『菓子の璧』

 

在る男が山中で宝石を見つけた。男はそれを宝石として王に献上した。しかし、それはただの石として扱われた。男は王を欺いたとして、腕を奪われた。

王が変わった。即位記念に再び石を献上した。しかし、結果は同じだった。男は足を失った。

男は、石を抱えて山に閉じこもった。

王は次の代となった。男は最早それを持っては行かなかった。ただ、泣いた、ひたすらに、何年も。

王は山奥で泣き続ける老人の噂を耳にした。王はすぐさま使いをよこした。聞いてみると、老人は信じて貰えないのが悔しくて泣いているとの事だった。王はすぐさま、石工に石を磨かせた。石はまごう事なき名玉だった。王は今までの不備に、多大な報奨を与えた。そして、その忠義を称え、男の名前を取り、『和氏の璧』と名づけた。

 

石には悲しみと云う名の意思がこもっていた。そして、少しの憎しみが。山にいた時にそれは蓄積された。それは様々な事を引き起こした。璧を巡り、秦と趙は一触即発となった。それを解決したのが藺相如であり、その話は『(まっとう)して帰らん』として今でも語り継がれている。

 

璧は欲深き宦官の手を回り、更に汚れた。いつのまにか、それは願いを叶えるものになっていた。

史実では、童卓、劉備が璧に関わっている事が確認できる。

他にも、杜子春、李徴がいる。彼らは唐代まで語り継がれ、『杜子春』、『虎になった男』として、現代でも楽しまれている。

 

その後、璧は中国から姿を消す事となる。

それは当然の事だった。なぜなら、璧は日本に渡ってきていたから。和氏の璧は口頭で伝えられる内に、甘い願いを叶える『菓子の璧』となっていた。

一説では、卑弥呼、聖徳太子、藤原氏、源義経、宮本武蔵、等が使ったとも言われる。

 

そして、現在に至る。

 

俺の前に確かに璧が在る。細かいバックグラウンドなんてどうでも良い。俺にとって必要な事は『この璧が俺の欲の為に在ると云う事実』だけ。

 

今日も誰かが璧を使おうとしている。

璧には宦官の怨念がこもっていた。そして、その所為で主の性が変わる様になった。本人の意思に関係なくそれは行われる。

 

「了承した。さあ、3つ目の願いを言え」

「俺を世界一の権力者にしろ」

そう言った瞬間、俺の体は光に包まれた。

熱い・・体が火・・・照る・・骨・・が軋む、体の感・・覚が無くな・・・

「・・・ううん・・・」

「これでお前の望みは全て叶えた」

そう言って目の前の男性は璧と一緒に消えた。

「ちょっと待っ・・・、え?」

私は違和感に気付いた。高みの在る声、顔にかかった髪、敏感な肌、重みの在る胸、何故かすっきりした股、重くなった腰、低い目線etc。体中の感覚が異常を告げている。私は大慌てで街に出た。洋服店のショーガラスに映った私。ツヤの在る漆黒の髪。くりくりっとして、それでなお、力強い瞳。整った顔立ち。モデル以上の体形。そして何処となく漂ってくる気品。

「これが・・わた・・く・し・・・」

 

この世で最も権力の在る者とは何だろうか?

商業家?

大富豪?

軍人?

大統領?

いずれで在っても権力を握る事が出来る者がいる。極上の女性だ。如何なる者も美には心を許す。と言っても人自体が美となる事は難しい。器だけでなく中身も美の一部だから。

クレオパトラは美そのものだった。

彼女は1度権力を失ったが、再び権力を手に入れた。

肉体はもちろんだが、そのしたたかさが、更に一層、美を引き立てた。

 

ベッドルーム。脱衣場では旦那様が服を着替えている。旦那様は世界一の貿易業者の社長。確かに私は世界一の権力を手に入れた。でも、こんなの嫌ぁ〜〜〜

 

 

 

 

初めまして、Каси Кацуоと申します。なんか訳の分からない感じになってしまいました。

って言うかネタが切れました(えっ、もう!)

軽〜く設定集のつもりで読んで下されば幸いです。

若し、設定で分からない事等が在ればメールして下さい。

宛先はこちら→kashikatsuo@yahoo.co.jp