はじめまして、らんおうさん。俺の名は、如月真一。あんたのファンです。いつも、ここには来るけど、メールを送るのは、初めてです。なんか、はずかしくて、でも、今日は、あんたが、不思議な話を募集しているのを知って、死んだ曾じいさんから聞いた話だけど、あんたに、教えることにしました。だって、いつも、ただ見させてもらっているお礼だよ。でもこんな話でのいいのかなぁ。

 

 鬼の化粧箱

 

                            如月 真一(学生 20歳)

むか〜しむかしのことじゃったぁ、ある村の若者・多平がふたつ山むこうの村まで、用があってでかけたのじゃが、用のあった家でひきとめられ、すっかり帰りが遅くなってのう。あたりはすっかり暗くなってしもうた。月明かりを頼りに、山道を歩いておったのじゃが、明かりの用意もなく、頼りない月明かりだけが、ただひとつのたよりじゃ山になれたものとでも恐ろしいものじゃ。やはり月明かりだけでは頼りなく、枝にぶつかったり、転んだりしてしもうた。

それでも、二つ目の山のてっぺんを過ぎたころじゃった。遠くになにかの明かりが見えたそうじゃ。多平は、その明かりのほうに行って見た。山の中にこんな明かりがあるはずもないのじゃが、どんなあかりでも、天のたすけじゃ、光が漏れておったのは、くちはてた小屋じゃった。

 多平は、その小屋の近くまでくると、この小屋が、長い間、誰も住んでおらんはずじゃった。多平は、壁の隙間からそーっと、中を覗き込んだ。

 すると、小屋の中には、一匹の鬼がおった。その鬼は、体中真っ赤で、頭には牛のようなおおきな角を生やし、目は、爛々と光、鼻は大きく、口は耳まで裂け、ノコギリソウのような恐ろしい牙が生えておった。体は、熊よりも大きく、その背中は、岩のように硬そうじゃった。その大きな体を丸め、手鏡を立て、その前に座っておった。鬼の右側には黒い漆塗りの小箱が、左側には、赤かと燃え盛る鬼火が、ふわふわと浮いておった。

 鬼は、大きくごつごつとしたそのごぼうのような手で、黒い箱のふたを開けた。そして、中から、白いとろろのような物を手に取ると、それを顔に伸ばし始めた。

「うんとこぺちょんちょ、うんとこぺちょんちょ。べっぴんにな〜れ、べっぴんにな〜れ。」

 そういいながら、鬼は、手にとった練おしろいを、顔に塗りおった。

すると、鬼の顔はおしろいで桜の花のような色になり、だんだんと、白くなっていったそうな。それとともに、鬼の顔は、小さく、やさしげになっていった。そして、よくついたもちのように白くすべすべとしたわかいべっぴんのおなごの顔に変わってもうた。

今度は、そのおしろいを、体に塗り始めた。

「べっぴんじゃ、べっぴんじゃ、ぬるぬるねたねた。」

そう言いながら、体中におしろいを塗っておった。おしろいのついたところから、鬼の体 は変わっていった。ごつごつざらざらした肌は、白くすべすべな絹のようになり、体は、細く柔らかになった。熊よりも大きかった体は、おしろいを塗り終わるときには、多平より小さくしなやかになった。お寺の壁よりも厚い鬼の胸は神よりも薄くなり、お月様のように丸いものがふたつ並び、尻も、牛のように大きくなった。腰は、柳の木の用に、細くしなり、この鬼が、野郎だとは、その大根みたいな棒のほかはわからなくなった。その棒のほかは、都の姫様よりもずっときれいになった。手も小さく、その細く白い指で、棒の先をやさしくなでながら、押し込んだ。棒は、だんだんと縮まり、のうなってしもうた。

すっかりわかくべっぴんのおなごになった鬼は、傍らから、きれいな着物を取ると着込んだだが、さすがに角はかくせんようで、かみをまとめ、あねさんかぶりをした。そして、しゃなりしゃなりと表へ出て行った。

それを見ていた多平はあまりのばけっぷりに腰を抜かしてしもうた。多平は、そこから逃げようとしたとき、きれいなおなごがやってきた。多平は、ちょうど入り口のところに差し掛かっていた。

「おい、赤鬼どん、どこにおる。」

そういうと、おなごは、辺りを見回しておった。

「わしが遅れたからといって置いていかんでもええじゃろうに。」

そう言いながら、そのおなごは、でていった。

「あれはいったいなんじゃ。べっぴんじゃったが、えらく恐ろしゅうもあったが。」

 多平は、隠れておった物陰から出てくると、おなごたちが行った方を見たそうな。そして、誰もいないことを確かめると、そ〜と小屋の中へ入っていった。そして、さっき、鬼が使っておった化粧箱を見つけると、担いで逃げ出した。あの鬼の恐ろしさよりも、化粧箱に惑わされたのじゃ。多平は、村一番のイタズラ者じゃった。この化粧箱を使って、イタズラするつもりじゃった。

「川向こうの呉作は、わしが懸想しとる庄屋の娘にちょっかいを出しよるし、鍛冶屋の喜兵衛は、わしがおなご好きじゃと振れまわっとる。奴こそわしよりも、おなご好きの癖しおって。」

などと勝手なことを言いながら、自分のうちに帰ってきた。そして、家の中に入ると雨戸や戸を締め切って、鏡の前に座った。そして、練りおしろいを手にとると、顔に塗り始めた。

「うんとこぺちょんこ、うんとこぺちょんこ。べっぴんさんになれ、べっぴんさんにな〜〜れ。」

といいながら、おしろいを顔中に塗った。するとどうじゃ。多平の顔は、あの鬼のように小さくなり、おなごの顔に変わってしもうた。汲み置きの水がめの水に映すと、多平の着物を着た。べっぴんのおなごが、写っておった。多平は、写った顔に満足すると、今度は、体に、おしろいを塗り始めた。

「べっぴんじゃ、べっぴんじゃ。ぬるぬるねったら。」といいながら、からだじゅうに塗っていった。そして、塗り終わると、体のあちこちを触って、胸を大きくし、腰をしぼめ、尻を整えた。そして、最後に、棒を押し込んだ。奇妙な感覚じゃった。押し込まれていく棒が、股の間に入っていくのは、なんともいえぬ気持ちがした。

「おなごのされるときの気持ちはこんなものかいのう。」

快感とも、違和感とも云い難い感じを味わいながら、多平は、棒を押し込んでいった。棒を押し込み終わると、台所から、すりこ木を持ってくると、股の間に押し付けた。腰の間のすりこ木が、少しずつ、入っていった。さっきのときと、少し違う感じを味わったそうな。

多平は、ううっとか、あっああ〜とか、んんん〜とか、死ぬ死ぬ。とか言いながらすりこ木が、すっぽりと入ってしまうまで続けた。入りきると、今度は、すりこ木を出したり入れたり続けた。そして、「あっああ〜〜。」というと、気を失ってしもうた。

それからしばらくして、起き上がると、こういった。

「おなごはええのう。こりゃ、わしは、おなごになろうかのう。」

 などど言っておったが、死んだおっかさんの着物の中でいちばん綺麗な着物を取り出すと、それを着込んでいそいそと外へ出て行った。

「まずは、呉作だ。」

 呉作の家の前にくると、呉作が家にいるのを確かめると、多平は、しゃがみこみ、体を曲げて苦しそうにうめいた。

「うう〜〜ん。」

 外でのうめき声を聞きつけ呉作がそとに出てみるとそこには、見たこともないようなきれいな娘が苦しがっておった。

「どうしなすった」

「はい、持病の癪がでまして・・・」

「それは大変、さ、中でやすまされ。」

呉作は、多平が化けた娘を家の中に連れて行った。

 しばらくして、娘がこういった。

「どうもありがとうございました。おかげで、癪もおさまりました。」

「それはよかった。だが、もうすこしやすんでいきなされ。」

「それでは、ご迷惑が・・」

「いや、かまやあせん。わしは、ひとりじゃから、気兼ねはいらん。」

「ありがとうございます。それでは、もうしこし。」 

 多平の化けた娘は、そのままいついたそうな。

 若い男と女が屋根の下にすんどったら、当たり前のこととはいえ、呉作は娘と交わってしもうた。そして、呉作はこの娘に懸想してしもうた。

 じゃが、その娘がある日突然、娘がいなくなって、呉作は気が狂ったように娘を探したが見つからず、河童に尻こ玉を取られたように、ふうけた男のなってしもうた。

 呉作がふうけてから、しばらくたった頃、村の近くに鬼が出るという話がでた。

恐ろしい鬼が、娘を捕まえては片っ端から食っているといううわさだった。そんなうわさを気にもせず多平は、いらぬうわさを立てる喜兵衛をどうするか、いろいろ考えてあることを思いついた。そこで、多平は、喜兵衛をうちに呼んだ。

「喜兵衛、おめえ、お里が好きだったよな。」

「ああ、でもあうことはできねえ。」

お里は、村のお役人の屋敷に奉公に上がっておった。そこは、きびしいとこで、奉公にきた娘に男が近づくことすらできなかった。

「おめえ、お里にあいたいだろう。」

「そりゃ、会いたいが、会えるわけねえだろう。」

「あわしてやろうか。」

そういうと、多平は、あの化粧箱を取り出した。そして、練りおしろいを取り出すと、喜兵衛の顔に塗りだした。しばらくすると、喜兵衛は、美しいおなごに変わった。

「ええか、けっして、水浴びをしちゃなんねえぞ。化粧が落ちるからな。」

そういうと、おなごの着物を着せて、お役人の屋敷の向かわせた。多作は、何も、荷物がなかったらおかしいと思い、漆塗りの化粧箱を貸した。多作は、中の、化粧道具をほかのものと入れ替え、喜兵衛を屋敷に行かせたかった。何かへまをして、正体がばれることを思い浮かべた。そのときのために、多作は、化粧道具を、わからぬとこに隠した。

 ところが、喜兵衛の化けた娘は、鬼に食われ、それから、この村には鬼は現れないようになった。

 それから、多平は、庄屋の娘と結ばれ、しあわせに暮らしたそうな。

 

 

と、言う話です。ところで、らんおうさん、この間、田舎の蔵をあさってたら、古いかめに入ったクリーム状のものを見つけたんです。それが何なのか。ためいしてみようと思ってるんですけど、らんおうさん、今度少し送りましょうか。それをぬると・・・・・