『どうして、この部屋に・・・』
気まずそうな男性と機嫌の悪い女性。
私は、その男性と共に、ソファーに座っていて、女性は、右に立っていた。
しばらく、流れる沈黙の時間。
どうやら、私は、その沈黙の原因となっている様だ。
・・・何だか・・気まずい・・・・・
事の発端は、会社の給料の削減だった。
給料が、少なくなり、ローンが払えなくなった。
ローンを払う為に、サラ金に手を出した。
サラ金の返済の為に、ヤミ金に、手を出さざるを得なかった。
そうして、どんどん、積み重なる借金。
金を移動させているだけなのに、どんどん、借金は増えてゆく。
「ワレェ、借りたモンは、返さんかいっ!」
「申し訳ございません、今月中に何とかしますので・・・」
「そう言って、何ヶ月、待ってると、思うんじゃいっ、固羅ァっ!」
相手は椅子を蹴り飛ばす。椅子は机に当たって、机と共に倒れる。
「必ず、今月中には、何とかしますので・・・」
「お前、そればっかりやないかァ!若し、今月中に返さんかったら、家族がタダじゃすまんぞォ、聞いとんのか、おいっ!」
「何でもしますが、どうか、妻と子供だけは〜」
床に頭を擦りつけ、必死で、止めて貰える様、頼み込む。すると、相手は、急に、表情を緩めた。
「そうか。別に、わしらも鬼じゃない。若し、お前が、こちらの言う通りにしてくれるなら、借金をチャラにしてやらん訳でもない」
相手は、デカイ葉巻を吸い始めた。相手の口から、煙が、ドーナツ状に、出て来る。
その言葉は、私に取って、地獄に仏だった。
「本当ですか!」
「ああ、こちらが、紹介する仕事を毎日してくれるだけで、今までの借金をチャラにしてやる」
それから、相手は、その仕事について、説明を、し始めた。
その仕事では、『私は、マネキンの様に、1日中、じっとしてれば良い』らしかった。
しかし、『家族との別れが必要になる』らしかった。
「やってくれるか?」
私は、家族達の顔を思い浮かべた。お前達が、幸せになるのなら・・・
「はい、喜んでっ!」
「それじゃ、この契約書にサインしてね」
・・・・・・
玄関に点いた明かりが、私を暖かく、出迎える。
トントントン
台所から、包丁の音が聞こえてくる。
「おかえりなさーい、アナタ。ご飯にする?それともお風呂?」
エプロンをした妻は、明るく、私を出迎える。
「頼む、別れてくれ」
突然の言葉に、反応出来ない妻。
「・・・な・・何を言い出すのよ・・・・・」
「頼む、訳は言えないが、この通りだっ!」
両手を合わせて、頼み込む。
「・・いきなり・・・どうして・・・・・」
「あ〜あ、だから、素直に言っちゃえば、いーのに、『他に好きな人が出来た』ってね」
いつの間にか、玄関に、20歳位の女性が上がりこんでいた。
髪を茶色に染め、耳には、ピアスの穴。
私と妻は、思わず、黙り込んでしまった・・
「・・・・」
「だからさー、あんたにー、魅力を感じなくなかった、ご主人は、あたしを選んだわけー?
わかるー、お・ば・さ・ん?」
バチンっ
いきなり、ビンタが飛んできた。
目に涙を溜める妻。
「実家に帰らせて頂きますっ!」
バタンっ
妻は、子供達を連れて、出て行った。
「では、早速、明日から仕事に取り掛かって下さいね」
未だに、頬に残る手の跡と痛み。
自然と、手が、頬を擦る。
・・これで良かったんだ・・これで・・・・
そんなこんなで、今、私は、ノ○カをやっている。
右手にいる女性が、やっと、重い口を開く。
「どうして、この部屋に、○リカがいるの?」
(注.この話は、全く、実在の人間、団体とは、関わりがございませんw
よしおかさんへ
・・って云う訳です。『何のCMか?』分かりますよね?