日本TSF古本こほんI

第十回 ロボット博士

 

え〜気まぐれ連載の日本TSF古本こほんの第十回目は・・・
〔データ〕

作品名: 「ロボット博士」(長編)

作者名: 海野十三
掲載(収録): 
SFシリーズ ロボット博士 ポプラ社

掲載(発行)時: 1971年12月30日

 

【粗筋】

天才科学者の谷博士は、人里はなれた山中の研究所で人工生命体「超人X号」に移植するための人工脳髄の開発をしていた。だが、ある日、落雷によるショックで気を失ってしまう。だが、その一時間後、近くにハイキングに来ていた少年たちに助けられる。と、その時、助手に使っていたロボットが彼らの前に姿を現す。博士は落雷のショックで目が見えなくなっていたので、少年に、ロボットの制御停止を頼む。だが、制御版は作動していなかった。

誰も制御していないのに勝手の動くロボット。彼らがロボットを停止させようとしているうちに、ロボットは、保管庫からダイナマイトを持ち出すと、それでダムを決壊させて姿をくらませる。

数日後、死刑囚の死体が盗まれるという怪事件が起こる。そして、あのあと知人の病院に入院していた谷博士が急に退院し、研究所に戻ると、ロボット工場をはじめ、成功を収めた。

だが、博士を助けた少年たちが、その工場に訪れた事によって、その谷博士は、偽者で、本物はまだ入院中なのがばれてしまう。偽の谷博士は逃げ、それとともに、本物の谷博士も何者かに連れ去られてしまう。

怪事件の連続に、警視庁から派遣された警部は、捜査中に怪しげな人物に捕らえられてしまう。その人物こそ、死刑囚の身体に、自分の人工脳髄を移植した超人X号だった。彼は、谷博士を誘拐し、自分の肉体となるべき人工肉体の試験体として、男女の人工肉体を作り、まずはちゃんと動くのか、自分と同じ人工脳髄によって動かそうとするが、失敗していた。そこで、捕らえた警部の脳髄を使って実験をする。

最初は男の身体に入れて、実験するが失敗し、今度は少女の姿をした女人工肉体に移植する。今度は成功して、警部は少女として甦る。だが、隙を見て逃げ出す警部。このことを知らせようとするのだが、見知らぬ少女の姿で警視庁の警部だと言っても誰にも信用されず、危うく精神病院に入れられそうになってしまう。だが、何とか信じてもらい、超人X号拿捕に向かう。

超人X号の卑劣な計略を何とかかわして、彼らは超人X号を捕らえる寸前まで行くのだが、宇宙ロケットで逃げられるが、何とかそれを爆破する。そして、警部は、谷博士によって、元の身体の戻してもらう。

 

(一言)

まあ、ご都合主義満載のお話です。子供向けのSFミステリーなので仕方がないのでしょうが、まさか、中年男の警部の脳が、156歳の少女の身体に移植されるという設定が出てくるとは思いませんでした。声は元のままということなんですが、最初は気丈に立ち回っていた警部が、戻すことは難しいといわれると、急に気弱な女の子みたいになるシーンは、面白かったです。

まあ、子供SFにもこういうTSシーンがあるという貴重な作品だと思います。