サクラ第3話

 

そんなことがあって数日たったある日、上司であるKから部屋に呼ばれたLであった。

 

L「Lです。」

K「入れ。」

L「はい、失礼します。ご用件はなんでしょうか?」

K「うむ、Fと共同作戦をやるそうだな?」

L「はい、でもなぜそれを?」

K「ここの諜報システムをあなどってもらってはは困る。もとい、スーツを着るそうだな?」

L「はい、一応。」

K「君はいままで、着ぐるみをやったことがあるのかね?」

L「いえ、一度も。」

K「なんの訓練もなしにいきなり実践はわが組織の恥となる。今日から訓練施設に行きたまえ、これは命令だ。」

L「訓練施設ですか?」

K「そうだ、そこで訓練してからやりなさい。」

L「了解しました。」

K「そこでの成績次第で君の今後が変わることになるかもしれんから、気を抜かずしっかりやりなさい。」

L「はい、がんばります。」

K「では、健闘を祈る。」

L「はい、失礼します。」

 

とKの部屋を出た所にFが待ち構えていた。

 

F[よ?Kになにいわれたんだ?」

L「いや、なんでもいきなりスーツはだめだから訓練施設に行けって。」

F「あ・・・お前まだあそこ行ってなかったのか・・・しくったな・・・。」

L「え?どういうとこか知ってるんですか?」

F「一応、ここでやってる連中はあそこで一回は訓練受けるし、任務において不適格だったりミスとかあるとあそこの施設に行くんだ。」

L「なるほど。」

F「まあ、ちょろいからがんばれよ。」

L「え?そうなんですか?」

F「ああ、ちゃんとやりゃすぐ卒業できっからさ。」

L「でも、俺、いままで一回も着ぐるみとかやったことなくて・・・。」

F「なーに心配すんな、俺だってそうだったさ。要は気合だ後輩。」

L「気合って・・・。ああ、でも訓練中にクライアントとのメール交換は・・・。」

F「ああ、あっちじゃできねーしな、俺がつないどくからいままでのメールのログを俺に渡してくれ。」

L「はい、お願いします。」

 

Fと別れて自分のデスクにもどると封書が机の上においてあった。

 

L[ん?なんだろ。」

封書の中には訓練施設の場所を書いているメモと注意事項がいくつか書いてあった。

L「ん?なになに・・・施設内では携帯電話など外部との連絡を一切禁止する、Fの言ったとおりだな。」

訓練開始は明日からなのでその日は仕事を早めに切り上げて帰ることにした。

 

翌日

 

Lはメモに書いている訓練施設に向かった、そこは郊外にありあまり人通りがないふるいビルの中にあった。

L「このメモによれば、ここであっているはずなんだけど・・・。」

しかし、そこにはなんの看板もない雑居ビルだった。

L「本当にここでいいのかな・・・。」

女「もしもし、もしかして訓練希望の人ですか?」

L「うわ・・・ご、ごめんなさい、急に話しかけられたもので・・・。」

女「いえいえ、それで訓練希望の人ですか?」

L「はい、ここだと言われて来たんですが・・。」

女「ここですよ、ご案内しますので私について来てください。」

L「はい。」

女「あ・・・一応、規則ですので携帯電話やPDA、モバイルPCなどは私が預かります。」

L「わかりました、今日は携帯電話しか持って来てません。」

女「わかりました、もし変な気をおこしてどこかに隠していた場合、今後の保障はできかねますのであらかじめご了承ください。」

L「今後の保障って?」

女「それはご想像にお任せします。」

L「ひっかかる言い方だな・・・はい。」

携帯電話を女に渡す

女「ありがとうございます、それでは私について来てください。」

そういってしばらく彼女の後ろをついていくことになった、階段をあがっていくとドアがあり、彼女はそのドアを開けた。

女「さあ、ここでしばらくお待ちください。」

L「はい。」

女に誘導されて、部屋に入ると事務所風の内装で椅子と机が置いてある。

女「ここでしばらくお待ちください。」

L「はい・・・お。」

女「どうかしましたか?」

いままで薄暗くてよく女の容姿を見ることができなかったが明かりがあるとこで改めてみると長身で髪の長いそれは美しい美女だった。

L「い、いや・・・あなたがあまりにも美しくて・・・つい。」

女「ありがとうございます。私は退室を命じられておりますので。」

すると女はそのまま部屋からでていってしまった。

L「あーあ、せっかく知り合えたのに。」

そのまま部屋の中央にある椅子に腰掛けた、部屋には空調がほどよい温度で効いていてとても心地がよかった。長時間の移動のためか少し疲れがあったのか

転寝をしてしまう。

どれくらいの時間がたったであろう肩をゆすられて起きた

L「う・・・うわ・・・。」

男「起きたかな?」

L「え・・・あ・・・あの・・・す、すみませんでした。」

男「いやいや、長旅で疲れていたんだろ。」

L「で、でも・・・すみません・・・。」

男「かまわないさ、じゃあ話しを進めようか。」

L「は、はい・・・。」

男「ここはスーツ着用のための訓練施設だ、もちろん世間とはかけはなれているし存在だってわからない。」

L「はい。」

男「ここで3ヶ月ほど訓練をしてもらう、その間に基礎を身に着けて本番の仕事にいかしてほしい。」

L「はい。」

男「最後に試験を行う、実技試験と筆記試験がある。これは筆記試験のためのマニュアルだ、試験はここから出題されるのでしっかり勉強するように。」

L「はい・・・うわ・・・かなりありますね。」

男「もちろんだ、プロフェッショナルとして雇っているわけだからね、能力のない者に会社はムダな給料は出せないよ。」

L「う・・・身につまされるお話で・・・。」

男「訓練生にはそれぞれ個室を用意している、訓練中はそこで寝食をとってくれ、訓練中は、外出は一切禁止、必要なものがあれば言ってくれればある程度はそろえよう。」

L[外出禁止ですか・・・。」

男「そうだ・・・出られてはなんのために通信機器を預かっているのかわからないだろ。」

L「そうですね。」

男「訓練を中座したらもちろん成績もあげられんよ。」

L「う・・・。」

男「それと、これは明日から1ヶ月分の訓練メニューだ。」

L「ダンスレッスンに・・・体操・・・家事・・・そんなのまであるんですか?」

男「そうだ、あらゆる状況を想定しているのでそれくらはいる。」

L「(なんだよ・・・F先輩・・・全然ちょろくないじゃん・・・)」

男「なんだね?どうかしたのかね?」

L「いえ・・・なんでもありません。」

男「やる前に聞こう。」

L「え?なにをですか?」

男「君は本当にこの仕事についていきたいかね?」

L「はい。」

男「訓練はつらい、中座したら今後の保障はできないがそれでもやるかね?」

L「はい。」

男「そうか・・・わかった。これは部屋の鍵だ、訓練生の部屋はこの上の階になっている。」

そういって男は部屋の鍵を渡した。

 

部屋を出るとさっきの女性が立っていた。

 

女「お待ちしておりました、それではお部屋にご案内します。」

L「ありがとう。」

女「私についてきてください、お荷物お持ちしますよ。」

L「いえ、女性に荷物を持たせることはできません。」

女「そうですか。」

 

そのまま女性に自分の部屋まで案内されるままに薄暗い通路を平すら歩いたり上ったりした。

 

女「ここです、どうぞ。」

L「どうも。」

 

部屋は1Rでユニットバス、部屋にはクローゼット、炊事場などがあった。

 

女「今日から3ヶ月は、あなたはここで暮らしていただきます。はじめにも言われたと思いますが、外部との通信はできないよう電話は置いて乗りません。電波も遮断する構造になっております。」

L「うん、わかったよ。」

女「もちろん手紙なども許可できませんので。」

L「うん。」

女「今日はゆっくりお休みください、明日から訓練が始まります。」

L「うん。」

女「朝食は1階の食堂に午前7時から8時まで、昼食は11時から1時まで、夕食17時から18時までです、それ以外の食事はできません。」

L「うは〜けっこうシビアだな。」

女「時間を守るのは社会人として当然のことです。」

L「そうだね。」

女「それでは失礼します。」

L「はい、ありがとうございます。」

 

そう言うと女は部屋から出て行った。一人残されたLは荷物をおいて床に寝転んだ。ひどく疲れていたのかそのまま寝てしまった。

しばらく寝ていたのか起きたときには午前2時を回っていた。風呂に入って布団を敷いて眠ることにした。

翌日から、本格的な訓練が行われることになった、それは映画さながらのエージェントになるための訓練だった、基礎体力から武術、家庭における雑務まで幅広いジャンルに及んだ。

定時には終わるが訓練が厳しいため、部屋に帰っても風呂に入ってそのまま寝るだけの日々が1ヶ月ほどつづいたある日のことだった。

 

教官「さて、いままでは基礎的なものを訓練してきたわけだが、今日から応用に入る。いままで身につけ学んだことを忘れていなければ十分に対応できるはずなので、がんばってほしい。」

L「一体なにをするんだろう・・・。」

教官「本日より、君たち訓練生は二人一組となって寝食をともにしてもらう。」

訓練生は、教官の言葉にうろたえたり騒いだりする。

教官「静かに、君たちが配属されるのは自分を偽ったものだ、悪くいってしまえば変装して人を欺くことだ。とくに難しいのは女性になることだ、したがって本日よりきみたちにはパートナーとなる女性をひとり選んで寝食をともにすること。」

訓練生「おい、聞いたかよ。女性と一緒にやるんだってよ。」

訓練生2「うは、寝食ってことは夜もか、眠れねー。」

教官「おいおい、なにを変な想像をしているんだ、パートナーといっても女性訓練生だ。」

L「じょ、女性訓練生?そんなのがあるんですか?」

教官「そうだ、いままで君たちには言ってなかったが男女別に訓練生が存在している、あっちも男性に変装するための実地検分というところだ。」

L「はぁ・・・マジか・・・。」

教官「もう彼女たちもこちらに来ている。」

すると教官は手元にあったスイッチを押すと。大きな扉が開く、中にはこちらと同じ5人の女性が立っていた。

女性教官「全体、前進。」

5人それぞれの前に女性がたち、お互いを見つめ合う、緊張が走る。

女性教官「連れてまいりました。」

教官「「お疲れ様です。」

教官同士でお互い敬礼をしている。

その間にも男女の訓練生同士で相手を観察している。

教官「訓練内容はお互いきかされているはずだ、パートナーとなる人間はくじで決める。」

どよめきが起こる。

教官「静かに、端から順番に5までのカードを貼り付けてあるはずだ。」

訓練服に最初からついている数字は管理するだけはなく、このときのためにあらかじめ準備されていたのだ。

教官「女性にはまだ番号がない、そこで最初に女性に5つの番号がかかれたボールをいれたこの箱から順番にひき男性にわからないように番号のついたあちらの部屋に移動する。その後、男性が同じ箱から数字の記入されたボールをひく。お互い誰が何番なのかわからない、全員終わったところで公開してパートナーとなる者を確認する。」

L「俺は・・・一番か・・・、女性の容姿を判別して好みを選ぶのはよくないけど・・・あっちだって同じこと考えてるはずだし・・・。」

教官「わかっていると思うが、一度決まったものはなにがあっても変更はできない。」

L「後戻りはできない・・・か・・・。」

 

男女はくじを引き、Lにはセミロングのおとなしいイメージの女性がパートナーとなった。

 

L「宜しく、俺はL・・・まあ、本名じゃないけど。」

女「私はサナエ、よかった、私、Lさんと組みたかったし。」

L「あ、ありがと。」

サナエ「あ・・・ひょっとして照れてる?」

L「いや・・・そんなことはないよ・・・。」

サナエ「うそが下手なのね・・・顔が赤いよ。」

 

教官「それでは、本日はこれまで、お互いパートナーを信頼してしっかり訓練にはげむように。」

訓練生「教官、質問いいですか?」

教官「なんだ?」

訓練生「いい年の男女が同じ部屋で一緒にいるってことは、恋愛とかは自由なんですか?」

教官「ああ、それは各自の裁量に任せる。」

訓練生「おお、マジか。」

喜ぶ仲間の訓練生をみるもなぜか心底から喜べない自分がいた。

教官「今後、あと2ヶ月間はすべて実地訓練する。」

L「はい。」

教官「今後はいままでの部屋とは別の部屋に移ってもらう、すべての訓練生にある課題をだす。それはお互いに秘密パートナー同士でももちろん同じ訓練生でも秘密が守れないようではりっぱなエージェントにはなれない。」

教官はその場で男女10人全員に封筒とライターを渡す。

教官「それぞれ、5M以上はなれて中身を確認し、手紙はその場で焼却せよ。」

言われるがままに、5M以上の感覚をとって封書の中身を確認した。

「極秘任務・・・男性訓練生で最終的に卒業できるのは1名のみ自分以外は信用するな。」

L(なに、卒業は1名・・・みんなライバルってことか・・・。)

教官「もう読んで理解できただろ、手紙を封書にもどし、みんなの前で焼却処分せよ。」

訓練生は円陣をとり封書をもっていたライターで焼却処分した。

教官「自分に課せられた課題は心にとどめておきなさい。口にはださないこと、いいか?」

訓練生「了解しました。」

教官「声が小さい、もう一度、いいか?」

訓練生「了解しました。」

 

次回につづく

 

注意

 

この物語は作者の空想上のものであり、登場する人物団体名は架空のもので存在しません。