「キャロルの贈り物」

第一話     







「つまんない」


ベットに寝そべって天井に向かってつぶやく。
この言葉を十八年という短い人生の中で何回つぶやいたのだろう。
毎日毎日同じことの繰り返し。
誰かが「無駄に何もしないで時間を使えることが人間にとって一番幸せだ」と言っていた奴がいたがあれは嘘だ。
何も無いことはやはりつまらない。


「あーなんか起こらないかな」
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「起こりますよ」
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とっさに体を起こして部屋を見わたす。
でも、そこには誰もいない。


「そらみみ?」

いや、確かに聞こえた。


「ゆうれい?」

急に背すじに寒気が走る。
奇声をあげながら廊下にへと駆け出した。
すると、隣の部屋にいる妹の亜美が慌てて飛び出てきた。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「出たんだよ。出たんだよ。ゆうれいが」


すると急に亜美の態度が変わる。
さっきまではいかにも自分の事を真剣に心配をし、何が起きたのか不安が入り混じっていた顔が呆れ顔に打って変わる。
そして、あきれた様に心配して階段を上がってきた父と母に向かって


「何もないよ。ただお兄ちゃんが寝ぼけてゆうれいを見たんだって」


と言いながら自分の部屋へと入っていった。
心なしか、ドアを閉める音は彼女の心情を語るように大きな音だった。
父も母も一言、二言文句を言いながら帰って行く。
何も反論できないまま呆然と彼らの後姿を見送った。


「うそじゃない」

恐る恐る部屋のドアを少し開け中の様子を伺う。
やっぱり勘違いだったのかなと思い部屋へと入っていった。
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ほんの一瞬だった。映画とかアニメとかではよくある。何も無い所に急に何かが現れるシーン。それが今まさに僕の目の前に起きた。
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「かわいい」


現れたのが、いかにもお化けと分かるものならまた叫んだに違いない。
でも目の前にいたのはお化けとは正反対の女の子だった。
背は俺よりも小さく多分、亜美と同じくらいだから160前後。
髪は黒く腰くらいまでのストレート。
顔はすごく小さくて目はパッチリとした二重。
白いワンピースを着ている。
こんなかわいい子に会ったことがあるだろうか?
でも、ゆうれいにはかわりがない。
おそるおそるその子に向かって話しかける。


「君は誰?」

「申し訳ありません。わたくしアイリッシュ・マッケイブ・キャロルと申します。
長いのであればキャロルとおよび下さい」

と言い礼儀正しくお辞儀をする。


「外人さん?ゆうれいじゃないの?」

「えーと。んーと」


手の甲をあごに付け悩みだす。
俺の中にある恐怖はもはや彼女は何者だという不信感にへと変わった。


「外人さんですか?んーとある意味では外人さんかな?
 わたくしの国はあなた方、地上人が知っている国ではないので」

「はぁ?何それ。人間?それに何であんたが俺の部屋にいるんだよ!!」

「そうですね。ごめんなさい。最初からきちんと説明しますね。
 わたくしの国はあなた方、地上人のみなさんが知っている国で暮らしているわけではありません。
 この地球に存在しながら地上人の人々には分からない世界。
 つまり別世界の住民です。地上の国と違うのは貴方たちが呼んでいる魔法がわたくし達には使えるという事です。
 地上人とは魔法が使えるか使えないかだけなんで人間かな?
 なぜここにいるかというのは、あなた様を観察したいのです。
 わたくし達の世界では十八になるその年に、地上の世界を観察しなければいけないのです。
 ですから、引き受けては貰えませんか?だめですか?」


キャロルは俺のすぐそばにまで来て上目使いで訴えてくる。


「だめかなって言ったってそんなこと信じられるかよ。
 それに仮にそれが本当だとしても何で俺なんだよ。
 プライバシーもありゃしないじゃないか」

「だって言っていたじゃないですか?なんか起こらないかなと。
 それにただとは言いません。あなた様に一つだけ魔法を授けます。
 誰にでも変身できる魔法。まだ信じてませんね?わかりました。
 わたくしがまずやってみますね。誰がよろしいですか?」


あんなの言葉だけで俺が選ばれたのか?何だよそれ!!

それに魔法なんて信じられるはずがない。
しかし現実に彼女はこうして俺の目の前に急に現れた。
そう、魔法のごとく。


「それじゃー亜美に変身して見せてくれよ。出来るなら」

「亜美ってさっきそこに来ていた女の子ですよね。いいですか。いきますよ」


そう言うと彼女は一歩後ろに下がりまるで祈るように胸の前に両手を指でクロスさせ何か呟いた。
すると、パッと目の前が白くなり再び目を開けるとそこにはさっきのキャミと短パン姿の亜美から白いワンピース姿の亜美がいた。


「どうですか?」


と聞きなれた亜美の声で聞いてくる。
何もかもうそのように思えてくる。夢のように。
それでも、指で手をつねると痛いと感じる。
彼女の力はもう疑う余地が無い。
だからこの話も嘘ではないのだろう。
これでつまらない毎日が一気に変わるかもしれない。
俺は引き受けることにした。

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「ではきちんと詳しく説明しますね。
 私があなた様を今日から一年間観察します。
 でもあなた様にもそしてほかの人からにでもわたくしのすがたは見えません。
 だからいつあなた様がわたくしが観察しているのか分かりません。
 でも、あなた様がわたくしを必要としていてそれにわたくしが観察しているときはあなた様にも私の姿が見えます。
 その際もほかの人にはわたくしの姿は見えません。
 あなた様は普段通り生活してくださればかまいません。
 それとあなた様が変身なさっても変身したお相手は存在しています。
 でもわたくしが観察していてあなた様のそばにいる時は私の魔法で一時その人を消す事もできます。
 ずっと観察しているわけでもないのでわたくしがいたらのことですが。
 わたくしをお呼びになっている時はあなた様の前に現れます。
 それとあなた様はわたくしがいなくとも変身する事はできます。
 わかりましたか?」


彼女の話を聞きながらある一つのアイデアが浮かんだ。「亜美に変身して、女子高に行きたい」

「キャロル。明日、亜美に変身してみたいんだ。
 だから亜美を一日消してくれないか?」

「分かりました。お安い御用ですよ。
 そうだ。キスしないと変身できないんで亜美さんがまだ起きてない、明朝にまた来ますね。それじゃーおやすみなさい」

「キスなんて聞いてねーよ!!」












あとがき

えーと今度はダークは含むつもりはありませんので安心して読んでください。
次の話はTSものじゃよくあるような話の展開になりそうなんですが、がんばって書き上げます。
読んでいて、これは「姫ちゃんのリボン」のパクリじゃないかと思う人も数多くいると思います。
正直言います。パクリました。ごめんなさい。