年末、一通のメールが届いた。それにはこう書いてあった。
『 寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
皆様の今年のご活躍・・・・拝見したかったなぁ。
さて、例年の年初イベントの時期となりましたが、今回は、ウサギにかけまして、
スピードにポイントを置き、サーキットにて開催いたしたく思います。
つきましては、例年のごとく干支にちなんだコスプレでお越しください。
ことしも、一年の英気を養うために大いに盛り上がりましょう!
怪人同盟 幹事・怪人HIRO』
それは、師匠の下に集まった仲間からの新年会を知らせるメールだった。
毎年、いろんな場所で、思い思いのコスチュームを着て、英気を養うために、集まってドンちゃん騒ぎをするのだが、今年は、怪人HIROの好みで、サーキットに決まったみたいだった。
今年は、福助二世の趣味で、人気女性ロックバンドのメンバーと、俺たちが入れ替わって、晴れ着でロックコンサートだ。まあ、この時のHIROは、ベーステクばかりか、着物姿もなかなかのモノだったがな。(特にあの胸の辺りの乱れ具合が特にな)その前の年は、福助三世が幹事で、ガールズ・シンガーフェスティバルだった。
さて、来年は、ウサギだし、サーキットとなれば・・・俺は、ぴったりのコスプレを思いついた。
『ぐふふふ、楽しみにしていろよ』
一月一日、俺は、鼻歌交じりに、軽いステップを踏みながら指定のサーキットに来て見るとそこには・・・
イラスト:HIROさん
ヘルメットを被ったドライバーの乗ったF-1カーのそばに立つ三人のバニーガールが、笑みを浮かべて立っていた。
「お前らなぁ・・・ウサギ年だからって、それはあまりにも安直だろう!」
俺がため息混じりに言うと、ワインカラーのバニーコスプレの長い黒髪の美女が、覚めた視線で、俺を見つめて呟いた。
「ふふふ、それは、誰のことかしら?」
「そうそう、人の事はいえないでしょう?二代目」
彼女の隣に立つパラソルを持ったセミロングの茶髪のバニーが、歯を見せて、にやけた。
「そッスよ先輩。ウサギと言えばこれッスよ」
褐色の肌をしたシルバーヘアーのバニーが、右手でVサインを返した。
「まったく、だから俺たちは、師匠のようにメジャーになれないんだよ」
叱るように言った俺の言葉に、三人はそろって答えた。
「「おたがいさま」」
「さて、新年会を始めましょか。このサーキットで怪しまれずに、どれだけの獲物を得られるかが、勝負。いいでずね」
今年の幹事のHIROが、手にしていたパラソルをくるくると回しながら言った。
「HIRO、今年はちゃんと獲物がいるんだろうな」
「もちろん、去年は二世の好みでロックバトルステージだったけど、正月だから、晴れ着の子が多くて、獲物がいなかったし、(黒髪のバニーが、頭をポリポリ掻きながら照れ笑いを浮かべた)一昨年は、三世のセッティングで、ガールズコンサートだったけど、なぜかアキバ系の野郎どもばかりで、獲物は、フェスティバルに出ていた女の子だけ、でも、彼女たちはほとんどが晴れ着と、ドレスで獲物はいなかったけど、今年はだいじょうぶ。今日は、F-1の初乗りだから、F-1チームのレースクィーン同伴だから、獲物はいるよ」
「なるほど・・・・て、みんな晴れ着じゃないか」
「(HIROは、鼻の下に親指を当てて口を隠した広げた右手をくるっと回すと)だ・い・じょ・う・ぶ!初乗りが始まると彼女たちは、レオタードに着替えるから。それでは、新年会開始!」
俺たちは、HIROのその声を合図に初乗りでサーキットに集まっている各チームのレースクィーンを狙って散っていった。
F-1に黙って乗っていたドライバーが呟いた。
「まったく、あいつらときたら、ヘルメットで聞こえないと思って、べらべらとなにをしゃべっているんだ。わたしだったから良かったものの、他の者に聞かれたら大変な事になっていたぞ。まったく、あいつらには、まだまだ『怪人福助』の名を任せられないな。まったく誰に似たんだ。この能天気さは・・・」
ドライバーはブツブツと呟きながらF-1から降りると、ヘルメットを脱いだ。その下から黒々と美しく長い髪が、腰の辺りまで、さらっと垂れ下がった。ドライバーは軽く左右に頭を振ると、顔に罹った髪を掻き揚げた。その下から現れた顔は、思わず見とれるほど美しかった。
「ふふふ、このワタシが直々に獲物の狩り方を教えてあげるわよ。四人ともしっかりと覚えなさいね」
美女へとその姿を変えたドライバーが、着ていたドライバースーツを脱ぐと、ウサギのイラストを施したセクシーなレオタードボディが現れた。
「さて、まってなさいね」
元レーサーのレースクィーンは、コックピットへと歩いていった。