゃんの顔があった。

 「お、おじいちゃん。」

 「おじいちゃん。お前からおじいちゃん呼ばわりされる覚えはないが、その首輪は・・・まさか、お前は、マリアか?」

 「そうよ、おじいちゃん。わたしはマリアよ。」

 「おお、なんてことだ。研究室のものは勝手に触ってはいかんとあれほど言ってあるのに。」

 「ごめんなさい。あまりにもかわいかったもので・・・それよりおじいちゃん、わたしの身体が・・・」

 「いまのでわかったよ。今のお前は完全に男になっとる。」

 「それじゃあ、おじいちゃんの・・・」

 「そう、お前がしているその『DNA瞬間変換装置・バニーフラッシュ』のせいだ。」

 「ばにーふらっしゅ?」

 その、どこか聞いたことのあるようなネーミングに、おじいちゃんのセンスがわかったような気がした。

 「実は、お前も知っての通り、おじいちゃんは、『キューティ・ハニー』のファンだ。そして、『少年探偵団』怪人20面相の変身のファンでもある。そこで、変身できるアイテムを作ろうと思って出来たのがこの『バニーフラッシュ』なのだ。こいつは瞬時にDNAを書き換えて、別人に変身できる。ただし、元の自分のDNAをダウンロードしておかないと元には戻れないのだ。」

 「と言う事は、わたしは元には戻れないと言う事。」

 「そうなるな。」

 「いやよ、いや。おじいちゃん何とかして。」

 「お前のDNAは、サンプルとして取ってあるから戻す事はできるが、『ハニー・○ラッシュ。変わるわよ。』まで言っているからなあ。」

 「それがどうかしたの。」

 「そのセリフは、DNAを完全に書き換えてしまうのだ。だから、お前を元に戻すには、DNAの安定を待たねばならない。」

 「それはどのくらいかかるの。」

 「早くて一ヶ月。遅くとも3ヵ月後にはDNAは安定するはずだ。」

 「一ヶ月から、3ヶ月。その間、わたしは男のままなの。」

 「そうなるな。『ハニー・フ○ッシュ』だけだったらよかったが、『変わるわよ。』は、いらなかったな。それでDNAが固定されてしまったのだから。」

 「知らないものそんなこと。でも、今のわたしは男になっただけ?それとも、誰かになっているの?」

 おじいちゃんの事だ。誰かに変身できるようにしているはずだ。

 「うむ、姿が変わるようにセッティングしていた。お前は今そのセッティングされた姿になっとる。」

 「どんな姿なの?」

 「それは・・・ワシだ。」

 「え?」

 「ワシ。友里源一郎の姿だ。」

 「ええ〜〜〜。」

 男の人になっただけでもショックなのに、おじいちゃんになってしまうなんて、わたしはどうしたらいいのかわからなくなってしまった。

 「まあ、もうすぐ夏休みだし、しばらくその姿でのんびりとする事だな。」

 「そうはいかないわ。うちの学校は厳しくって、よっぽどの事がない限り欠席は出来ないの。」

 「よっぽどの事じゃないか。」

 「休んでいると先生が家庭訪問に来るのよ。それに、わたし、友だちと旅行に行く約束があるの。どうしよう。」

 わたしは頭を抱え込んでしまった。もう一人わたしがいたら解決するのだけど・・・・

 「お前がもう一人いればいいのだろう。ワシに任せろ。」

 そう言うと、おじいちゃんはわたしがつけていたのと同じ首輪と、同じハートのポイントがついたブレスレットを右腕にすると、ポーズを決めてこう叫んだ。

 「バニーフラッシュ。変わるわよ・・・やっぱりこの姿でこのパスワードは恥ずかしいなあ。」

 おじいちゃんの首輪とブレスレットのハートからはげしい閃光が走り、その姿を包んだ。だが、次の瞬間。閃光は消え、その中から現れたのは・・・・制服姿のわたしだった。

 「あ〜〜あ、やっぱり。」

 

つづく・・・・?

 

 

 あとがき

 チャットで、ネコさんと「孫娘とおじいちゃんの入れ替わり」の話をしていて、その設定だとどうしてもダークになると言う話から、書いて送るよ。という話になり、ネコさんの「ハートフル」という宿題をのこしたまま続いてしまったこの話。どこをどう間違ったのか、コメディになりそうな雰囲気である。何でダークが、コメディになるのだろう?

それとこの設定は、コンビニで見かけた「キュー○ィ・ハ○―」と、その時思い出した「少年探偵団」の変身する怪人20面相から、この装置を思いついたといういいかげんな設定なのである。だから、矛盾は無視してね。

こんな話になったけど、ネコさん。どう?