登場人物

真 崎:28歳・才能があるが、番組に恵まれずすねている。

監 督:45歳・真崎の才能を見抜いていて、彼を立ち直らせようとしている

華 代:(推定)12歳

 

 

華 代「はじめまして。わたし、真城華代と申しますあなたの悩み、教えてください。すぐに解決して差し上げます

    さて、今宵は、どんな悩みでしょう?」

(テーマソング)

(仮題・声優は、もう、大変!)

 

(ある収録スタジオ)

監 督「OK。今日の収録は、これで終了します。それでは、次回は、明後日に」

男 女「(スピーカーからの声)お疲れ様でした」

(ドアの開く音)

(ざわめき)

真 崎「さあ、おわった。おわった。カラオケにでも行かないか」

1「なに言っているのよ。あなたは、出番がないでしょうが、わたしたちは、まだ出番があるのよ」

1「カラオケだなんて、声を潰すぞ」

 真 崎「ふん、行きたくないならそう言えよ。一人で行ってやるよ」

   男1「真崎」

   女1「真崎さん」

 真 崎「じゃあな」

 (足早に去る足音)

   男1「あいつも、自棄に成らなければ、結構いい線いけるのだけどなぁ」

 

 (とあるカラオケボックス。ミュージックが流れている)

 (インターのなる音)

 真 崎「(カチ)はい」

 店員♀「あの、あと10分で、お時間ですが、延長なさいますか」

 真 崎「じゃあ、1時間。延長お願いします。それと、水割り」

 店員♀「はい、わかりました」

 (カシャ)

 真 崎「声ががらがらだなぁ。ま、いいさ。どうせ、出番なんてないのだから。さて、時間まで、歌うか」

 (携帯の着メロが鳴る)

 真 崎「はい真崎です。え、明後日の収録の時に出番が?でも、わたしの出番は・・・急に決まった。はい、体調整えておきます」

 (カシャ)

 真 崎「やべぇ、歌いすぎで、声がらがらだよ。そんなこと、もっと早く言えよ。でも、どうするかなぁ。こんなに、声がガラガラじゃぁ、どうしようもないか」

 華 代「失礼します」

 真 崎「お、来た来た。はいはい、まっていましたよ」

 (ドアの開く音)

 真 崎「え?誰もいないじゃないか。なんだったのだ」

 華 代「閉めないで。ここよ」

 真 崎「だれだ。誰も、いないけど・・・」

 華 代「ここよ。ここ、おじさん。下よ、下」

 真 崎「え?あ、お嬢ちゃん、自分の部屋がわからなくなったのかい」

 華 代「ちがうわ。おじさん、何か悩みがあるのでしょう?わたしに話して」

 真 崎「おじさんは、ひどいなぁ。これでも、まだ、20代なのだぞ」

 華 代「ごめんなさい。それじゃあ、おにいさん。おにいさんの悩みを、わたしに話して」

 真 崎「君が、解決してくれるのかい」

 華 代「ええ、まかせて」

 真 崎「君はいったい・・・」

 華 代「あ、申し送れましたが、わたしは、こう言う者です」

 真 崎「名刺?『ココロとカラダの悩みお受けします』?」

 華 代「はい、真城華代です」

 真 崎「華代ちゃんか。で、どうしてくれるのだい」

 華 代「お兄ちゃんが、望むとおりにしてあげるわ」

 真 崎「俺が望むとおりに?じゃあ、声を元に戻せるかい。ははは、無理だろうけどね」

 華 代「お安い御用よ。どんな声なの?」

 真 崎「ほう、じゃあ、お嬢ちゃん」

 華 代「(むきになって)お嬢ちゃんじゃないわ。華代よ」

 真 崎「(すこし笑いながら)ごめん、ごめん。じゃあ、華代ちゃん。『クレパスともちゃん』て、知ってる?」

 華 代「うん、大好き。いつも見ているよ」

 真 崎「それじゃあ、話が早い。ともちゃんの・・・」

 華 代「(間髪入れずに)ともちゃんの声ね。女の人かと思っていた。いくわよ。取り取り付け付けミラクルパワー ともちゃんの声にな〜れ」

 真 崎「(甲高い子供の声で)じゃなくて〜て、何だこの声は・・・」

 華 代「ともちゃんの声よ」

 真 崎「ほうほう。じゃなくて、ともちゃんの友達のはざまくん・・・・」

 華 代「はざまくんか。それなら、そういってよね。取り取り付けつけ。ミラクルパワー はざまくんの声にな〜れ」

 真 崎「(落ち着いた子供の声で)だから、はざまくん・・・の声になっている。華代ちゃん、ちゃんと最後まで、話しを聞いて。ともちゃんや、はざまくんと、いっしょにいるマスオくん・・・」

 華 代「マスオくんなの、ちゃんと言ってよ。取り取り付け付けミラクルパワー マスオくんの声にな〜れ」

 真 崎「(すこし泣きそうな声で)だから、最後までちゃんと聞いてよ〜。ますおくんたちと、いつもいっしょにいるポーちゃんの・・・」

 華 代「え、ポーちゃんなの。取り取り付けつけミラクルパワー ポーちゃんの声にな〜れ」

 真 崎「(ぽーとした感じで)だ〜か〜ら〜さ〜い〜ご〜ま〜で〜き〜い〜て〜と〜い〜て〜る〜の〜に。ポー〜ちゃ〜ん〜の〜お〜と〜う〜さ〜ん〜の〜こ〜え」

 華 代「え、ポーちゃんのおとうさん?あれ、どんな声だったっけ?」

 真 崎「あ〜ま〜り〜で〜て〜な〜い〜」

 華 代「そうね。でも、その話かたって、聞きづらいわ。取り取り付けつけミラクルパワー 普通の話し方にな〜れ」

 真 崎「(ポーちゃんの声で、普通の話し方に変わる)そうだろうなぁ、あまり、面白みがないから、出番少ないのだ」

 華 代「おにいちゃん、他には出てないの」

 真 崎「ああ、昔は、準主役をやった時もあるけど、声に幅がないって、役降ろされたから。『ミラクルガール ミラットちゃん』て、知ってる?」

 華 代「知らない。あ、ごめんなさい」

 真 崎「いいんだ。人気がなくて、五話で終わったから・・・。あの番組は、どうせ、俺がいなくても、収録は出来るし」

 華 代「そんな、いじけないで。がんばろうよ」

 真 崎「いまさらがんばっても。それに、この声じゃなあ。男なのに、女の声じゃ、気味悪いよ」

 華 代「それじゃあ、声にあった姿になればいいんだ」

 真 崎「ははは、そうだね。いっそ、女性声優にでもなるか」

 華 代「それが、お兄ちゃんの望みね。それじゃあ、いくわよ。華代ちゃんスペシャル。取り取り付け付けミラクルパワー きれいな女性の声優さんにな〜れ」

 (シュルシュルシュル〜〜〜〜)

 真 崎「わ、わ、わ、わぁ〜〜〜〜〜〜」

 

(収録スタジオ調整室)

監 督「じゃあ、次いってみよう」

真 崎「(インターコムから声が聞こえる)は〜い。(ポーちゃんの声で)そ〜だ〜な〜・・・」

スッタフ「いいじゃないですか。そっくりだし」

監 督「そっくりだけなら、ごろごろしているよ。でも、彼女には、光るものがある」

スタッフ「真崎みたいにですか」

監 督「その名を言うな。せっかくのチャンスだったのに、潰しやがって」

スタッフ「そういえば、奴はどこに行ったのでしょうね」

監 督「あんな奴の話は、もうおしまいだ。彼女だが、ちょい役から使うぞ。そして、第4クールからは、準レギュだ」

スタッフ「え?いい役ありましたっけ?」

監 督「原作の先生と話して、ともちゃんの隣の美人のお姉さんの役だ。よし、次のテスト行ってみようか?」

 

 

華 代「あのお兄ちゃん。お姉ちゃんに生まれ変わって、今では、人気第一の美人声優さんよ。今回も、大成功ね。さて、次の悩みはどんなのかしら?今度は、あなたのところに行くかもよ?」