Sana

第四話 地獄からの使者2

日曜日

 

ミハルは自室で研究材料を確認していた。

ミハル「よいしょ。あったあった、これ、私の傑作スーツ。これがないと、今回の実験は成功しないのよね。でも、名前ついてなかったわね。どうしよう、そうだ。」

 

と、ミハルは居間に降りてくる。

ミハル「おはようございます、まさきさん。」

まさき「あ、おはようございます、ミハルさん。」

ミハル「いい天気ですね?」

まさき「ええ、天気がいいのはいいですね。って、どうしてサングラスしてるんですか?」

ミハル「え?ああ、私、あまり目がよくないので、とくに日の光には弱くて。」

 

ふと、箪笥の上に置いてある写真に気がつく。

ミハル「これは?」

まさき「あ、それは・・・、彼女だった子の写真です。」

ミハル「だった?」

まさき「おととし、交通事故で亡くなったんです。」

ミハル「・・・。」

まさき「もう忘れないといけないんですけね。いまでもひっぱって・・・。」

ミハル「そうなんですか。で、彼女さんのお名前は?」

まさき「橘早苗、2人の間ではSanaと呼んでました・・おかしいですね、ミハルさんに、こんな話しするなんて・・。」

ミハル「Sana・・・・さん、ですか・・。」

まさき「いつまでも、過去をひきずる。これではいけないと思い、でも、なかなか断ち切れない自分がいて。」

ミハル「まさきさん、本当にSanaさんが、好きだったんですね。」

まさき「ええ、心の底から愛した女です。いなくなった今でも、思いはかわりません。」

ミハル「だけど、こないだ、私とキスしましたよね?」

まさき「う・・あれは・ミハルさんが元気ないっていうから。」

ミハル「そっか〜、Sanaさんが天国で見てたらどう思うでしょうねw」

まさき「もう、ミハルさん意地悪ですね。勘弁してくださいよ。」

ミハル「あはは、ごめんなちゃい。」

 

ミハル「ところで、前から気になってたんですけど、この部屋って?」

まさき「あー、だめです、見ないでください・・。」

ミハル「もう、開けちゃいました・・・、こ、これは?」

まさき「あちゃー、見ちゃったか。」

 

中には、女性物のかわいい衣装がたくさんハンガーにかけてあった。

ミハル「うわ〜、かわいい、でも、どうして、まさきさんの家にこんなものが?」

まさき「そ、それは・・・。」

ミハル「ま、まさか!」

まさき「うう。」

ミハル「彼女さんの、遺品?」

まさき「あぅ、そんな、どんな好みの彼女ですか。Sanaはそんな子じゃないし。」

ミハル「だったら、どうしてですか?」

まさき「言ってもいいけど、きっと、僕のこと幻滅しちゃうかもしれないし。」

ミハル「そんなことないですよ。すごい知りたいです。幻滅とかしませんから、教えてください。」

まさき「う〜ん、じゃあ、ついてきてください。」

 

部屋の奥に進むと、なにやら、かわいい女の子の顔だけが飾ってあった

まさき「これなんだけど・・・。」

ミハル「女の子の顔ですね、これがどうかしたんですか?」

まさき「うーん、実は、僕はこれを被って、女の子になったりしてるんだ。」

ミハル「まさきさん・・・。」

まさき「・・・・。」

ミハル「かわいい〜、見せてください。」

まさき「え?え〜。」

ミハル「見たいみたい。」

まさき「恥ずかしいな〜。」

ミハル「じゃあ、私やってみてもいいですか?」

まさき「え?それは・・・。」

ミハル「やっぱ、だめですか、おもしろそーだしw」

まさき「だめじゃないけど、サイズがあわないかも、僕に合わせてるし。」

ミハル「大丈夫ですよ、服は自分のでいいですから。」

 

まさき「自分以外のダレかに、やってもらいたかったんです。この子はレナといいます。」

ミハル「レナちゃんかわいいわ。」

まさき「で、このドレスを着てレナになってほしんですけど、だめですか?」

ミハル「わー、フリルいっぱいありますね〜いいですよ。」

まさき「やった〜。」

 

まさき「ちょっと、大きいかなやっぱ。」

肌タイを着せる

ミハル「でも、まさきさん、男性にしては華奢な体だし、女の子やるにはちょうどいいかもしれませんね。」

まさき「なんか、褒められてる気がしないなw」

下着類はミハルの自前を使った

まさき「うわ、なんかこの時点でやばい。」

ミハル「え、なにがですか?」

まさき「えっと、なんか、いままで一人でやってきたことだし、いきなり女の子にこんなことさせて・・。」

ミハル「うーん、いいんじゃないですか、私、かわってますから。」

まさき「自分で言うかw」

 

最後にレナの面をミハルに被せるときがきた。

まさき「これが最後です、自分で被れますか?」

ミハル「うん、大体容量はわかるので、やってみます。」

ミハルは、耳元の部分が分割されている面に顔を入れる。

まさき「うーん、似合いすぎですw」

ミハル「ちょっと、大きいかもです。」

こもった声が面のなかから聞こえる。

まさき「えっと、着ぐるみしたら、原則的にはしゃべらないんです。仕草だけで、表現するんです。」

レナになった、ミハルがOKサインをだす。

まさき「おお、まさに女の子だ!」

そして、まさきは奥からデジカメを取り出してきて、レナの写真撮影に没頭した。

 

ミハル「なんか、やけに眠いです。」

まさき「そうなんですよ。着ぐるみすると不思議と眠くなるんですw」

ミハル「まさきさんは、昔からああいうのが好きだったんですか?」

まさき「うーん、そうだね、小学生くらいのときからかな。」

ミハル「私は女だし、昔はよくお人形遊びをしてて、着せ替え人形とか好きで、でも、これはそれの進化版みたいなもんですね。しかも動くし。」

まさき「そうですね。等身大の着せ替え人形ですね。しかも、その着せ替え人形の中に入ることもできる。」

ミハル「まさきさんは、自分とは別のダレかになってみたいわけですね。」

まさき「平たく言えばそうなるね。」

ミハル「しかも、性別も真逆の女の子にww」

まさき「ミハルさん、案外、小悪魔的なとこありますね。」

ミハル(私は小悪魔なんかじゃないけどね)

 

数日後

仕事から疲れて帰ってきたまさきを出迎えたのは、ミハルではなかった。

まさき「ただいま〜ミハルちゃん。」

ドアを開ける

まさき「え・・・?な、なんで?」

Sana「おかえり、まさき、ご飯できてるよ。」

まさき「え、さ、Sana?なんで?」

Sana「もう、そんなところにいつまでもいたら風邪ひくよ、私、先に台所にいるから、まさきも着替えてきてね。今夜はSanaの手作りカレーなんだから、まさき大好きだったもんね。」

なにがなんだか、わからないまま、まさきは言われるままに着替えて台所に向かう。

Sana「はい、おなかすいたでしょ、Sana特性シーフードカレーよ、一杯あるからたくさん食べてね。」

まさき「うん、いただきます・・・ん?うまいよ。」

Sana「あは、ありがとー。」

 

居間

まさき「でも、なんで?どうしてSanaは2年前に・・・。」

Sana「今日だけ、特別に神様がまさきに会わせてくれたの。」

まさき「でも、なんで。」

Sana「今日はまさきの誕生日でしょ、だからよ。」

まさき「あ・・そうか、すっかり忘れてた。今日は僕の誕生日なんだ。」

Sana「そうよ、自分の誕生日くらい覚えておかなきゃだめだよ」

まさき「そっか・・そうだよな。」

 

まさき「会いたかった、ずっと、・・・」

Sana「Sanaも、ずっと、天国でまさきのこと思ってたよ。でも・・・。」

まさき「でも?」

Sana「Sana以外の女の子に恋をしなかった?」

まさき「え?」

Sana「まさき、嘘つくの下手ね。Sana天国から見てたんだよ。ミハルさんって人とキスしたのも知ってる。」

まさき「え?な、なんで、あ・・あれは・・ただ、彼女が元気ないってゆうから・・。」

Sana「あーあ、Sanaのこともう忘れて、別の女の子とできちゃったんだ・・。」

 

まさき「それは・・・でも、ありがと。」

Sana「え?どうしたのまさき?」

まさき「きみは、Sanaじゃない。ダレなんだ?」

Sana「SanaはSanaよ。」

まさき「詰めが甘いね、Sanaは自分のこと名前では呼ばないんだ。」

Sana「え・・・。」

まさき「誰なのかは、わからないけど、ありがと。」

 

Sana「ごめん・・・なさい、まさきさん。最近、あなたが元気ないから、いとしの彼女にあえば元気でるかなって思って。」

まさき「え?それって、僕のほかに知ってる人って・・・まさか・・・ミハルちゃん?」

Sanaは小さくうなずく。

まさき「でも、なんで、Sanaの姿になってるの?」

Sana「これはね・・・。」

するち、Sanaは後ろむきになり、長い髪をうなじから半分にわけると、なにやらファスナのようなものが見えていた。

まさき「これは?」

 

Sanaは立ち上がり、自らの衣服を脱ぎ始めた。

条件反射で顔をそむけるまさき、Sanaは全裸になると、再び後ろ向きになる。

Sana「まさきさん、首の後ろに小さいファスナみたいなのがあるでしょ、それをひっぱって、もらえますか?」

まさきはおそるおそるファスナを下にひっぱると、Sanaの小さくきれいな背中に薄い亀裂が入ったかと思うと、さなぎから出るように、中から、ミハルの上半身が出てきた。

ミハル「まさきさん、ごめんね、私、Sanaさんになりきれてなくて、でも、まさきさんを元気にしてあげたくて・・・。」

まさき「ううん、その気持ちだけでもとってもうれしいよ、ありがとうミハルちゃん。」

 

完全にSanaの皮を脱ぎ、自分の服に着替える

まさき「で、でも、これは?」

ミハル「うん、私ね。前いたところから、実験中のこのスーツを勝手にもってきちゃったの。」

まさき「え〜!それ、やばくない?」

ミハル「そうね、やばいね。」

まさき「そんな涼しい顔してゆうことじゃないよ。」

ミハル「そうね。でも、心配ないわ。コレは私の所有物みたいなもんだし。」

まさき「そっか、でも、すごいね。本物のSanaみたいだった。」

ミハル「うん、特殊素材だから、普通の人間じゃ着れないわ。どうなるかわかんないから。」

まさき「そうなんだ・・・。」

 

少し微笑するミハル。

ミハル「まさきさん、ひょっとして、これ、着てみたいとか思ってない?」

図星をつかれ動揺するまさき。

まさき「ま、まさか、そんなことないよ。」

ミハル「そんなわけないわ。だって、あんな趣味してる人がこれに興味もたないほうがおかしいもんね。」

まさき「・・・。」

ミハル「着てみたいんでしょ?」

まさき「そ、そんなことは・・・。」

ミハル「男の子は、素直じゃないと、言葉では拒絶しても、あなたの下半身は嘘をついてないようだし、ふふふ。」

ミハルは膨張した、まさきの息子をなでていた。

まさき「うわ!な、なにしてるんだよ、ミハルちゃん・・」

後ろにすごい勢いで下がる

ミハル「ふふ、かわいいわね・・。」

まさき「ミハルちゃんのバカ!いくらミハルちゃんでも、やっていいことと悪いことがあるよ。」

と、つい大声で怒鳴ってしまった。

すると、ミハルは急に泣き出した(もちろん嘘泣き)。

ミハル「う・・そんなに怒らなくても。ちょっとおちゃめしただけなのに・・・ひどいわ、まさきさん。私はまさきさんのためを思って・・・。」

まさき「あ・・ご、ごめん、そんなつもりじゃ・・・。」

ミハル「もういいわ、まさきさんの、オタンコナス。」

ミハルはそのままどこかえ、走り去ってしまった。一人部屋に残されたまさき、足元には、さっきまで、ミハルが着ていたSanaの皮?だけが残されている。

 

ミハルは家から出たが、そのまま屋根の上で待機していた

ミハル「ふふ、まさきさん、ぜーったいに、あのスーツ着るわ。そのときが、最後ね・・。」

 

一人残されたまさき、Sanaの抜け殻に目を奪われる。

着てみたい。どんどんそんな衝動にかられる。手にとってしげしげ見つめる。よくできた皮だ、着たいw。

だが、まさきの脳裏にはミハルがいった言葉が残る。「普通の人間じゃ着れないわ。どうなるかわかんないから。」という意味深な言葉。

まさき「ミハルちゃんは、あんなこと言ってたけど・・・ミハルちゃんは普通の人間じゃないのか・・・そんなことない、どっからどうみても人間だし、彼女にできて僕にできないわけないし。」

と、男のくだらない劣等感で、その言葉を無視して、Sanaの皮を着ることにした。

とりあえず、全裸になり、ミハルがでてきたのと、逆の手順でSanaの中に体を潜りこませる。足、腰、手をいれて、最後に頭を被る。はめるとき少し苦労したが、なんとか入った。背中のファスナは手を回し、かるくあげると上に自動で上がっていった。

手や足は前の自分では考えつかなかったほど、細く白く、女の子の肌だ。顔もSanaのもの、しばらく見とれてしまった。ふと、窓ガラスを見ると、ミハルが立っていた。

Sana「み、ミハルちゃん・・え?」

声まで、女の子の声に変化しているではないか。

ミハルは家に入ってきた。

ミハル「あーあ、忠告したのに、やっぱ着ちゃったんだ・・・。」

Sana「ど、どうゆうこと?」

ミハル「どうなるかわかんないっていったのに・・・ま、これはこれで成功なんだけどね。」

Sana「え?なに?」

ミハル「それ、一回きたらもう自分では脱げないの、私以外はわね。」

Sana「え?そ、そんな・・・。」

と、あわてて、ファスナを探すが見つからず、肌に溶け込んでしまっている。

ミハル「無駄、無駄、あなたはこれからずっと、その中で生きていくのよ・・。」

Sana「そ、そんな?ミハルちゃん、冗談はやめてよ、僕をこの中からだしてよ。」

ミハル「やーだ、あんたは、私の罠にはまった愚かな人間、これからずっと、そのままよ。」

Sana「ミハルちゃん・・・あなた一体なにものなの?」

デビルキューブをとりだして、ブラックゴシックドレスに変わる。頭からは角がちょこっとでて、おしりからは先がとがった尻尾、顔は不健康そうな紫のメイクが表れた。

Sana「え?そ、その姿は?」

ミハル「そ、これが、私の本当に姿なの。」

Sana「まるで・・悪魔。」

ミハル「ピンポーン、私は正真正銘の悪魔なの、冥界から人間界にきた悪魔よ。」

Sana「そ、そんな・・、じゃあ、僕は・・・。」

ミハル「今頃気がついても、遅いわ。これから、あなたには私の実験道具になってもらうの、いいわね?」

Sana「冗談じゃない。」

と、その場から逃げ出そうとするが、なにやら見えない壁があり、外に出れない。

ミハル「往生際が悪い子ね。」

Sana「だれか〜、だれかきてください。」

ミハル「この空間では、いかなる声も音も外部に漏れることはないわ。あ、ついでに、あなたの本来の意思も声もいらないわ。これからはSanaという女性なんだから。」

ミハルが呪文を唱えると、Sanaは意識を失ったようにその場に倒れた。

ミハル「さ、あなたが、最後に声をだせるのは、そのスーツから無事生きてでられたとき、しかも一言だけよ。さあ、これからが本番ね。」

 

第三節に続く・・・