TS子の部屋(てすこのへや)すぺしゃる
提供・よしおか
TS子「TS子の部屋の時間です。みなさま、こんにちは猫柳TS子(ねこやなぎ てすこ)です。今日は、‘TS子の部屋’放映続行を記念いたしまして、スペシャルゲストをお招きしています。というよりも、お招きに預かったというほうが正しいわね。今日のお客様は、世界的に有名な人形師の牧村由希さんです。どうも、はじめまして、まあ、お若くて、かわいい方ね。お肌なんかまるでお人形のようにすべすべ、いいわねぇ、若いって。」
由希「ありがとうございます。でもTS子さんもお若いですわ。」
TS子「まあ、そうかしら、妖怪ばばぁと、呼ばれていますのよ。」
由希「そんなことありませんわ。TS子さんは、わたしの憧れなんですもの。」
TS子「ちゃんと聞いときなさいよ。ディレクター。」
(遠くのほうで、「は〜〜い。」という返事が返ってくる。)
TS子「でも、立派なお屋敷ね。よろしかったのかしら、お招きに預かったりして。」
由希「ええ、こちらこそ、わたしのようなものを、記念番組にお呼びいただいてよろしかったのでしょうか。」
TS子「なにをおっしゃるの。あなたみたいな方に来ていただけて、光栄だわ。わたしも、一度お会いしたかったのよ。」
由希「マア、ありがとうございます。ところで、わたし、なにをお話したらよろしいのでしょうか。」
TS子「そうね。あなたのお仕事の人形師って、聞きなれないご職業だけど、簡単に言うとどういったものなのかしら。」
由希「はい、簡単に言いますと等身大のお人形の中に入って動かしたり、そのお人形を作ったりしています。」
TS子「人形の中に入るって、乗り移るの?」
由希「いえ、特殊な素材で作られたお人形ですので、中に入ることが出来るのです。一体化するといった感じかしら?」
TS子「一体化?お人形になるの?」
由希「そうです。説明はしにくいのですが、一度体験されるとよくわかりますわ。」
TS子「そうね、面白そうね。一度やってみたいわ。」
由希「ぜひ、やってみてください。そうだ、あとで、体験されてはいかがです。楽しいですわよ。」
TS子「ぜひお願いするわ。」
由希「それじゃ、この録画のあとで・・・」
TS子「いいわね。ちょうどこのあとスケジュールが2日ほど開いてるから・・・あら、ディレクターが睨んでいるわ。それはまたあとで、お話ししましょう。」
由希「はい。」
(ここからTS子は、‘T’。由希は、‘由’と表わすことにする。)
T「ところで、あなたが人形師になろうと思われたのは、いつの頃からなの。」
由「そうですね。小学校のころです。華奢でひ弱かったわたしは、自分がいやでいやで、いつも他の人みたいに丈夫になりたいと思っていましたの。」
T「それで?」
由「そのころ見ていましたデパートや遊園地でのヒーローショーのヒーローたちを見ていて、自分もあんなになりたい。あんな身体が欲しいと思うようになりました。それからかしら、別人になりたいと思うようになったのは・・・」
T「じゃあ、きっかけは、ヒーローショー?」
由「ええ、そうですね。別人になると、今のひ弱な自分じゃなくなると思っていましたの。それに、よくいじめられていましたから。」
T「そうねぇ、そのころかもしれないわね。わたしも、男の子によくいじめられたから、口では負けないぞと思って・・・ほほほ、今じゃ、誰にも負けないわよ。口では。」
由「フフフフフ、そうですね。」
T「そうですねって、あなたも言うわね。」
由「すみません。」
T「いいのよ。本当のことだから。それで、どうなさったの。」
由「当時は、今のような人形がなかったので、まずは、自分で仮面を作っていました。紙粘土とかで、ですが、結構、顔が大きくなったりして重かったですわ。それに不恰好で、すぐにあきらめましたけれど・・・」
T「そう、それで、おやめになったの。」
由「しばらくは何もしませんでした。でも、我慢できなくなって、ビニルの空気人形や、ラテックスの人形なんかで、着ぐるみを作ったりしましたが、満足いくものは出来ませんでした。そんな時、ある雑誌に、海外のドールヘッド(フィメールマスク)の紹介や、それで変装されている方の記事が載っていましたの。それで、その方にお会いしたいと思ったのですが、その方とは、ある事情で、ついにお会いすることが出来ませんでした。」
T「そうなの。それは残念ね。それで?」
由「でも、海外にわたしが求めているようなものがあるのを知って、辞書とにらめっこしながら、その記事に載っていたドールヘッドの制作者の方に、手紙を出したのです。そうしたら、その方から返事が来て、いろいろと教えてもらいました。その方とは、それで親しくなって今でも交流はあります。」
T「へえ、すごいわね。あなた、英語が得意だったの?」
由「いいえ、あまり好きではありませんでしたが、その時は必死でしたから。かなり稚拙な英語でしたが、こちらの真意は伝わったみたいで、その方の指導が受けられて、人形作りを始めたのです。」
T「そして、これが、第一号?」
由「きゃ〜、恥ずかしい。どうしたのですか、この写真。これ、ドーラーとして、デビューしたてのころのわたしですわ。はずかしい。」
(セミロングで、ベッドに寝そべっている二十歳ぐらいの美女が写っている。)
T「この番組のディレクターがあなたのファンらしくて、この写真にサインもらってくれって言って、置いていったの。サインもらえるかしら?」
由「わたし、字には自信がないのですが・・・なんて書けばいいのですか。」
T「あなたのお名前と・・・え、『よしおか賛へ』ですって、あなた、ずうずうしいわねえ。完全に職権乱用よ。これこれ、泣かないの。ディレクターの言うとおりに書いてくださるかしら、お願いしますわ。はい、マジック。」
(由希、恥ずかしそうに、その写真にサインする。)
T「え、キスもですって、あなたねぇ、ちょっと、後で、わたしの楽屋へいらっしゃい。話があるわ。ごめんなさいね、わがままな奴で。」
由「いえ、いいです。でも、よくこんな写真がありましたわね。ほんとうに、はずかしいわ。」
T「でも、ほんと、おきれいね。あら?あなた、今のほうが若くない?」
由「それは・・・企業秘密です。あとで、TS子さんにだけこっそりと・・・」
T「二人だけの秘密ね。それではあとで・・・ここでコマーシャルです。ほんと、おきれいだわ。」
CM
アニメのキャラの女の子になりたいあなた、お人形のようにかわいい女の子になりたいあなた。どうぞ、気軽にお電話ください。あなたの望みをかなえて差し上げますわ。
お電話の方は、(OOO)TTT−ZZZZ
FAXは、(OOO)TTT−ZZZS
メールアドレスは、1222−3335@mvh.9876ne.jp まで、ご連絡ください。待ってま〜す。 人形お助け事務所のお知らせでした。
T「いま、あなたに最近お作りになったお人形の写真を見せていただいていたのだけど、なんだか、お作りになるお人形、変ってらしたのね。」
由「あら、やはりお気づきになられました。はい、最近では、イラストっぽいお人形を作っております。」
T「あらなぜかしら。リアルなお人形はあきたの?」
由「そういうわけではないのですが・・・なんとなく。」
T「里香ちゃんをおつくりになったころから、変ってこられたようにお見受けするけど・・・」
由「それ以前からも思ってはいたのですが、自分は、別人になりたいのか、お人形になりたいのかというところで、いろいろと考えて、いまは、お人形に近いものを作っています。」
T「そうなの。でも、かわいいわねぇ。この子も、この子もかわいいわ。あら、この子すてきねぇ。あら、この子は、今のあなたにそっくり。」
由「TS子さん。し〜〜〜。」
T「あら、そうだったの。なるほどねぇ。わからなかったわ。ふ〜ん。あ、ところで、お話しは変わりますが、今は、新しい人形氏の方々が、でてきていらっしゃるわね。」
由「はい、今は、プロの方ばかりではなくて、セミプロや、まったくこの業界とは関係ない方もやられていますわ。」
T「にぎやかになってよかったわね。」
由「はい。でも、いろいろと問題も起こってきていますが・・・」
T「どんな?」
由「それこそ、いろいろとありますので、あとでゆっくりとお話しします。TS子さんには、相談にのって頂きたいものですから。」
T「いいわよ。後でゆっくりとお話しましょう。でも、いいわね。そうやって、いろんなものになれるなんて。子供たちのところに行くと喜ばれるのじゃなくて。」
由「はい、小さな子供たちは、すぐに受け入れてくれます。でも、大人たちはダメですね。固いというか。」
T「融通が利かなくて、あなたたちを受け入れてくれない。」
由「昔ほどではありませんが、やはり、限定はされます。」
T「たいへんね。でも、これから、あなた方のような方は必要だと思うわ。」
由「そうでしょうか。」
T「ええ、子供が素直に接することが出来るし、素顔という仮面をかぶった生活に疲れた人が、お人形という仮面で、本当の素顔を取り戻すことが出来るでしょうから。これからは、あなたのお仲間はもっと増えるかもよ。」
由「仲間が増えるのはうれしいですが、あまり素直に喜べないような気もしますね。」
T「あら、褒めたつもりが、そうね。ほほほほほ、ごめんなさいね。」
由「いいえ、いいのです。」
T「これからのご予定は?」
由「はい、お人形の世界にこだわらず、いろんなことをして見たいと思います。どんな世界とも、何か共通するものはありますから。」
T「そうね、これからのあなたの活躍が、楽しみだわ。今日はどうもありがとうございました。」
由「いいえ、こちらこそ。さっき、おっしゃっていましたが、TS子さんは、このあとお休みなのですか。」
T「そうなのよ。2日間、お休みなの。」
由「それでは、ここで、お過ごしになりませんこと。いろいろ、まだお話ししたいですし。」
T「あら、いいの。ぜひそうさせていただきたいわ。わたし、お人形に興味を持ったの。それに、あなたのかわいいお人形をもっと見せて欲しいし。」
由「それでは、部屋を準備させますので、ぜひ。」
T「ありがとう。そうさせていただくわ。ところで、このお人形なんだけど・・・・」