「思いは常識をも越えて」

 

 

 

 

 

どんなに好きでも結婚できない人がいる。

私とあなたがいくらお互いが好きでもそれは罪。

 

 

道徳的にだめなの?

 

 

でも、家族・兄妹の前に男と女。

他人同士の男女の関係は紙一枚で繋がり紙一枚で切れるのに、私たちのつながりは決して切れない。

 

恋から始まる愛が男女の愛。

愛が初めから存在する家族・兄弟愛。

本当に強いのはどっちだろうか?

 

でも、どっちでも良い。

 

ただ、わたしは・・・・・・・

 

 

 

 

 

お兄ちゃん知ってる?

 

私たち兄妹なんだよ。

 

 

 

 

 

お兄ちゃん知ってる?

 

私たち結婚できないんだよ。

 

 

 

 

 

お兄ちゃん知ってる?

 

私はお兄ちゃんのこと愛しているんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

(現在:車内)

 

 

 

 

 

「なぁ。あまね一人で大丈夫かな」

 

一瞬、助手席に座る妻を見て聞く夫。

 

 

「あなた、危ないわよ。ちゃんと、前を見て。あまねなら大丈夫。もう、小学五年。一人でしっかりと留守番できるから」

 

「一緒に連れてくれば良かったんじゃないのか?」

 

「あまねは、知らないのよ」

 

「・・・・・・・君がそう言うのなら」

 

 

男はずっと真っ直ぐと続く道を見ながら、あの日を思い返す。

そう、妹が死んだのも同じ桜が舞い散る春の季節だった。

 

 

 

 

 

 

 

12年前)

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、結婚するって本当なの?」

 

玄関に入るとすぐに妹は駆け寄ってきた。

綾の表情は驚いているというよりはむしろ、怒っている。

じっと、大きな目が僕の顔をグッと睨む。

 

綾は結婚に反対なのか?

 

 

「母さんから、聞いたのか?」

 

「結婚は本当なの?」

 

「あぁ本当だ。今度、綾にも逢わせるよ。同じ大学の同輩の楓って云うんだ」

 

「そう・・・・・・本当なんだ」

 

 

妹の顔は赤色から一瞬にして血の気がなくなる。

と思うと、急に二階へと足早に自分の部屋へと駆けていった。

 

予想外の態度にその場にたたずんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後

 

 

 

 

 

 

 

病院のロビーの椅子に僕は身の全てを託す。

もう体に力など、立つ力など残されてはいなかった。

綾はトラックにぶつかりたった今、死んだ。

 

夜の人通りの少ないせいか、目撃者は居なかった。

加害者のトラックの運転者は、綾が歩道から急に飛び出てきたらしい。

それが自分を守るための嘘なのか、本当の事かはわからない。

 

綾は自殺を図ったのだろうか?

 

でも、もう今の僕にはどっちでもいい。

 

綾が死んだことに変わりは無くて、気休めにもならない。

涙がこれでもかと云うくらい僕の中から溢れ出す。

口が感じるしょっぱさ。

体も心も悲鳴を上げている。

 

 

 

 

いつから居たのだろう?

 

目の前に楓が居た。

僕はまるで楓に助けを求めるように右手をあげて楓を掴もうとする。

すると、体が椅子から崩れそうになった。

楓は僕を抱きかかえるように、僕は彼女に包まれた。

楓はそっと僕の唇にキスをする。

 

寂しさと悲しみ寒さにおびえたった僕は彼女がすごく暖かかった。

僕は彼女を力強く抱く。

すると、彼女はやさしく囁く。

 

 

「私がいるよ」

 

 

 

 

 

楓は綾の葬儀でも一度も目にした事が無いのに涙に溢れていた。

 

 

 

 

 

綾の死もあり、楓との結婚は遅れたが翌年に結婚をした。

結婚生活で、改めて新しい楓を発見していった。

母親と同じ味付けの料理をだした時には驚いた。

結婚する前にも料理を作って食べた事があったけど、まるで違う。

 

もっと違うと思うのは、楓とのセックスだ。

 

今まではどっちかと云うと僕から求めることが多かった。

楓からいう事など、皆無だった。

それが、楓から求めることの方が多い。

性格も以前よりか違う。

僕が楓に何気なく聞くと、

 

 

「あなたの為に変えたのよ」

 

 

と笑って話す。

 

でも、その笑い方も前の楓とは違う様に感じる。

何故か、楓が綾に見えるのだ。

それでも僕は結婚していってますます楓の事が好きになっていった。

結婚の二年後には守る家族が一人増えていた。

 

 

 

 

 

 

 

(現在)

 

 

 

 

 

綾の墓石の前に手を合わせる楓。

 

 

「なぁ、楓」

 

「なぁに?」

 

「俺と結婚して良かったか?」

 

 

春の暖かな風に揺られる、長い髪を手でおさえながら、楓は近づき唇を僕の唇へと運ぶ。

 

「当たり前よ」と囁きながら。

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃん知ってる?

 

私、生きてるんだよ。

 

 

 

 

 

お兄ちゃん知ってる?

 

私、お兄ちゃんの奥さんなんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃん知ってる?

 

私たち結婚しているんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 今回は兄弟愛をテーマにして書きました。世界中の国の全ての法律で兄弟同士の結婚は禁止されています。あたりまえのようですが。道徳的のため。両親が血の繋がりが強いと生まれる子供に体に異常が出やすい傾向があるから。このふたつが理由に浮かびますが、人間が築いた歴史の中では兄弟での結婚の例は実際にいろいろとありま

す。それにこれは旧約聖書で実例じゃないですが、人間の最初はアダムとイブ。人は続くわけですから。アダムとイブが生んだ子供がまた子供を作る。確実に兄弟ですよね?ユダヤ教やキリスト教に大きく関わる旧約聖書にも兄弟の愛が存在するというわけです。私は妹を愛しているわけじゃないですよ。それに妹は居ませんから。えーと、綾と楓が入れ替わったのはいつかは分りません。病院に来たのは本当の楓かもしれないし綾かもしれません。どっちでも、いいという事で許してください。ちなみに私は、お兄さんは薄々気づいているのだと思います。楓はもしかしたら、妹かもしれないと。でもそんな事は無い。と自分を納得させているのでしょう。でも、そんな時はタイトルを見てくださいね。最後まで読んでくださってありがとうございました。