トワイライト・シアター

あるサイトのお話

語り部・よしおか

 

どうも、こんばんは。よしおかです。

わたしは、よく行くサイトがいくつかあります。ここも、そのひとつです。

(うそコケ。あっちこっちに行ってるくせに。どこでも見かけるぞ)

う、うんん。え〜何か雑音がしましたが、お気になさらずに・・・

さて、ここの闇の車掌長とは、私がネットにお邪魔するようになったころに知り合った古い友人の一人です。そんな彼と同じころに知り合い、よくお邪魔していたサイトに「若老庵」があります。そこは、70歳の誕生日を記念して、HPを開いた方のサイトです。

(あの人の話をするのかい。う〜ん。 (――;

そのサイトは、BBSとチャットだけのシンプルなもので、ただ、みなとお話がしたいという管理人の希望でできたものでした。といっても、かなりの常連がいて、うどやんも、わたしもそこの常連だったのですが・・・

(て、人の話も聞かずに進めているし。ま、いいか、あそこをみんなに知ってもらういい機会かもしんない。)

毎日のようにそこに言って、おやっさん(そこの管理人の人です)や、うどやんたち常連の仲間たちと、たのしく会話をしていたのですが、仕事が忙しくなり、いつの間にか、ご無沙汰してしまいました。

それから、私が、また、あのサイトにお邪魔したのは、最後に行ってから、半年が過ぎようとしていました。

 

その日、私はこっそりとそのサイトにお邪魔しました。そして、初めて、偽名で、チャットに顔を出しました。1年前までは、毎日のようにお邪魔していたのに、すっかりご無沙汰になってしまったので、来づらかったからです。ばれないだろうと思って、チャットしていると、いきなり「内緒話」が、私宛に来ました。

(チュン)

おやじ:よしおかさん。おひさしぶりですね。げんきでしたか?

 

私は、目が点になってしまいました。ほかの当時からの常連にはばれていないのに、おやっさんには、ばればれだったのです。

 

たどころ:(この時の、私の偽名です)おやじさん。お久しぶりです。すっかりごぶさたしちゃって、来づらくて、偽名使ったのですが、ばればれですね。

 おやじ:ははは、そんな気遣いは無用なのに。よしおかさんが来てくれただけで、うれしいですよ。お元気でしたか?

たどころ:はい

 

ひさしぶりの、それも、すっかりご無沙汰していた私の相手をしてくれるおやっさんの心遣いがうれしかったのを、覚えています。

その日から、また、昔のように、このサイトに毎日のように来るようになりました。

だが、ある日。私と同じように来ていたうどやんが、ここの所、まったく来ていないのに気がつきました。そして、ほかの常連に聞くと、半年前に、一ヶ月ほど、一時期、おやっさんが、サイトを休んだときを最後に、来ていないとのことでした。病気でのお休みだったらしいのですが、再開しても、うどやんは、来ることはなかったというのです。おやっさんが、休んでいる間、このサイトの自主的な留守番をしていたというのに。

うどやんの信じられない行動に、不振を感じながらも、時間は過ぎていきました。そして、うどやんが、このサイトを立ち上げるメールが来たとき、私は、思い切ってあのサイトでの行動を聞いてみることにしました。うどやんからのメールの返事は、かなり驚愕しているようだった。

そして、数日後。うどやんから、電話が来た。

「やあ、うどやん。どうしたんだい。」

「若旦那。あのサイトに行っているのかい。」

「ああ、でも、お前さんどうしたんだい。真っ先に来ていると思ったのに。」

「おやっさんは・・・居たかい?」

「いたよ。病気したんだってね。でも、今は元気にしているよ。それが、どうしたんだい。」

うどやんは、言葉に詰まってしまった。何か告げなければならないことがあるのだろうが、言うべきかどうか、迷っているようだった。

「うどやん、どうしたんだい。」

「若旦那。信じてもらえるかどうかわからないが、聞いてくれるかい。」

「ああ、どうしたんだい?」

うどやんは、たどたどしく話し出した。

「あのなぁ。あの『若老庵』のおやっさんは、実は、半年前に亡くなっているんだよ。」

私は、うどやんのブラックな冗談に、苦笑した。

「笑えない冗談なんか・・・」

「こんな冗談を言う奴かどうか。若旦那が、一番よく知っているだろう。」

そう言われて、私は、言葉に詰まった。だが、そうすると、あのおやっさんは・・・

「おやっさんが、病気になったというのを聞いて、おやっさんのところに、電話をかけたんだ。そうしたら、奥さんが出てきて、脳溢血だったらしい。サイトのBBSのレスを書き込んでいる最中だったらしい。そして、亡くなる瞬間、意識が戻って、『サイトに来る人に迷惑が・・・』というのだったらしい。だから、後を引き継いでいたんだけど、一ヶ月過ぎたときに、奥さんに、契約期限も切れるので、このまま自然消滅させてほしい。といわれたので、何のコメントも残さずに、身を引いたんだ。」

最後まで、サイトに来る人のことを思いながら亡くなったサイトオーナーのおやっさん。

そして、その後、真実を知りながら、帰ってくることのないオーナーの変わりに、サイトを守っていたうどやん。

でも、うどやんの話だと、すでにサイト契約は切れているはずなのに。いまだ続いているサイト。そして、この世のものではないサイトオーナー。

電脳世界という仮想の世界のトワイライト・ゾーン。私は、その日以来、あのサイトには行くことができなくなってしまった。

あなたが、もし、偶然このサイトに行くことができたなら、おやっさんによろしく伝えてほしい。私も、うどやんも、おやっさんの事は、いつまでも忘れないと・・・・

 

 

あとがき

リンクの消えることなく漂うサイト。もしかしたら、こんな裏話があるサイトがあるかもしれませんよ。

それでは、また。