君の住む町に新しいファミリーレストランが出来たなら、行ってみるがいい。
そこに入ると、君好みの女の子が出迎えてくれるだろう。
「おタバコはお吸いですか?TSはいかがなさいます?」
このとき君が、迷わずに「TSお願いします。」と答えれば、君は新しい世界への扉を開くことになるだろう。
2度とは戻れない世界への・・・
「いらっしゃいませ。ファミリー・レストラン“Terry’S”へようこそ」
世界TSメニュー紀行
プロローグ ある日旅立ち?
「マア、赤字じゃないけど、思わしくないわね。今月の売り上げも・・・」
店長の渡瀬輝美は、今月の帳簿を見ながらつぶやいた。Terry’S夫婦櫃店は、小学校から大学まである進行学園都市の駅前にあり、近くに住宅地までのバスも出ているので、結構人通りはあるのだが、この店のメインになっているTSをしようという客が少ないのが、問題だった。若い男をTSさせ、回りにはべらすことを、夢見ている彼女にとっては由々しき問題だった。
「なんだ、結構売り上げあがっているじゃないか。けっこうけっこう。ん?TS部門の伸びがいまいちか。それで、お嬢様は、ご機嫌斜めなんだな。」
いつのまに、彼女の後ろに立ったのか、トレーナーの板田喜一郎が、机の上に広げられた帳簿を覗き込んでいた。
「な、何よ。あなたいつのまにわたしの後ろに立っているの。離れなさいよ。わたしのそばから。それに、お嬢様なんて呼ぶな!」
「ふ、慌てふためく君もかわいいな。」
輝美の耳のそばで、喜一郎がささやいた。
「なにをするのよ。」
「おっとあぶない。君にはたかれると、ヘヤーが乱れるからな。失敬。」
猫のように敏捷に、輝美の攻撃をかわすと、喜一郎は、店長室を出て行きかけて立ち止まった。そして、振り返ると、輝美に微笑みかけた。
「それじゃあ、しばしの別れ。アデュ~。マイ、リトル・レディ。」
「二度と来るな~~!」
輝美は、デスクの上にあったミルクのはいったカップを、部屋から出掛かっていた喜一郎に投げつけた。だが、絶妙のタイミングで、彼はドアを閉めた。そして、恐ろしいほどの偶然にも、カップが、ドアに当たる寸前に、再びドアが開いた。
「おっとあぶねえなぁ。お嬢ちゃん。カップってえもんは、持つもので、中のミルクは飲むものだぜ。ち、少し、ミルクがかかっちまった。」
ドアから顔を出した人物は、見事にカップの中身をこぼさずにつかむと、輝美にそういった。そのがっしりとした体格の苦みばしった熟年男性は、この夫婦櫃店の料理長の替刃六三郎だった。和の仙人と評されるほどの腕を持つ彼だが、料理界のタブーとされたTS料理に見入られ、禁断のTS懐石料理「性換石」を作り、日本料理界を追放になったのだった。和食が、専門だが、世界中の料理に精通し、TS料理にも詳しい彼を、Terry‘Sチェーンのオーナーが、店に出す料理の監修責任者として、招いていたのだが、なぜか、彼に気に入られていた輝美が、この店の店長になることが決まったとき、彼自ら、この店の料理長になることを望み、監修責任者を続けるのを条件に、ここの料理長になったのだった。
「あ、替刃コック長。すみません。気づきませんで・・・」
「また、喜一のやつに、おちょくられたのかい。あいつは、普段は、固いのに、おまえさんの前では、まるでいたずら小僧だな。」
替刃は、おかしそうに声を上げて笑った。
「そんな言い方やめてくださいよ。まったく、頭に来る奴ですわ。ところで、コック長。何か、不都合でも?」
「いや、なにね。こいつを受け取ってもらおうと思ってね。」
そういうと、替刃は、白いコック服の内ポケットから、一通の封筒を取り出した。その封筒の表には「辞表」と墨で、黒々と書かれていた。
「辞表?コック長、何かご不満でも、すぐに改善しますから、おっしゃってください。今、コック長に去られると、わたしは・・いえ、この店は・・・」
「いや、不満が在る訳じゃねえんだ。あるとすれば、この俺にだよ。ここのところ、TS料理部門の不調は、俺のせいだ。だからだよ。」
「そんなことはありません。それよりも、いま、コック長に辞められると、わたしは、わたしは・・・」
いつもは、気丈な輝美だが、涙があふれてきて、止まらなくなってきた。
「それは、大丈夫だ。ここの料理スタッフは、しっかりしてきたし、芳信の野郎も、腕を上げてきたからな。それに、これは、誰にも言わないつもりだったが、やはり、お嬢ちゃんにだけは言っておくのが筋だろう。どうも、最近、俺は、TS料理の第一人者だの。和のTS料理の仙人だのと言われて、初心を忘れ、安易な料理を作りすぎている。ここで、初心に帰る意味もあって、世界のTS料理を見て見ようと思ってな。旅に出ようと思ったんだ。だから、無職となって気軽な身体になろうと思ったのだが、どんなものだろう。」
「わかりました。コック長を失うのは、大損失ですが、世界のTS料理をメニューに加えられるのは、大きな魅力です。ですからこれはこうします。」
そういうと、輝美は、替刃が出した辞表を、細かくちぎると、ゴミ箱の中に放り込んだ。そして、デスクから便箋と封筒、ペンを取り出すと、便箋になにやら書き出した。書き終えると、それを、綺麗にたたんで封筒の中に入れて、替刃に差し出した。
「辞令です。コック長に、新しいTS料理の開発を命じます。そのための市場調査として、海外出張を命じます。必ず帰ってきてくださいね。」
「あたりめえだ。俺のうちはここだ。お嬢ちゃんが、首だといっても、皿洗いのバイトでもなって、もどってやるさ。」
「おじさま、お体に気をつけて・・・」
いつになく神妙に、涙ぐんでうるんだ瞳で、輝美は、替刃を見つめた。
「おっと、門出に、涙は禁物だぜ。不肖、この替刃。この辞令をありがたくいただき、市場調査の旅にでます。お嬢ちゃんも元気でな。」
「おじさま、必ず連絡はくださいね。」
「わかってるよ。」
「ところで、最初は、どこに行かれるのですか?」
「中国だ。呪泉境の近くに、呪泉境の水で育てた野菜で作った呪的料理を食べさせる店があるらしいから、まずはそこだな。それじゃあ、達者でな。」
こうして、替刃は、いつ終わるともわからないTS料理発掘の旅に旅立ったのであった。
つづくかなぁ?
あとがき
誰か続き書きませんか?また、自分で墓穴掘ったような気がしてきたのですが、つづくかなぁ?