衣替え2(彼女編)


 彼と連れ立って、デパートの水着売り場に来たの。今年の夏は、彼とふたりっきりで海に行くの。

 彼って、優しいのだけど、ちっともわたしにキスしてくれないから、この夏こそは二人の間を進展させるつもりなの。とはいっても、わたしってお子様体形だからセクシーな水着は似合わないし、かわいいだけでは、彼は積極的にはなってはくれないし、どうしたらいいのだろう。

 彼は売り場の水着に目のやり場に困って、顔を赤くしていた。そんな彼。おかしいけど、かわいい。

わたしは、いくつかのの水着をピッキングすると、それを持って試着室の中へ入ったの。そして、それらをバーに掛け、着ていた服を下着まで全て脱ぎ全裸になると、試着室の姿身の前に立った。そこには、ロングへヤーの胸のふくらみかけた、まだまだ幼さの残る色白の少女が立っていた。

それから、わたしは超ビキニとか、あみあみのレザータイプとか、試着してみたけれど、このお子様タイプの体形には似合わなかった。唯一似合ったのは店員さんが持ってきてくれたワンピースのフリルのついたチャイルドタイプの水着だった。これじゃあ、彼と本当の恋人になれないわ。

 どうしよう。この顔と体形じゃあ似合う水着はかわいいものばかりだし、といって、姿を変えることは・・・!そうだ。これがあったわ。

 わたしは店員さんを呼んで、メタルピンクのカードを見せたの。

 「こ、これは、ビーナス・カード。すぐ担当のものを寄越します。」

 店員さんは慌てて奥の方へと走っていった。

 しばらくすると、奥の通路ドアが開き、モデル以上のスタイルと美貌の店員さんがやって来た。

 「お客様。どういったものがご入用でしょうか。」

 「あの、これらの下着に合うのが欲しいのですが・・・」

 わたしは、備え付けのバスタオルを身体に巻いて、その店員さんにそう言った。

 「かしこまりました。少々お待ちください。」

 そう言うと、彼女は今出てきた奥の通路ドアに入っていった。そして、すぐに、大きなダンボール箱を両手で抱えて戻ってきた。

 「こちらでございます。お気に召すようなものが見つからないようでしたらお申しでください。ただし、その場合は取り寄せになりますので少々お時間をいただく事になります。」

 そういうと、店員さんは、わたしに、カーテン越しにダンボール箱を手渡すと、奥へと引っ込んでいった。

 わたしは、受け取ったダンボール箱を試着室の床に置くと、フタを開けて、中からスキンカラーのウエットスーツみたいなものを取り出して、試着室のハンガーにかけた。それらは四着あり、その他にバレーボールより一回り小さい大きさの袋状のものが、そのほかに4つあった。それを、ハンガーの上の棚に置くと、わたしは、鏡に前に立ち、前髪の生え際に両手をかけ、引っ張った。

 ベリベリベリッという音とともにわたしの髪の毛は剥がれて、見事なスキンヘッドがそのあとに現れた。後には、スキンヘッドの天辺から首の付け根までジッパーが繋がっていた。

 わたしは、ジッパーの取っ手を掴むとそれを引きおろした。ジッパーを引きおろすと、今まで引っ張られていた皮が緩み、顔の皮がはがれた。そして、その下から現れたのは、ごつい俺の顔だった。

 「ふい〜。まったく、よく出来すぎているよ。こいつは。」

 俺は、首だけ男の俺に戻った身体を鏡に映しながら呟いた。

 こいつは、ビーナス・スーツといい、ダイエットなどの苦労をせずに着たい服を着てみたいという女性客の要望から作られたもので、こいつを身につけると、どんな体形のものでも無理なくモデル並みの体系や容貌になれるという優れものだった。男がつかうと外見は完璧に女になれるのだ。だが、会員制で限られたものにしか着ることが出来なかった。

 俺は、このごつい顔と、スリムなボディスーツの下にある剛毛で毛むくじゃらなマッスルボディのおかげで女たちにいつも逃げられていた。そこで女性心理と好きな女の趣味などの情報を得手、近づくために裏ルートから、このスーツを手に入れ、女に化けていたのだった。だが、このスーツは特製だったのでサポートシステム(男の女装用に作られていて、女らしい性格にするシステムが組み込まれていた。このシステムで、使用者が男の女装とばれないようにサポートするのだ。)の影響を受けてあの男を好きになりかけていたのだ。ちょっとシステムの調整をいじったのが今回の失敗の原因だったようだ。ばれないようにと、さらに強力に自分で調整したのだが、それがまずかった。俺は、心から自分を女だと思っていた。それも、このごつい顔の女だと、この容貌では彼とは付き合えない。

 だから、俺は、このスーツを着て、女の姿のままでいたのだが、彼と結ばれたいという思いから、セクシー水着の似合うボディと容貌を選ぼうとして、マスクを脱いだおかげで元に戻ることが出来た。

 俺は、前にたれたマスクの頭部につけられたそのシステムのスイッチをOFFにすると、マスクを被りなおした。俺が、男だとばれるとまずいのだ。犯罪と道徳上、男のビーナス・ボディの使用は堅く禁じられており、それを破る事は犯罪だった。その上、あのカードは偽造品だった。

 ジッパーを上げ、かつらを被りなおすと、俺は、ハンガーにかけていたビーナス・スーツを一着手にとると、ドレスを合わせるように、身体にあわせてみた。

 今のより少し色は黒いが、大きな胸、くびれた腰、まあるい尻。どれを取っても、俺好みだ。その姿に俺は興奮し、股間に激しい痛みが走った。元気になった俺のあそこが、押さえつけられているので痛みが走ったのだ。

 俺は気持ちを落ち着かせ、またマスクを脱ぐと、今度は慎重に調整して、スイッチを入れて被り直した。今度は、うまくシステムが働いて、股間の痛みは消えた。男には惚れないけど、女の身体にはひどく興奮しない程度に調整したの。これで大丈夫だわ。

 わたしは、あとの3着も合わせてみてその中から2着を選び、それにあった水着も選んだの。そして、このボディにあったマスクも棚の上から降ろして選ぶと、店員を呼んで水着といっしょに購入したの。

 彼のお金で海ヘ行き、ガールハントをするつもりよ。女同士だから、情報収集は簡単。そのあとは・・・ウフフフフ。な・い・し・ょ。

 さあ、楽しい夏のはじまりよ。