ちょっと蒸し暑い…いや、かなり蒸し暑い教室の中。
先生はハンカチで額の汗を拭きながら講義を続けている。
けだるい雰囲気が教室内を包み込む中、陽介は机に向かって真剣な表情をつくり、 何やら一生懸命、考え事をしているようだった。
たまに頭を掻きながらノートに何かを書いている彼は非常に不可解な行動といえる。
普段は机に伏せて当たり前のように寝ている彼が何故こんなに真剣に授業を聞いているのか?
いや、授業を聞いているかどうかは分からないが、とにかく普段の彼とは全然違う。

そう思いながら彼を見ていたのは、友人の伍郎(ごろう)だった。
 

伍郎:「ノートに何か書いてるよ…あいつ、一体どうしたんだろ。とうとうこの暑さでイカれちまったか…」
 
 
 
 
 
 

10分間
 
 
 
 
 

彼のただ事とは思えないその行動に、動揺を隠せない伍郎。
授業が終わると早速陽介に歩み寄り、何をしていたのかを尋ねてみる。
 

伍郎:「なあ、どうしたんだよ。珍しいじゃん。授業中に起きてるなんてさ。それに何か書き物してたみたいだし。 何かあったのか?」

陽介:「伍郎か…あのさ。俺、た…たまんないんだ」
 

陽介は伍郎に視線を合わすと、今にも感情が爆発しそうな表情で答えた。
うっすらと額に汗をかいている陽介を見て、首をかしげる伍郎。
 

伍郎:「な、何がたまんないんだよ」

陽介:「ふぅ…はぁ…。お、お前さ。もし10分間…」

伍郎:「10分間?」
 

やたらに息が荒い。
何を興奮しているのだろうか?
 

陽介:「10分間……はぁ、はぁ…ああ、ダメだ。ココでは話せない。ちょっと来いよっ」

伍郎:「な、何だよ一体っ!」
 

陽介は強引に伍郎の腕を掴み、急いで教室から出ると人気の少ない廊下に連れ出した。
 

伍郎:「イッテェ〜。何だよ急に」
 

伍郎が掴まれていた腕を擦りながら話し掛ける。
腕の皮膚が赤くなっている。それほど力強く握っていたのだ。
 

陽介:「はぁ、はぁ…わりぃわりぃ。もう考えただけでたまんないんだよっ」

伍郎:「だから何がっ!」
 

伍郎はちょっと腹を立てながらキツイ口調で話した。
そんな伍郎に全く動じない陽介。制服のポケットから、そっと小さな小瓶を取り出すと陽介の目の前にちらつかせた。
 

陽介:「これさ、これっ」
 

嬉しそうに笑っている陽介。
 

伍郎:「…な、何だよ。それっ」

陽介:「なあ。もしさ、もしだぜっ。他人に10分間乗り移れるとしたらどうする?」

伍郎:「はぁ?」

陽介:「単刀直入に言うとさ。好きな女の子の身体を10分間自由に使えるとしたらどうするって言ってるんだ」

伍郎:「……な、何言ってんだよ、お前」

陽介:「これ、知り合いの人からもらったんだ。サンプルだから10分間しか無理みたいなんだけどさ。 この薬を飲むと幽体離脱出来るらしいんだよ」

伍郎:「幽体離脱?」

陽介:「要は身体から幽体…魂だけを抜き出す事が出来るって事さ」

伍郎:「…」

陽介:「幽体になったらな。幽体になったら……はぁ、はぁ…他人の身体に入り込む事が出来るんだって。ううっ!すげぇよこれっ」
 

拳を握って存分に嬉しさを表現している。
1人嬉しそうな陽介。そんな陽介の話を半信半疑で聞いている伍郎。
 

伍郎:「騙されてるんじゃねぇの、それ」

陽介:「んな訳ねえよ。信頼できる人なんだからさ」

伍郎:「じゃあその信頼できるって人が騙されてるんだ」

陽介:「……あ〜あ、せっかくお前にも美味しい事させてやろうと思ったのに。1人で楽しむことにするか」

伍郎:「な、何だよそれ」

陽介:「信じないんだろ。信じない奴には何もはなす事は無いって」
 

そう言うと陽介は生徒手帳を取り出し、間に挟んでいた1枚の写真を伍郎に見せた。
 

伍郎:「隣のクラスの内村じゃん。それがどうしたんだよ」

陽介:「内村って可愛いよな。髪も長くてほっそりした感じでさ」

伍郎:「まあな。真面目すぎる性格はちょっと敬遠するけどさ」

陽介:「そうそう。でもな、そんな真面目な彼女が崩れたところ、見てみたいと思わないか?」

伍郎:「崩れたところって。あの真面目な内村に酒でも飲まそうってのかよ」

陽介:「そうじゃないって。俺が内村に乗り移ってそう演じさせるのさ」

伍郎:「……」

陽介:「言っただろ。俺はこの薬で10分間他人に乗り移れるって。これを使って彼女に乗り移るんだ。で、普段見れない内村の姿を…ううっ!たまんねぇっ!」
 

写真を持つ洋介の手が震えている。
身体の底から喜んでいるって感じ。
 

伍郎:「お前、本気でそんな事言ってるのか?」

陽介:「当たり前じゃん。こんな話、誰が冗談で言うかよ」

伍郎:「めでたい奴だな」

陽介:「まだ疑うのか」

伍郎:「誰が信じる?」

陽介:「…ま、まあいいか。お前がそれほど疑い深い奴だとは知らなかったよ」

伍郎:「そう言うな。じゃあ逆に教えてくれよ。俺はどうやって信じればいい?」

陽介:「俺について来ればいいんだ。お前だって内村が1人でオナ……い、いや。変な事してる姿、見たいだろ」

伍郎:「……」

陽介:「10分間しか乗り移れないんだ。この10分間の間に何をするかが問題なんだよ」

伍郎:「お前、もしかしてさっきの授業で考えてたのって…」

陽介:「決まってるだろ。内村に乗り移ったあとのスケジュールをずっと考えてたんだよ」

伍郎:「はぁ〜…」
 

伍郎は深いため息をつきながら陽介を眺めた。
そんな陽介のため息にちょっとムカついた陽介は、持っていた写真と小瓶を制服にしまいこむと、
 

陽介:「もういいって。お前に話すのが間違いだった。俺だけで楽しむから今の話は忘れてくれッ!」
 

と言い残し、教室に戻ってしまったのだ。
 

伍郎:「何だよあいつ。勝手に話して怒ったりして……でも、あいつの話が本当なら…」
 

あまり信じる気は無いのだが、ああやって自身ありげに力説されると少しは信じたくもなる。
それにもし本当なら、あの真面目な内村の知らない素顔を見ることが出来るのだ。

ちょっと考えたあと教室へ戻り、陽介がいる机まで歩いて行った伍郎。
陽介はノートに何やら表のようなものを書いている。
 

伍郎:「なあ陽介。さっきの話なんだけどさ」

陽介:「お前には関係ないさ。俺が1人で楽しむから」

伍郎:「んなこと言うなよ。ちょっと信じてみようって気になったのにさ」

陽介:「別に無理する事は無いって」
 

陽介は伍郎の顔を見ようともせず、ひたすらノートにスケジュールのようなものを書き込んでいる。
伍郎は無言でそのスケジュールを眺めた…
 

1.幽体離脱後、体操服姿で体育館へ向かう内村へ乗り移る…1分
2・走って物理室へ移動…1分
3.物理室にある鏡の前で内村の身体を探索…3分
4.あらかじめセットしておいたビデオカメラの前で撮影しながら内村の身体を楽しむ…3分
5.バレないように内村の身体を廊下に移動させる…1分
6.内村の身体から抜け出す…1分
合計:10分
 

伍郎:「……お前、マジでこんな計画立ててるのかよ」

陽介:「当たり前じゃん。1人でビデオカメラ撮ったりするの大変なんだよ。だから誰かにこの計画を手伝ってもらおうかと思ってさ。お前に頼んだけど信じないし」
 

そういいながら、やっと伍郎の顔を見た陽介。
 

伍郎:「…し、信じるよ。お前がそこまで考えてるんだったら。お前、もう二度と無いかもしれないくらい真剣に考えてるし」

陽介:「そんな言い方はやめろ。俺がすごくバカに聞こえるから」

伍郎:「……ま、まあそれはさておきさ。マジで実行するのか?」

陽介:「ああ、今日実行するっ。内村が体育館へバレーボールしに行く前に乗り移る!そのままダッシュで近くにある物理室に行くのさ。
         
あの部屋は授業にしか使わないし、何たって大きな鏡があるからな」

伍郎:「鏡か、なるほどな。鏡がないと自分では見れないからな」

陽介:「当たり前じゃん。やっぱり内村の姿、俺だってみたいしさ」

伍郎:「ビデオカメラで撮った影像を待てないってか」

陽介:「お前が撮ってくれるならともかくさ、俺1人だけだとまともに撮れるか分からなかったし」

伍郎:「任せとけよ。俺がちゃんと撮ってやるよ。内村になったお前をさ」

陽介:「じゃ、任せていいんだな」

伍郎:「男に二言は無いって」

陽介:「よし、決まりだ!お前は授業が終わったらこのビデオカメラをもって物理室に先に行っててくれ。 あ、そうか。俺も一緒に行かなくちゃいけないな。物理室で薬を飲むから」
 

そう言いながら陽介は、とりあえずカバンから最新型の小さなビデオカメラを取り出した。
こんなもの学校に持って来ていたら絶対に取り上げられてしまいそうだが、バレなきゃ大丈夫か…
 

陽介:「とにかく預けておくぜ。使い方は分かるだろ」

伍郎:「バカにするなよ。テープは入ってんだろ」

陽介:「当たり前じゃん。テープが無かったら意味無いだろ」

伍郎:「だな。しかしお前、『当たり前じゃん』が癖だな」

陽介:「当たり前じゃん」

伍郎:「…ま、いいか。預かるよ。放課後が楽しみだな」

陽介:「上手く撮ってくれよ。お前のカメラさばきで、後々楽しめるか楽しめないかが決まってくるんだからな」

伍郎:「分かってるって!」

陽介:「おっ!そろそろ授業が始まるぞ。早くそれを隠せよっ」

伍郎:「あ、ああ」
 

伍郎は自分の席につくと、ビデオカメラをカバンに詰め込んだ。
始めは全然信じなかった伍郎も、ここまで来るとやたら乗り気になっている。
早く放課後が来ないかとドキドキしながら授業を受ける伍郎。

しかし、授業中に散々考えたスケジュールがたったあれだけだとは…
伍郎は改めて陽介の頭の悪さを実感した。
 
 
 
 

そして…
 
 
 
 
 

構内にチャイムが鳴り響き、最後の授業が終わる。
『待ってました!』とばかりに伍郎が席を立つと、陽介の元へと歩み寄った。
 

伍郎:「いよいよだな!」
 

伍郎が息を弾ませながら陽介に話し掛ける。
 

陽介:「ああ。早く行こうぜっ!」

伍郎:「ああっ!!」
 

二人は急いで教科書をカバンに詰め込むと、誰よりも先に教室を後にした。
そして体育館の隣にある校舎、その2階にある物理室へと急いだのだった。
 

陽介:「はぁ、はぁ…誰もいないな」
 

少し息を切らせた陽介が物理室の中をキョロキョロと見回して確認する。
 

伍郎:「いないな。さて、どうセッティングするんだ?」
 

伍郎がカバンからビデオカメラを取り出すと、電源を入れて液晶画面を眺めた。
バッテリーをチェックしたあと、ズームさせて陽介の顔を映す。
 

陽介:「セッティングは特になし。あの鏡の横で待っててくれ。そして俺が入ってきた瞬間からずっと撮影するんだ」

伍郎:「お前というか、内村だな」

陽介:「そうそう、彼女さ。内村 麻美子」

伍郎:「でもさ、彼女、今日学校に来てるのか?」

陽介:「当たり前じゃん。そんなことチェック済みだよ。で、あと5分くらいしたらこの1階の廊下を通って体育館に歩いて行くのもチェック済み。なんせ3日間、ずっと調べてたんだからさ」

伍郎:「それはご苦労なことで」

陽介:「多分友達と二人でいるはず。内村に乗り移ったあと友達をごまかすのは、ちょっと苦労するかもしれないけど」

伍郎:「そんなの無視して走ってくればいいじゃないか」

陽介:「まあそうだな。そうするか」

伍郎:「ところでさ。10分ってのは正確な時間なのか?」

陽介:「ほとんど正確らしいけどさ。もしかしたら少し早く切れちまうかもしれないな」

伍郎:「そうか。カメラで撮ってるときに気が付かれたら厄介だぜ」

陽介:「そうなんだ。だからちょっとだけスケジュールを前倒しにしたほうがいいかもしれないな」

伍郎:「ああ」

陽介:「なんせ、幽体になった瞬間から10分間だからな。結構厳しい」

伍郎:「ほとんど楽しめないか」

陽介:「それがまた面白いんだよ。彼女の身体、どこまで楽しめるか…うしししっ」
 
 

そんな話をしているうちに、結構いい時間になってしまったようだ…
 
 

陽介:「あ、そろそろだ。薬を飲むよ。おっと、そうだそうだ。このストップウォッチを」

伍郎:「ああ。一応計っておくか」
 

陽介は制服のポケットから小瓶を取り出すと、うれしそうに口にあてて一気に飲み干した。
伍郎は受け取ったストップウォッチを片手に持って、陽介の様子を伺っている。
 

陽介:「結構甘いな」

伍郎:「そうか。で、どんな感じだ?」

陽介:「う〜ん。だんだん眠たくなってきた。わっ、ね、眠た…」
 

陽介は話の途中で気絶したかのように、その場に倒れこんでしまった。
 

伍郎:「お、おいっ。陽介っ!」
 

いきなり気を失った陽介を抱きかかえた伍郎。
息をしていて寝ているようだが、まるで精気が感じられない。
 

伍郎:「陽介っ…こ、これってもう幽体離脱したってことか…」
 

何となくそう思った伍郎は、陽介をそのまま床に寝かせたあとストップウォッチをスタートさせ、ビデオカメラを手に撮った。
そして鏡の近くに移動すると、机の上にストップウォッチを置いてドキドキしながら陽介…いや、
内村麻美子が登場するのを待っていたのだった。
 

伍郎:「ほんとに内村が現れるのか?まあいいや、ちょっとだけ部屋の雰囲気を撮っておこう」
 

そう思った伍郎が、立ったままぐるりと物理室の中を撮影する。
これと言った物が置いているわけでもなく、黒板に机。そして何故か大きな鏡が…
窓から日の光が入り込んで、その場所が特に暑く感じる。
そんな室内を撮っていると、ガラガラッ!と激しくドアをあける音が響いた。
 

伍郎:「わっ!」
 

驚いた伍郎はビデオカメラを落としそうになる。
しっかりと持ち直しながらドアのほうに振り向くと、そこにははぁはぁと肩を弾ませる内村麻美子の姿があったのだ。
 

麻美子:「はぁ、はぁ、はぁ」

伍郎:「あっ…」
 

長い髪を後ろに束ね、白い体操服に赤いブルマ。両肘、両膝には白いサポーターをしている。
そして白い靴下に白いスニーカー。
彼女は伍郎と目を合わせると、急いで鏡の前に駆け寄った。
 

伍郎:「…う、内村…」
 

あまりの出来事に驚く伍郎。
そんな伍郎に内村 奈美子が声をかけた。
 

奈美子:「ちゃんと撮っておいてくれよ」

伍郎:「えっ、あ…ああ…」
 

奈美子のちょっときつい表情が伍郎をまたしても驚かせる。

こんな表情、見たことない…

そう思いながらも急いで鏡の前にいる奈美子を撮影する。
 

彼女は鏡に映った『はぁはぁ』と肩で息をする自分の姿をじっと眺めたあと、とてもうれしそうな表情を見せた。
 

奈美子:「す、すげぇ…」
 

そう呟いた彼女は、その白くて細い両手使って顔を撫でたあと、自分で自分の身体をギュッと抱きしめたのだった。
 

奈美子:「うわぁ〜、すげぇ柔らかけぇよ…」
 

もうたまらないと言った表情で鏡を見つめる奈美子。
その姿を液晶画面を通してじっと見つめる伍郎。
彼のビデオカメラを持つ手がふるふると震えている。目の前で内村奈美子が、本来取るべき行動ではない
行動を、当たり前のように取っているからだ。
 

普段の彼女…
 

それは他人を寄せ付けようとしない固い雰囲気と、非常に真面目な性格。
だからと言ってまったく人を寄せ付けないわけでもなく、ちゃんと友達もいるし
バレーボールという部活もしている。
ただ…男子との付き合いがまるでなかった。
もしかして男なんて「不潔な生き物」とでも思っているのかもしれない。
でも、そうかと言ってレズには見えない。

とにかく、男子生徒から見れば「寄り付きたくても寄り付けない」女子生徒なのだ。
かわいい顔してスタイルも結構よさそうなのに…
 

そんな彼女が、伍郎の目の前でニヤニヤしながら胸を揉み始める。
少し前かがみになりながら鏡に映る自分を覗き込み、食い入るようにして眺めている。
 

奈美子:「た、たまんねぇよ。この感触っ!これが女の胸なんだぁ…や、柔らけぇよ…柔らかすぎるぜ…」
 

下品とも思える言葉を連発する奈美子。
その言葉とうっとりとした表情が、普段の彼女とのギャップを嫌というほど見せ付けているのだった。
 

ほ、本当に陽介が内村に乗り移っているのか…
陽介が内村に乗り移ってこんなことをさせているのか…

目の前にいる内村奈美子は、どこから見ても当たり前のように内村奈美子だ。
でも、彼女の行動は偽りであって、本当は友人の陽介が自分の思うがままに内村奈美子の身体を動かしている…
 

こんな事があるのか??
 

伍郎:「お、おい…う、内村…」

奈美子:「ちょっと待ってろよ。今、何分経ったんだ?」

伍郎:「え、あ…ご、5分くらい…だけど…」
 

伍郎が液晶画面から視線を外し、ストップウォッチに移す。
 

奈美子:「ふぅっ…あと5分か。あまり時間がないな」
 

奈美子はそういうと、伍郎の方に身体を向け直した。
 

奈美子:「おい、しっかりと撮っておいてくれよ」

伍郎:「あ、ああ…」
 

伍郎が液晶画面を通して、こちらを向いた奈美子を撮影する。
それを確認した奈美子はうっすらと笑みを浮かべる。カメラの前で前かがみになり両手で体操服の襟元をぎゅっと引っ張ると、その中にある白いブラジャーに包まれた胸を惜しげもなく披露した。
 

奈美子:「んふっ。どう?私の胸。大きいでしょ」
 

ゴクンと唾を飲み込んだ伍郎。
ズームで薄暗い体操服の中を映し出す。
重力によって下に向かおうとする二つの胸が、しっかりとブラジャーで支えられている。
その胸の谷間が伍郎の理性をググッと緩めるのだ。
 

奈美子:「あ〜あ、奈美子、ほんとはこんなにいやらしかったんだよ。ねっ!」
 

巧みに女言葉を使いながら、ゆっくりと体操服を脱いでゆく。
身体の前でクロスされた両腕が首の下まで上がってくると、ブラジャーに包まれた彼女の胸がビデオカメラに収まる。
 

奈美子:「ちゃんと見たいんでしょ」
 

奈美子は体操服がズリ落ちないように顎で挟み込むと、両手でブラジャーを上に競り上げた。
彼女の形のよい弾力のある二つの胸が、プルンと揺れながら現れる。
 

伍郎:「はぁ…はぁ…はぁ…」
 

あの男子生徒を寄せ付けようとしない内村奈美子が、伍郎の目の前で胸をさらけ出している…
さっきから伍郎の下半身は大きくなりっぱなしだ。

両手で胸を挟み込み、深い谷間を作る彼女。
吸い付きそうなその白い肌は、少しだけ汗ばんで見える。
 

奈美子:「ここはどうなっているのかなぁ?」
 

奈美子が左手でブラジャーと体操服を持ったまま、右手を赤いブルマの中へと滑り込ませた。
赤いブルマを盛り上げながら、彼女の右手がするすると中に入り込んでゆく。
 

奈美子:「うあっ…こ、これは…」
 

奈美子が眉をゆがめて吐息を漏らす。
ある程度までブルマの中に入り込んだ右手の動きが止まると、指の先だけを上下に動かし始める。
 

奈美子:「うっ…ああ…くっ…す、すげぇ…気持ち…いい…」
 

少し開いていた両足をギュッと閉める。
すると、両膝につけているプラスチックの白いサポーターがカチンと軽い音を立てた。

伍郎はブルマの股間あたりをズームで取り続ける。
もぞもぞと動いているブルマの生地が異様にいやらしく映っていた。
 

奈美子:「はぁっ…こんなに気持ちがいいなんて…し、知らなかったぜ…」
 

奈美子はいつのまにか男口調になって喘いでいる。
そんな彼女をじっと撮影している伍郎は何とも言えない不思議な雰囲気に飲み込まれていた。

彼女が一人エッチしている…

でもそのしゃべり方は友人の陽介なのだ。
どうも調子が狂うと感じながらストップウォッチを見てみると、もう8分経っている。
 

伍郎:「あ、もう8分経ってるぞっ!」

奈美子:「あうっ…も、もうそんな時間か…」
 

いつの間にか胸の突起を摘みながら、女性としての感触を楽しんでいた陽介は、残念そうに服装の乱れを整えた。
 

奈美子:「おいっ。お前に30秒だけいい事してやるよ」
 

そういって奈美子が伍郎に近づく。
 

伍郎:「えっ?」

奈美子:「ほら、内村の胸だ」

伍郎:「わっ…」
 

奈美子が伍郎の手を取り、体操服の中に導く。
伍郎の手のひらに、ブラジャー越しではあるが内村奈美子の柔らかい胸の感触が伝わる。
 

奈美子:「あと20秒…感触を覚えておけよ」
 

今度は伍郎のズボンのチャックを開けると、トランクスから大きくなったムスコを引っ張り出し、何のためらいもなく咥え込んだのだ。
 

伍郎:「ううっ!」
 

生暖かい感触がムスコを包み込む。
奈美子が激しく頭を動かすと、その口からチュパチュパといやらしい音が鳴り始めた。
 

奈美子:「んっ、んっ、んっ」

伍郎:「ううっ、うっ、うう…」
 

あまりの気持ちよさに我を忘れそうになる伍郎。
しかし、奈美子はすぐにムスコから口を話すと、
 

奈美子:「気持ちよかっただろ。もうやばそうだから内村の身体、廊下に出すぜ」
 

と言い、よだれを拭きながら廊下へと出て行ってしまったのだ。
 

伍郎:「あ、ちょ、ちょっと…」
 

中途半端に気持ちよくなった伍郎。
しかし、彼女が咥え込んでいた姿を上から眺めていた伍郎は、それを思い出しながら 一人で頑張ったのだった…
 
 
 
 

陽介:「う…う〜ん…」
 

奈美子が物理室を出てしばらくしたあと、陽介が意識を取り戻す。
 

伍郎:「あ、気がついたのか。陽介」

陽介:「あ、ああ。でも頭がクラクラする…」

伍郎:「ほんとに乗り移る事が出来たんだ。あの内村に」

陽介:「あ、当たり前じゃん。お前も気持ちよかっただろ」
 

陽介は頭を押さえながら身体を起こし、ゆっくりと立ち上がった。
伍郎は陽介の横で、今、撮ったばかりのテープを巻き戻している。
 

陽介:「うまく撮れたか?」

伍郎:「た、多分な。最後は撮れなかったけど」

陽介:「どれどれ」
 

巻き戻ったテープを再生し、内容を確かめる二人。
そこには普段とはまったく違う内村奈美子が映っていた。
 

陽介:「おおっ!ばっちりじゃんか」

伍郎:「ああ。でもさ」

陽介:「……そ、そうだよな」

伍郎:「もうちょっと彼女らしくしゃべってほしかったよな」

陽介:「あ、ああ。これ、俺そのものだもんな」
 

男口調で喘いでいる内村奈美子を見ながら、ちょっと残念そうな雰囲気を漂わせる二人。
 

陽介:「途中ではちゃんと意識してたんだけどなぁ」

伍郎:「まあな。仕方ないさ。でもそんなに気持ちがよかったのか?内村の身体って」

陽介:「ああ。もうたまんないぜ。男をやってて、めちゃくちゃ損してるって感じさ。 あれでもしアソコに入れたりなんかしたら…ああ、もっと時間がほしかったぜ〜っ!」
 

悔しそうな表情をしながら、男口調でしゃべりながら喘いでいる内村をみる。
音を消せばそれなりに見る事が出来るのだが…やっぱりイマイチだ。
 

陽介:「もうあの薬はくれないようなぁ。くれたら今度は絶対彼女になりすますのに」

伍郎:「まったくだよ」
 

二人は顔を見合わせ、苦笑するのであった。
ま、10分間でこれだけ出来れば十分か…
 
 

そのころ内村奈美子は廊下でキョロキョロしながら首をかしげていた。
 

奈美子:「あれ…私、どうしてこんなところに?」
 

不思議そうに1階へと降りていく彼女。
彼女の下半身は何故か微妙に火照っていた。

その理由を知る由も無い…
 
 
 
 
 
 

10分間…おわり
 
 

あとがき

「今度書きますよ!」
とジョニーさんにメールしたのはいつの事やら(^^;

ずいぶんと時間が経ってしまいましたが、ようやく書きあげることが出来ました。

この話は、私のサイトで掲載している「必殺の薬」という幽体離脱が出来る薬の試作品を、偶然手に入れた高校生が主人公となっています。
主人公の詳細は書きませんでしたが、登場人物は高校2年生。
伍郎と陽介はクラスメイトで、内村奈美子は隣のクラスにいる女子生徒です。
男子生徒の中で、容姿については評判の良い内村さん。
そんな彼女に乗り移り、普段には考えられないような行動を取らせようとした洋介。
基本的にはスケベェなことをさせたかったのですが、TSに興味が無かった二人にとって、女性が男言葉をしゃべる事には意味が無かったのでしょう。
私なら、もうよだれがダラダラ出ますけどね(書きながらドキドキしちゃいました!)。

10分と言う短い時間で、如何に楽しむ事ができるか?
難しいところですね。
やはり10分では大したこと出来ませんでした(^^
でも、それがまた良かったりなんかして(笑

軽いノリで読んでいただけたら光栄です。

それでは最後まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
Tira
でした。