「死ぬほど好き」 






「森上って一志君のこと好きらしいよ」
「えっ」
千鶴は、彼氏の名前を言われたことよりもその前に出た森上という名前に驚いていた。
森上みゆき。千鶴と同じクラスメートでもある。
千鶴は、話しかけた由香里から目線を森上の席に変える。
だが、森上はいない。千鶴は、彼女が今日、休みだと思い出した。
彼女が休むことなんて珍しかった。彼女の好きなことは勉強しかない。
彼女が休み時間にすることといえば、本を読むか授業の予習をしているかのどちらしかない。
千鶴は、彼女が異性に興味があるなど考えても、結びつかなかった。
「そんなことあるわけないじゃん。だってあの子だよ」
「だって見たんだって。森上が一志君に昨日の放課後に告っているところ」
「・・・・」
だから、森上は休んだんだ。そう千鶴は確信した。
「あっでも、ふられたってさ。すぐ、涙流して去っていったって」
「私、確かめてくる」

千鶴が、隣の一志の教室に来ると、一志はもう教室にはいなかった。
授業が早く終わったため一志は、部活へと既に向かっていた。

千鶴も、一志も同じテニス部に所属していた。
二人は同じクラスになったことは、中学のこの三年間なかった。
付き合い始めたのは、二年の夏。
三年のクラス替えには、お互い同じクラスになることを祈ったが、その願いが叶うことは無かった。


 男子と女子が別々に練習をするとも、それに大会が近づいていたので千鶴が一志に聞くチャンスは部活が終わって二人がいつものように一緒に帰るときまで無かった。
「昨日、森上みゆきに告白されたって本当?」
一志は、その言葉に驚かずにはいられなかった。
誰にも知られたくない。知ったところで、自分に何も非があるのでもないのだから良いのだが、 それでも自分があの森上に惚れられたという事実は、からかわれる話題になることは目に見えていた。
だから彼は他人には誰にも言わなかった。
森上に友達がいないのは知っていたから、自分が言う以外ばれる事は無いと高をくくっていた。だが・・・
「どうして知ってるの?」
「じゃあ、やっぱり告白されたんだ。なんで言ってくれないの?」
「だって、あの森上だしさ。皆にからかわれるにきまってるから」
「それでも、私には言って欲しかった」
「・・・・ごめん」
一志は、よく分からなかったがとりえず謝った。
「いいよ。だって振ったんでしょ」
「当たり前だよ。森上だよ」
「じゃあ、森上さんじゃなければいいってこと?」
「あっ、そうじゃないよ」
一志は、まずい事を口走ってしまったと思ったが、 でも千鶴はその言葉とは裏腹に表情は怒ってもいなかった。
彼女は、一志の言葉に悪意が無いことは分かっていたからだ。

辺りには誰もいないことを確かめながら、二人はその場でお互いの唇と唇を合わせた。

二人が、愛を確かめているそれと同じころある一人の女の子が自らの手でこの世から去った。



「まさか、森上が死んじゃうとはね。ねぇ千鶴?」
「えっ・・・上倉さん、何かいった?」
「どうしたの?今日の千鶴おかしいよ」
「そ・・・そうかな?」
「だって、私のこと上倉さんとかいうし。それに授業中も名前言われても反応はしないし。 あっでも、質問の答えは完璧だったよね。予習でもしたの?」
「いつもと同じだよ。かみ・・由香里。私、ちょっとトイレ行ってくるね」

トイレの鏡にたたずむ千鶴。
「もう焦った。でも、なんとかばれてないみたい。」
そう、彼女は千鶴ではない。
彼女は、死んだはずの森上みゆきだった。
森上は、千鶴の体に乗り移った。
千鶴の魂を追い出して。
森上は千鶴の体を奪ってまんまと彼女に成り代わったのだった。
「確かに、可愛いよね。」
千鶴になった森上は、鏡に向かって微笑む。
「私よりも全然可愛いし。こんな表情、私にはできないもの。でも、今日から私のもの。 この顔も、この体も、そして一志君も・・・」
鏡には、いや他の誰からも彼女は千鶴しか見えない。
癖もなく細く肩までかかるさらさらの黒髪。
小さな顔に大きなパッチリとした大きな目。
可愛いと形容するには十分なくらいの容姿。
「よろしくね。新しい私」










あとがき

これは去年、匿名でTSchに勝手に書き込んだものです。
あの時、感想をくれた人どうもありがとうございました。
とても、嬉しかったです。
私だと、ばれていたみたいですが^^;
なんでわかるの!!
えっ名前、入れちゃった?
とかいろいろ考えて、あの時はパソコンの前で呆然としてしまいました。
今考えると、やっぱり下手な終わり方だから直ぐにばれてしまうのですね。
これを載せるか、悩みましたけど、やっぱ最後ですし、いいかなと思い載せました。
短いですし、面白くないですが・・・・
私って死を使ってダークに無理やりしてしまいますね^^;
だって好きなんだもん^^)

最後までありがとうございました。
今までありがとうございました。