一ダースには程遠い

 

その日オレは仕事始めにあるマンションの一室を選んだ。ここは若い女性専門のマンションで意外とマンション内部に入ってからの警備は手薄だった。ま、たしかにこのマンションに入るまでのチェックは厳しいが中に入ったらこっちのものだ。オレは宅配員に成りすまして、なんとかこのマンションに入り込んだ。そして、狙いをつけていた部屋の前に立った。

「ピンポ~ン」

呼び鈴を鳴らしたが、部屋の中からは何の反応もなかった。思惑通りだ。オレは手に持っていた荷物から開錠用の道具を取り出して仕事にかかった。怪しまれないように仕事を終わらせるには10分しかなかった。オレは手早くカギを開けると荷物をもって部屋の中に入った。部屋は若い女の独り暮らしにしてはかなり広いほうだった。3DKの部屋を見回すと結構片付いていた。

「さてどこから始めるかなぁ」

時間限定の空き巣としては、とにかく現金をいただくことだ。オレは寝室を探す事にした。

「え!」

「アッ!」

奥の部屋のドアを開けるとそこは狙い通りに寝室で部屋の中に赤いバニーガールスタイルの女がベッドに横たわっていた。ライトブラウンのパンストに部屋の中なのにご丁寧に赤いハイヒールまで履いている。オレは手に持っていた配達品に偽装した仕事道具を落としてしまった。バニーガールスタイルの女をよく見ると、女は縛られ、猿轡をかまされていた。

「一体どうなっているんだ?オレ以外に誰か仕事をしたのか」

だが、部屋の中はあらされたような形跡はなかった。と、その時、玄関のほうで物音がしたような気がした。オレは仕事道具を持つと警戒しながら玄関へと向かった。だが、何ごともなかった。オレの気のせいだったのだろう。そこでオレは他の部屋も調べようとした時、浴室で物音がした。

「まだ居やがったか」

オレは音を立てないように静かに洗面所の戸をあけた。洗面所の奥が浴室で、オレは気を張り詰めて浴室の戸を開けてみた。すると浴室の浴槽の中に女が縛られて、猿轡をされて放り込まれていた。黒いセーターと青いミニスカートに濃い茶色のパンスト、それに室内なのに黒皮のブーツを履いた女。服装は違っていたが、そいつはさっき縛られて、ベッドの上に転がされていた女だった。

「一体この家はどうなっているんだ?」

オレはぶつくさ呟きながら浴室を出た。管理人が怪しみだすタイムリミットまで、あと少しだった。本来ならこのまま逃げ出すのが得策なのだが、仕事をしていないオレは、浴室の斜め向いにある部屋に入った。そこは4畳半の部屋でピアノが置かれ、可愛いヌイグルミが飾られているだけだった。この部屋には何もめぼしいものはなかった。やはり寝室を探したほうがいいようだ。オレは寝室に戻ろうとしたが、急に尿意を覚えてオレは玄関の横にあるトイレに駆け込んだ。トイレのドアを開け中に入ろうとした時、そこには先客がいた。

それは、事務員のようなブルーの制服を着て縛り上げられていたのは、ベッドの上と浴槽で縛られていたあの女にそっくりだった。一体どうなっているんだ。ここは?女は足元までパンティを下げた格好で縛られて便座に座らされていた。

オレは頭が痛くなってきた。本当にここはどうなっているんだ。オレは混乱してきた。だが、もう時間がない。このまま何も盗らずに逃げるなんて空き巣歴5年のオレにとっては恥だ。オレは今まで見たことを忘れる事にするとまだ見ていない寝室の隣の部屋へと忍び寄った。するとこの部屋の中から人の気配がした。

「またかよ」

オレはそう思ったが仕方がない。そっとドアを開けて、中を覗きこんだ。そこは和室で部屋の真ん中に今度は巫女さん姿の女が、縛られて、猿轡をして転がされていた。その巫女さんも今までの女にそっくりだった。

『まったくこいつらは一体なんなのだ。四つ子で、SMゴッコか?』

オレは縛られた巫女さん姿のアイツを見つめながら、こいつらの理解しがたい行動にため息をついた。と、その部屋の押入れの中から音がした。オレは恐る恐る近づくと、そっと押入れを開けた。そこには猿轡を咬まされ縛り上げられた下着姿の女が身をくねらせて暴れていた。そいつも今までの奴らにそっくりだった。

「はぁ?またかよ。今度は押入れプレイか。いい加減にしてくれ」

オレはちらっと巫女さん姿で部屋の真ん中に転がっている女を見た。オレはため息をついて押入れを離れようとしたとき時、首筋にチクリとして、身体中の力が抜けて、その場に倒れこんでしまった。

「いや〜、空き巣まで現れるとは思わなかったぜ」

だれかがオレにそういった。うまく動かない身体を何とかねじって声のしたほうを見るとそこには、バドガールスタイルの女が立っていた。そいつも彼女たちにそっくりだった。

「一人暮らしのモデルの部屋に忍び込んで、マスプレを楽しもうと思ったら、同じことを考える奴らがゴロゴロしているんだもの。たまらないわ」

そういいながら、女はオレに微笑みながら首の後ろに手を回し自分の顔の皮を剥ぎだした。

「ベリベリベリ」

皮は首筋から剥がれ出し、髪の毛ごとズッポリと剥がれてしまった。その下から現れたのは、眉のないのっぺりしたスキンヘッドの男の顔だった。

「ふう、こっちも脱ぐか」

そういうと男の顔をしたバドガールは、バドドレスを脱いで、下着姿になった。ドレスの上からもわかるほどのスタイルバツグンの身体があらわになった。だが、女はそこで止めなかった。ブラを取り、パンストを下ろし、パンティを脱ぐとその裸体を惜しげもなく、オレの前にあらわにした。

「ウフフいい身体でしょう?お近づきのしるしにこの身体をあなたにあげるわ」

しゃがみ込んで俺の顔を覗き込みながら女は言った。身体をくれる?なら今の俺の身体をどうにかしてくれ。このままでは、こいつの身体を味わうことなど出来やしない。と、オレは思った。だが、この女の言う身体をくれるという意味は俺が考えているのとは違っていた。いや、誰が考えても理解できないだろう。女は立ち上がって背中に両手を回すと首の付け根の辺りでなにかを摘んでそれを一気に降ろした。すると女の背中に亀裂が入り女の背中はぱっくりと割れた。その割れ目に手を当てて引き裂くとその皮は服を脱ぐかのようにきれいに剥がれた。そして皮を脱ぐとそこには引き締まった男の身体が現れた。

『え?男??さっきまではどう見ても女だったのに。なんなのだ。コイツは?』

オレはますます訳がわからなくなってしまった。

「男に戻ったからには、服がないからお前の服を借りるぞ。代わりにこれを置いていってやるよ」

自分がさっきまで着ていたバドドレスを摘みあげてそう言うと、女から男になったそいつは、オレの服を脱がした。それもパンツまで脱がしてしまった。オレは身動きが出来ないまま、全裸にされた。

「ふむぅ。男の裸体って、見ていてあまりいいものじゃないな。それじゃあこれを着せてやるか」

オレの服を着込んだ男が、今度はオレにさっきまで着ていた女の皮を着せだした。足から着せられた皮の締め付けを感じながらもオレはどうすることも出来なかった。オレに皮を着せ終えると、ジッパーらしきものを上げて背中を閉じた。その締め付けにオレは息ができないくらいになった。

「うぐっふ」

「すぐになれるよ。でも女の身体にその顔ではおかしいな。ではこれもプレゼントするか」

奴は、今度はオレの顔に、顔の皮を被せた。これもまたオレの顔を締め付けた。だが、しばらくすると締め付けを感じなくなった。

「あとは自分で着てくれよ。そのスーツは、あと三時間は持つから、大事に使いな」

オレの宅配便の制服を着た男は、オレに微笑むと部屋を出て行った。

オレは何がなんだかわからなくなった。ここにいた奴らは一体何者なんだ。それにオレはあいつに何をされたんだ?

奴が出て行ってしばらくすると、身体の自由が戻った。オレは奴が着せた皮を脱ごうとしたが、境目がわからず脱ぐことは出来なかった。皮を被せられただけなのに、オレの胸は重く、触ると感じる気がした。だが、ここにグズグズしている訳には行かない。オレは奴が残して行った下着を着てバドドレスを着込んだ。ブラをつけるときには少し手間取ったが何とか着る事が出来た。そして洗面所で、乱れた髪を直すと、部屋からさっさと逃げ出した。あいつらが何者で、あそこで何が起こったのかはわからなかったが、それよりもこの場を早く離れることが一番だ。ブラで包まれた胸と、食い込むパンティの感触を感じながら、オレはあることを考えていた。

『はやくヤサに帰ってこの身体を楽しもう。もう時間がないぞ』

オレの足取りは速くなっていった。