金の娼婦


むかーし、むかし。
あるところに、不感症の王子様がおりました。
今度、隣の国のお姫様と結婚することになりました。
しかしお城の人たちは、二人の性生活がうまくいくかどうか、とても心配しました。
お世継ぎが生まれないと、国が滅亡してしまうかもしれないのです。
医者や呪い師を呼んだり、異国の薬を取り寄せたりしました。
いろいろな方法で、王子様の快感を高めようとしましたが、うまくいきません。
王様もほとほと困り果ててしまったのでした。

その国の端っこに、ある家族が住んでおりました。
その末っ子は、体は立派でも、ぐーたらでまともに働こうとしません。
お父さんは困ってしまって、
「お城で働けるような人間になって欲しいなぁ」
と愚痴をこぼしてばかりおりました。
それを聞いた末っ子は、よしっとばかりに一斉奮起することを決めました。
「王子様の不感症を治してみせるよ」
家族は誰も本気にしませんでした。けれども、自分から言い出したのは初めてでしたので、とにかくやってみろと、お弁当にきびだんごを持たせて、旅に出させました。

末っ子は、お城へ向かって歩き始めました。
しばらく行くと、森が見えてきました。
森の入り口に差し掛かると、道の脇に、3歳の子供よりも、もっと背の小さなおじいさんが座っていました。
「おじいさん。お城へ行くにはこの道を行けばいいのですか?」
末っ子が小さなおじいさんに問い掛けます。
「ずーっとまっすぐ行けば、お城が見えてくるよ」
おじいさんが教えてくれました。
「ところで、何をしに、お城へ行くんだね?」
おじいさんは聞きました。
「王子様の不感症を治して、褒美をもらうためです」
末っ子は答えました。
「ふーむ。もし、お前さんのきびだんごを分けてくれるならば、不感症を治すためのとっておきをあげようじゃないか。どうだね?」
おじいさんの魅力的な誘いに、末っ子は喜んできびだんごをあげました。
「よし。その木の後ろにまわってごらん」
おじいさんの言葉通りに木の後ろに行くと、そこには一人の娼婦がおりました。
ただの娼婦ではありません。
全身に金のアクセサリーを身につけて、ぴかぴかに輝いています。
「その娼婦をあげよう。ワシにはもう不要になったからな」
「ありがとうございます」
末っ子は喜びました。
こんなすばらしい娼婦ならば、死んだ人も生き返ってくるかもしれません。
ましてや、たかが不感症くらいは、見ただけで直ってしまいそうです。
末っ子などは、とっくに精を放っておりました。
「その娼婦はお前さんのものだ。もし誰かが娼婦に触ったら、『お前も娼婦になれ』と唱えなえるがよい」
「わかりました。さようなら」
末っ子は娼婦の手を取り、森へ入っていきました。

森を抜けると、町が見えてきました。
町の中心にお城も見えます。
末っ子は町に入ろうとしました。
「待て。お前の連れているその金ぴかの娼婦は何だ!?」
「お前のような田舎者が、そんな娼婦を買うとはけしからん!!」
しかし、門番に行く手を阻まれてしまいました。
それだけではありません。
あまりの娼婦のすばらしさに、門番は娼婦を横取りしようとするのです。
末っ子は困ってしまいました。
娼婦を取られたら、王子様の不感症を治すことができなくなるかも知れないのです。
「やめてください。これは僕の娼婦です」
「ええぃ。よこせ。よこすんだ」
けれども、門番は聞き入れません。
無理やり末っ子から娼婦を奪おうとします。
「お前も娼婦になれ!」
そこで末っ子は、おじいさんから聞いた呪文を唱えました。
「うわーーーー!?」
「ぎゃっ?!」
するとどうでしょう。
二人の門番の体が、輝いたかと思うと、みるみる背丈が縮んでいきます。
そして、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで、たちまち二人は娼婦になってしまいました。
服装も、金ぴかとはいかないものの、なかなかゴージャスな格好です。
「ああああっ、これは一体どうしたことだ」
「娼婦になってしまった」
「それだけじゃない。手が離れないぞ」
二人の門番は、娼婦の手を掴んだまま、離すことができなくなりました。
「仕方がない。一緒にお城に連れて行くことにしよう」
末っ子はびっくりしましたが、娼婦が3人に増えたことを喜びました。

さてさて、奇妙な光景です。
末っ子に連れられて、金の娼婦が後に続きます。
そして、その後ろをひょこひょこと引きづられて、二人の娼婦が続きます。

町の広場に着きました。
「娼婦をよこせーっ!」
突然、パン屋のおじさんが飛び掛ってきました。
奥さんとけんかをしていて、しばらくご無沙汰なのでした。
「お前も娼婦になれ!」
末っ子が呪文を唱えると、パン屋も娼婦になってしまいました。
「ありゃりゃ、これは一体!?」

「昼間から何をしているんですか!」
教会の前を通りかかったときです。
牧師さんが出てきて、一行を咎めました。
「ふしだらな。いけません。こちらへ来て、悔い改めるのです」
牧師さんが娼婦の手を引き、教会へ連れ込もうとします。
末っ子は焦りました。
ここで悔い改められたら、王子様の不感症を治すことなどできなくなってしまいます。
「お前も娼婦になれ!」
「おおっ、神よっ!」
末っ子は、娼婦を増やすことにすっかり慣れっこになっていました。

こうして一行は徐々に人数を増やしながら、お城へとたどり着きました。

お城の兵士は、さすがに訓練が行き届いています。
末っ子が、娼婦を大勢引き連れて現れても、事務的に対応をこなします。
「お前が王子の不感症を治すとな?」
王様への面会が許されました。
広間では、王様を始めとして、大臣や兵士たちが一堂に会しています。
一方、末っ子と数十人の娼婦たちも一列に並んでいます。

「うーむ、これは見事な娼婦である」
王様がうなりました。
「しかし、なぜ皆くっついて離れないのじゃ?」
王様が末っ子と、たくさんの娼婦を順に見ながら言いました。
「私が『お前も娼婦になれ!』と唱えると、みなくっついてしまうのです」
末っ子が王様に説明しました。
「うわっ、なんだこれは!?」
すると、呪文が効果を発揮して、王様もたちまち娼婦になってしまいました。
「おおっ、なんたることじゃ! 狼藉者を捕らえよ!」
大臣が叫ぶと、兵士たちが末っ子を取り押さえようとしました。
「わあああーー」
末っ子はパニックを起こしました。
「お前も娼婦になれーーーっ!」
こうして、ついに、部屋にいた者が全員娼婦になって、一列にくっついてしまったのです。

「何事ですか。騒々しい」
そのとき、奥の部屋から王子様がやってきました。
「うわっ、お前たちは一体・・・」
王子様は、末っ子と何十人もの娼婦を見て、度胆を抜かれました。
「おおっ、王子様! ワシは大臣ですじゃ・・・」
一人の娼婦が泣き泣き言いました。
「何ですって。お前が大臣? ううむ、これは・・・」
王子様は不思議な出来事に、それ以上言葉も出ません。
しかし、その体には明確な変化がおきておりました。
「うっ、何だかお前たちを見ていると、なぜかここが大きくなってくる。・・・もしかして、父上もこの中におられるのか!?」
今までどんな方法を用いてもぴくりともしなかった王子様の股間が、もう服の上からでもはっきりそれとわかるほど膨らんでおります。
「ここだ、ここにおる。王子よ、その股間はどうしたことだ」
娼婦になった王様が問い掛けます。
王子様は、はっと気が付くと自分の股間を触りました。
「父上。気持ちいいのです。なぜだかわかりませんが、父上たちの姿を見ていると、どんどん快感が押し寄せてくるのです。ああっ、ち、父上〜!!」
何と、王子様はそのまま娼婦になった王様に抱きつくと、末っ子と何十人もの娼婦が見守る中、事を始めてしまったのです。
「や、やめるのだ・・・あん。そ、そこは、いかん〜っ!」
王様は初めての快感に、驚きの声を上げます。
自分の息子である王子様に愛撫をされていることにも、抵抗があります。
しかし、今までどんな手段を用いても直らなかった、王子様の不感症が、これで治るならば、と王様は躊躇していました。
娼婦になった他の大臣や兵士も、止めることを忘れて、二人の行為にすっかり見入っています。
つられて、自分で自分を慰め始める者までいる始末です。
「ああ、何て気持ちがいいんだ。こんな気持ちがいいのは初めてです、父上」
王子様の不感症はすっかり治っておりました。
父親である娼婦になった王様に、息子である王子様が自分の息子を挿し入れています。
「うう、あっあああん。こ、これはすごい、もっと突くのだ、は、はげしくぅ」
王様もすっかり出来上がっています。
「あああーーーーっ!!」
そしてついに、事は成されたのでした。

ぽぽぽぽんっ!

すると、末っ子にくっついていた大勢の人たちが、離れたのです。
それだけではありません。
姿かたちも、娼婦から元に戻ったのです。

「ああ。戻ってしまったのか」
王様は、快感の余韻に浸りながら、残念そうに呟きました。
「まあそれはよい。王子の不感症も直ったようじゃ・・・おぬしの狼藉も許しがたいが、功績はそれ以上である。よって、褒美を取らそ・・・」
王様が末っ子にそう言ったときです。
「待ってください、父上。私の不感症はまだ完全には直っておりません。その娼婦を、そう、その金の娼婦を私に譲ってください」
王子様は言いました。
しかし、末っ子はびっくりしました。
王子様が口元を歪め、にやりと笑ったことに。
そうです。
王子様はすっかり娼婦のとりこになってしまったのです。
「こ、困ります。これは僕の娼婦です・・・」
末っ子は、何とか娼婦を渡すまいとしましたが、王子様には叶いません。
すっかり元の姿に戻った大勢の兵士も、じっとこちらを見ています。
「褒美は思いのままだぞ。さぁ!」
ついに王子様の手が、金の娼婦の腕にかかりました。
「お前も娼婦になれっ!」
次の瞬間、末っ子は、呪文を叫んでいました。
「あ、ああああっ!?」
王子様も、娼婦になりました。
しかしそれは、今までのようなそれなりの娼婦ではありませんでした。
況してや金の娼婦も況や。
それは差し詰め、金銀パールプレゼントの娼婦です。
「王子様〜っ!」
先程の疑惑と恐怖から一転、末っ子は娼婦になった王子様に飛び掛りました。
「あああん!」

それからしばらくして、この国で王女様の結婚式が執り行われました。
そうです。
結局、あのまま王子様は元の姿には戻りませんでした。
それは、王子様が女の快感にすっかり参ってしまったからです。
それまで不感症だったのですから、それも当然のことでしょう。
「うちのぐーたら息子が、まさか王女に婿入りするとは・・・」
国の外れに住む一家は、末っ子の立身出世にただただ驚くばかりでした。
今も、大勢の民衆に歓声で迎えられる二人の後姿を、ぽかんと口を開けたまま見守ることしかできません。

末っ子は、金の娼婦を、森の入り口にいる小さなおじいさんに返しに行きました。
「そうかい。幸せを掴んだようじゃな」
おじいさんは、金の娼婦を受け取りました。
もう末っ子には金の娼婦はいらないのです。
だって末っ子には、もっと素敵な女性が、手をぎゅっと握ったまま離れないのですから。

めでたし、めでたし。