落語もどき「居酒屋」

え〜毎度ばかばかしいおはなしで、時間まで御付き合いいただきます。
酒を飲みますてぇ〜と、日ごろとは違う人格が出てくる御人がおられます。
いつもは、ムスッとされて怒ってばかりの人が、酒が入ると、ワンワン泣き出したり。
ヘラヘラ笑ってばかりいる人が、突然怒り出したり、石の地蔵さん見たいに黙ってる人が、にぎやかにしゃべりだしたりいたします。
その中でも、酒が入ると誰かれなく喧嘩を吹っかける喧嘩上戸なんてのもございます。
「やい熊公、なんだってんだ。」
「何だとは、こっちのセリフだ。田舎ものの八ベえが。」
いつもは、おとなしく仲のいい、八つぁんと熊さんですが、どうもこの二人。酒が入るとところかまわず喧嘩を始めてしまいます。このあいだは、なぜ、雨の日には、雨が降るかなんてくだらないことでけんかをはじめてしまいました。まったく、人の喧嘩は、犬も喰わないって言いますが、さわらぬ神に祟りなしなのですが、店の中でやられてはそうは行きません。
「おやじさん、どうします。また、八つぁんと熊さんが、始めちゃいましたよ。」
「どうもいけねえな。あの二人は、酒が入ると喧嘩を始めやがる。お信、おまえさんが、二人に酒などだすからだよ。」
「でも、おやじさん。居酒屋に来て酒を飲まずにどうするか。って、騒ぐものだから。つい。」
「飲ませたものは仕方がないが、困ったねえ。ところで、あの二人、何でけんかしてるんだい。」
「ええ、あたしと、お雅ちゃんとどっちが、器量がいいかって。」
「おめえと、お雅か。どっちも、今小町って言われているから、コリャむずかしいな。」
「やだわ、おやじさんたら。もうしらない。」
「おやおや、あかくなって、こりゃあ、七輪の炭団よりも真っ赤だよ。」
「もう、いや。」
そういうと、看板娘のお信ちゃんは店のなかへ入ってしまいました。
さて、困ったのは、店で喧嘩しているこの二人のことです。
「だから、ここの板前だった信太のあとをしっかりと守っているお信ちゃんが、今小町だってんだ。」
「なに言いやがる。たしかに、お信ちゃんはいい子だが、職人気質だった髪結いの政吉に劣らない娘髪結いのお雅ちゃんが一番だ。」
「表へ出ろ。」
「おおさ。」
「おれ達以上に喧嘩ぱやかった、信太と政吉の変わりにはでにやってやろうじゃねえか。」
「おおさ、突然いなくなりやがったが、あいつらも派手な喧嘩は好きだったからな。」
いつもは仲のいい、八つぁんと熊さんですが、こと、酒が入ると手がつけられない。とうとう二人は、表へ出ようということになりました。
と、そこへ、さっき奥へ引っ込んだお信が、お盆に碗をふたつ乗せて戻ってまいりました。
「八つぁんも、熊さんも怒鳴りあいで、口の中が乾いたでしょう。これでも飲んで、潤して。」
というと、お盆を二人の前に差し出しました。
そこには、ふが入った味噌汁が乗っております。
「こりゃありがてえ。お信ちゃんの手作りかい。」
「なんでえ、ふがはいってやがらあ。鯉のおまんまじゃねえか。ぱふぱふぱふ。」
「やい、熊公。お信ちゃんの味噌汁が飲めねえなら、おいらがのんでやらあ。」
「誰が、呑めねえって言った。おめえにやるぐらいなら、おめえの分も飲んでやらあ。」
ひどい奴もいたモンで、熊さんに飲まれちゃならないと、あつい味噌汁を、八つぁんは、一気に飲んでしまいました。
「あつあつあつ、熱すぎて、味がわからなかったが、お信ちゃんの味噌汁はうめえ。」
「なにいってやがるんでい。味噌汁てなあ、こう呑むんでい。」
そういうと、熊さんは、ゆっくりゆっくりと飲んだのですが、あまりの熱さに目が白黒してしまいました。
「どうおいしかったでしょう。このおふは、おやじさんの手作りで、この間来た南蛮人のお客さんが、『オオ、ホントメイド。』って言って喜んだくらいおいしいんだかあら。」
「ほんと冥土か。ホントに冥土に行きそうにあつかった〜〜〜。」
「だが、なんだか身体の芯から暖かくなってきたぞ。」
「おや、おいらもだ。」
二人がそう騒いでいますと、きれいに剃った月代から髪が生え出し、胸や、尻が膨らんでまいりました。そして、ぼさぼさに生えた髭がきれいに落ちて、浅黒かった二人の顔が白く引き締まってまいります。
「おいおい、なんだか変だぞ。」
「おれの、からだが・・・へんだわ。」
見る見る間に二人の着物を着たざんばら髪のかわいい娘が二人立っておりました。
「あら、あなたは、お熊ちゃん。」
「そういうあなたは、お八ちゃん。どうしましょう。あたし達、女になってしまったわ。」
「そう、これで、喧嘩はできないでしょう。あたしと一緒にこの間、娘になったお雅ちゃんに髪を結ってもらうといいわ。」
「でも、どうして?」
「居酒屋だけに、居酒い(いさかい)は、看板(かんべん)です。」
お後がよろしいようで・・・・


落語風にまとめるつもりが、やっぱむずかしいですわ。
ごめんなんしょ。