「私のひみつ」
とある街にとある女の子が住んでいました。
彼女の名前は「町田あかり」
ごく普通の女の子は
ごく普通に育ち
ごく普通の中学生でした。
ただ一つ違っていたのは、
彼女の特技は変装だったのです。
私が初めて他人になりすましたのは、私が小学校の6年の時でした。
4つ上のお姉ちゃんに掛かってきた電話を私が出たときです。
「はい、町田です。」
「小池ですけど・・・えーと、夏美さん?」
男の子の声でした。
でも、お姉ちゃんは何処にいるのか分かりませんでした。
お姉ちゃんならちょっと今いません。
そう言えばいいのを。
「はい。夏美ですけど」
ちょっとした遊び心でお姉ちゃんとして電話に出ました。
私とお姉ちゃんの声はよく似ていました。
だから、自身がありました。
それでも、彼が違うと気づいてしまうかもしれない。
そう思うと、期待と不安で胸が詰まる思いでした。
「僕、高山だけど・・・」
でも、電話の向こうの男の子は私を疑わなかった。
私をお姉ちゃんだと思ってる。
その時、私は言葉で表せないほどの喜びを感じました。
他人になりすます。
私が違う人に・・・・・
その時、私の中で何かが壊され何かが生まれたような、そんな瞬間でした。
「あっ高山君。どうしたの?」
:
:
電話での出来事から、私は他人になりすましてみたいという欲望が日に日に強くなって行きました。
でも、私が出来ることといえば、電話にお姉ちゃんになりすまして出ることしか出来ません。
あのとき以来、それさえも機会は巡ってきませんでした。
そんなある日のことです。
私は、同じクラスの「天野美貴(あまのみき)」ちゃんの家に遊びに行っていました。
美貴ちゃんの部屋で二人して遊んでいました。
「美貴、ジュースもって来たわよ。手がふさがっているから、ドアを開けて」
「はーい。」
美貴ちゃんのおばさんがジュースとお菓子を持ってきてくれました。
「あっどうもありがとうございます。」
「いいのよ。これからも、美貴と仲良くしてあげてね。」
「美貴、重たいわよ。持てる?」
「だいじょうぶ。」
そういいながら、美貴ちゃんはおばさんが持ってきたトレイを受けとりました。
でも、受け取ったみきちゃんはバランスを崩してしまって運悪く巻き添えになった私はオレンジジュースが頭からかぶってしまいました。
「あかり、ごめん。」
「あーもう、美貴、もう何をやってるの。
ごめんなさいね、あかりちゃん。
あかりちゃん、風邪ひいてもいけないし
髪もジュースでベトベトしちゃうから
お風呂に入って。」
私は、初めて人の家のお風呂場に入りました。
いつも使っている物とは違うシャンプーに戸惑っていつもと違う、シャワーの出し方に戸惑いながら。
なんだか、違う家の子になったようなそんな気分を楽しんでいました。
私は、美貴ちゃんになったような。
ちょっと、声を変えて美貴ちゃん風に。
「私は、天野美貴です。」
あ、似てるかも。
その時、おばさんが
「あかりちゃん、お洋服汚れちゃったから悪いけど美貴の服着てくれない?
美貴とあかりちゃん背格好が同じくらいだから、着られると思うのだけど・・・・」
いきなりのおばさんの声で背筋がビクッと感じ、驚くと共にそれ以上に私がやっていたことが聞こえちゃったんじゃないのかと不安にかられて。
・・・・・でも、私が美貴ちゃんの服を着られる。
「あっはい。わかりました。」
「じゃ、ここに置いとくわね。」
本当に、胸が高鳴っていました。
こんなに興奮するのは、あのとき以来です。
私に用意された服は、白に水玉の柄のシースルー付きのキャミに、大きめなプリーツが可愛いクリーム色のミニスカート。
よく美貴ちゃんが着ている服で、私も見覚えがあります。
鏡に映る私。
美貴ちゃんの服を着ている私。
本当に、美貴ちゃんになったみたい。
美貴ちゃんの服を着て、こうして美貴ちゃんの家にいる。
いつもと違うシャンプーを使ったからかな。
どこか、私から美貴ちゃんの匂いがした。
「あっごめんね、あかりちゃん。」
私が脱衣所から出てきてリビングに行くと私に気づいた美貴ちゃんは謝ってきた。
「うん、へいきだよ。」
私は、美貴ちゃんに笑いながら言った。
だって、こうして美貴ちゃんの服着れたしね。
感謝したいのはこっちかな。
「本当に、ごめんなさいね。
お洋服はクリーニングに出して、後で美貴に届けさせるから。
それと、これお母さんに渡してくれないかしら。」
お詫びのつもりだろうか。
おばさんから、紙袋を渡された。
なんだか、悪いような気がする。
「わかりました。」
「それにしても、なんだか双子みたいね。
あかりちゃんが美貴の服を着ているかしら。」
「えっそうですか?」
なんだか、嬉しい。
「あっそうだわ。ちょっと、美貴ちゃんこっちに来て。」
「えっ?はい。」
おばさんは、そう言うなり私を椅子に座らて私の髪を美貴ちゃんのようにセットしていきました。
「はい、できあがり。」
手鏡を渡され映る私。
髪型を変えただけで人はこんなに変わるのでしょうか?
「うん。なんだか、おばさん双子の娘を持ったみたい。」
でも、やっぱり今の私はただ美貴ちゃんの服を着てただ美貴ちゃんの髪型を真似しているだけ。
美貴ちゃんになったわけではない。
あの時のように、私はなりすましているわけじゃない。
私は、他人になりすましてみたい。
その人が着ている服を私が着て、その人として、私は他人を騙したい。
これでは、ダメなんだ。
それでは、ただ似ているだけで私は美貴ちゃんになりすますことが出来ない。
私は、美貴ちゃんになってみたい。
私は美貴ちゃんとして、すごしたい。
目の前にいるおばさんを騙してみたい。
おばさんが私を娘だと思わしたい。
今度は、この家に遊びに来た友達ではなく、この家の子として天野美貴としてなりすましたい。
そう強く感じた。
「結局は、顔なんだよね。」
あれからどうすればいいのか頭を悩ましている。
声もそうだけど、やっぱり顔を変えないと・・・・
お母さんが使っているようなお化粧道具じゃぜんぜん無理だし。
やっぱり自分で作るしかないよね。
映画やテレビに出てくるようなマスク。
でも、どうすればいいの?
あれから、三年が経ちました。
私は、もう中学二年です。
部活は演劇部。
どうして演劇部に入ったのか?
それは、もちろん他人に変装するための演技作りのため。
今でも私の欲望、野望は変わってはいません。
そう今でも。
「あかり、いるの?」
いつものように美貴ちゃんは私を迎えに部室に来た。
演劇部の部室。
と言っても私以外の部員はいないので私が好きに使っている。
私の一番の友達の美貴ちゃんは美術部に入った。
美術部はあまり活動してないためか、早く終わる。
だからいつも美貴ちゃんが私を迎えに来てくれる。
いつもだったら、このまま美貴ちゃんと帰るのだけど今日は違う。
帰るのは、私。
いや、美貴ちゃんになる?
「あかり、いないの?」
隠れていた私は、ハンカチを背後から美貴ちゃんの顔を塞いだ。
すると、前に倒れるように崩れ落ちてしまう。
そう、ついに実行する時が来た。
今日、私の両親が二人とも揃っていない。
お姉ちゃんは、東京の大学に進学したため今年から家にいない。
まず、うつぶせの状態から、仰向けに美貴ちゃんを向ける。
きれいな顔立ちの美貴ちゃん。
白いブラウスから胸の赤いリボンを取ってブラウスを脱がす。
胸を包んでいる白いブラジャーが目に入る。
スカートのフックを外して脱がしていく。
下着姿の美貴ちゃん。
おばさんが洗濯をするときに違うものだと怪しまれるかもしれない。
だから悪いなと思いつつ美貴ちゃんの身に着けているブラも、ショーツも脱がしていく。
まだ温かさが残るショーツを身に着ける。
そしてついさっきまで、私よりも少し大きな胸を包んでいたブラを私が身に付ける。
美貴ちゃんの匂いがするブラウスを羽織って、スカートを履く。
でも、これだったらさっきまでの私と変わらない。
たとえ下着が、美貴ちゃんのものだとしても誰もこの制服が私のじゃないなんてわかる筈がない。
ここまでなら、小学生だった私と何一つ変わらない。
私は、私のカバンからあるものを取り出した。
目と口の部分だけが開いてある人型のマスク。
これだけのマスクの作る方法を見つけるまであれからこんなにもかかった。
マスクをかぶって少し長めのウィッグを被る。
壁にかかる鏡に映っているのは、私ではなかった。
笑う私でも、鏡に映るって笑っているのは美貴ちゃんだった。
美貴ちゃんに私が着ていたものを身に着けさせ、机の影に隠れさせる。
私は、一つやっていなかった事に気が付いた。
上履きを脱いでそして、靴下を脱ぐ。
そして、美貴ちゃんが履いていた靴下を美貴ちゃんに変装した私が身に付け美貴ちゃんの上履きを履く。
これで、美貴ちゃんが身に着けていた全ての物を私が今、身に着けている。
私は本物の美貴ちゃんと何一つ変わらない。
小学校のとき美貴ちゃんの服を着た時と同じで私から美貴ちゃんの匂いがした。
でも、もうあの時とは違う。
何処から見ても私は、天野美貴。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
何も知らないで寝ている美貴ちゃんにごめんねと言いながら美貴ちゃんのカバンを持って部室を後にした。
廊下で人とすれ違う。
だれも、私の顔を見てもこれがマスクだとは気が付かない。
「コツ コツ コツ」
後ろから走る足音が次第に大きくなっていく。
「天野先輩!」
えっ美貴ちゃん?
そっか、私が今は美貴ちゃんなんだ。
走ってきた、女の子は私の前に立つ。
どこかで見たような。
たぶん美術部の後輩だろう。
「どうしたの?」
私は、普段から演習していたちょっと高めの美貴ちゃん風の声で答える。
彼女は、全く私を疑はなかった。
私を美貴ちゃんと思って話をし続ける。
「ふふ」
「えっどうしたんですか?」
「うん、なんでもない。それで?」
どうやらコンクールの絵の提出の日を聞きに来たらしい。
「ごめん。先生に聞いとくから。」
「分かりました。先輩さようなら。」
「うん、じゃあね。」
全く気が付かない。
これなら、だいじょうぶよね。
私は、美貴の履いてきたスニーカーを履いて学校をでた。
美貴ちゃんの家に近づくにつれ心臓の音が速くなっていく。
やっぱり、おばさんは気づいてしまうかも。
私よりも毎日見ているおばさんなら。
どうしよう。
でも、もうここまできたんだし。
そんなことを考えていたら、もう美貴ちゃんの家の前まできていた。
普段なら、インターホンを押すのだけど初めて押さずに家のドアを開ける。
「た、ただいま。」
靴を、脱いで勝手にリビングへと入っていく。
「あら、おかえり。今日は遅かったね。」
「うん、ちょっと。」
「そう、もうご飯だから着替えて来なさい。」
「・・・・はい。」
「美貴、ちょっと。」
ば、ばれた?
もうダメだ!
「美貴だいじょうぶ、ちょっと顔色おかしいわよ。」
「えっ、うんだいじょうぶだよ。」
「そう。」
逃げるように二階の美貴ちゃんの部屋へと駆け上がる。
「はぁ。」
と大きくため息をつく。
でも、おばさんは気が付かなかった。
「ふふ。」
やっと小学校から夢がかなった。
ゆっくりと美貴ちゃんの部屋を見渡す。
何度も来ている部屋。
何の新鮮味もないけど、こうして見るとまた違って見える。
何度も着ている部屋だけど、机の中を見たこともないし、クローゼットだって見たことはない。
でも、今日は見ることが出来る。
それも、堂々と。
だって私は天野美貴だもん。
この部屋は私の部屋。
この家は私の家。
クローゼットを開けて、美貴ちゃんの服に着替える。
黄色いキャミにデニムの短パン。
鏡で自分を映す。
うん、だいじょうぶだよね。
「美貴。まだ?」
おばさんの呼ぶ声。
「はーい。今、行くよ。」
明日には、ちゃんと返すから。
今日は美貴ちゃん。
私に美貴ちゃんの姿と、美貴ちゃんの家族を私に貸してね。
おわり
あとがき
下手な文章で、それにつまらないストーリーですみません。
変装ものは初めて書くので許してください。