衣 替 え
ある陽射しの暑い土曜日の午後、わたしは、玄関のドアを開けると、ただいまもそこそこに、階段を駆け上がり、2階の自分の部屋へ駆け込んだ。そして、鏡台の前に立つと着ていたブレザーを脱いで、ベッドに放った。そして、ボウタイを緩めてはずすと、ワイシャツのボタンをはずし、スカートの留め金をはずし、ジッパーを下ろすと、足元にパサッと落ちた。ワイシャツも脱いでベッドに放り、下着姿になると、鏡に自分の姿を映した。
そこには、流れるような長い黒髪を肩までたらし、日本人形のように透き通るような白い肌をした小柄な美しい少女が、映し出されていた。
「きれい。」
思わずわたしの口からそんな言葉が出てきた。自分でも見とれるような美しい少女に、思わずほほを寄せて、ほお擦りしてしまった。
「ああ、なんてかわいいのでしょう。ああ、んん。もうたまらないわ。」
それからわたしは・・・・
ふと気がつくとわたしは、いつの間にかブラジャーをはずし、パンティもずり下がって左足の先に掛かっていた。
「もう、このからだ。発育途上の体形のくせに感じるのだから。」
そう呟きながら、成熟しきっていない左右の胸を両手で優しく包んだ。
「でも、もう少しバストは欲しいのよね。あっと、衣替えの準備をしなくっちゃ。」
わたしは、クローゼットの中から夏物が詰まった衣装ケースを取り出すと、ベッドの上に並べた。それは、去年着ていたのだから少しきついかもしれないと思いながらも、その中から一つを選ぶと、鏡台そばの椅子の背もたれにそれを掛けた。
そして、また、鏡台の前に立つと両手で、左右の胸のふくらみを掴むと、左右に引っ張った。
バリバリバリッと音を立てて、身体が、首筋からあそこまでまっすぐに裂けた。そして、その裂け目に両手をかけて、果物の薄皮をむくように、皮をはいだ。その下からは、毛むくじゃらのマッスルボディが現れ、下には、ソーセージがポロンと飛び出してきた。
胸をさらけ出すと今度は顎の下の、皮の中に手を差し込んで、顔の皮を下から剥がした。はがれた顔の皮の下から現れたのはごつごつとしたスキンヘッドの睨みに効いた恐ろしげな男の顔だった。体つきも身長も、さっきまでの倍以上になっていた。
「久しぶりに脱ぐと自分の顔でも恐ろしいな。でも、さすがにこの時期になると合いものの皮でも暑いな。さて、夏物に着替えるか。」
鏡には、足元だけ白くほっそりとした少女の足をした毛むくじゃらのマッスルマンが、映りだされていた。本当の自分の姿としてもやっぱり男の裸体は見たいものじゃない。足も脱ぐと、脱ぎさった皮をベッドに放った。
俺は、椅子の背もたれに掛けていた物を手にとると2度ほどはたいて、よじれを直した。褐色がかったそれは、女の姿を模した皮だった。さっきの皮と同じように避けたところから足を差し込むと、ストッキングに足を差し込んだときのようにペタンとしたものが、膨らんでいき、女のほっそりとした足に変わって行った。もう片方も差し込むと次は右腕をそして、左腕をと言った順に着込んだ。頭をすっぽりと被り、ソーセージをおさえて皮を引き上げて裂けたところを引き寄せると、皮は、ゴムのように伸び、ぴったりとくっつき、裂け目は消えた。そして、寄れたところをなおして、鏡の姿を映すと、そこには、色白の美少女のときよりも大きい日焼けしたナイスボディのショートカットのボーイッシュな美女が映っていた。
「やっぱり夏はこの姿よね。むふっ、大きな胸。スリムなお腹。かっこいいお尻に、スリムで長い足。どれをとってもサイコー。今年もビーチクィーンは、いただきね。」
こうして、わたしの衣替えは終わった。両手でも溢れそうな胸を持ち上げながら、わたしは微笑んだ。
「夏ってサイコー。」
あとがき
スイカさんからのメールに書いてあった「だれか、衣替えのトランス小説書いてみませんか。」に刺激されて書いて見ました。皮による変装ファンなのでこんなものになってしまいましたがいかがでしょう。
それでは、また。