トワイライト・シアター

 

ネット奇談?

語り部・よしおか

 

これは、わたしの友人からもらったメールに書かれていたのですが・・・・

 

『よしおか。元気か。ぼくは、今はたくさんの仲間に囲まれ楽しく暮らしている。これまでは、お前以外に友達はなかったけど、こうして、仲間に囲まれるっていいな。これもネットのおかげだ。

ネットを始めたころは、掲示板に書きこしようにも、チャットで、会話に入ろうとしても、常連の人や、そこによく来ている人しかわからない話ばかりで、どうしようもなく、見ているだけになっていたけど、ある日偶然訪れたサイトで、まるで、ぼくが着ているのがわかっているかのようなカキコに答えたのがきっかけだった・・・・

 

【いらっしゃい。初めての方ですね。何もないところですが、よろしければ、一言お願いします。】

そう掲示板には書かれていた。その時間は、ぼくがこのサイトに入った後の時間だった。項目を眺めながら、あちらこちらに行っている間に書かれたようだった、それも、ぼくが、この掲示板に顔を出すのを予測していたかのように・・・なぜなら、ぼくが掲示板を開く一秒前に、このコメントは、掲載されたからだ。

だが、そんなばかなことはありえないだろう。これは、以前来た誰かへのメッセージだったのだろう。ぼくはそう、自分に言い聞かせると、掲示板を閉じようとしたそのとき、更新もしていないのに、あたらしい書き込みが現れた。

【チャットでお待ちしていますので、ぜひお寄りください。】

気味悪くなって、帰ろうとしたが、ぼくは、チャットを覗いてみることにした。そこには、すでに数人の人が来ていた。

主人:ようこそいらっしゃいました。どうぞ、なかのほうに・・・

BK:はじめなじて

 

ぼくは、あせって、打ち間違えてしまった。他のところでこれをやり、散々笑いものにされたことを思い出し、ぼくはその場から逃げようとした。

 

五平:はじめまして、五平と申します。

佐吉:よオ、俺は佐吉でぃ。よろしくな。

洋斎:名は洋斎と申す者。以後、お見知りおきください。

さえ:わたしは、さえです。

主人:ご挨拶が遅れました。わたくしめは、このサイトの主人。吉衛門と申します。BK殿、ようこそおいで下さいました。どうぞゴゆるりとなさってください。

 

彼らは、笑うどころか、何事もなかったかのように、ぼくを迎えてくれた。そして、会話も、たわいのないもので、時には、ぼくがわからない会話になると、すぐにわかる話題にしてくれた。そんな気遣いに、申し訳なく、黙っていると、会話に入るように誘ってもくれた。

そのうえ、わからない言葉が出てくるとわかりやすく説明をしてくれた。以前に行ったところでは、意味を聞いても教えてくれず、ぼくは、取り残されて、会話が進んでいったところもあった。

ぼくは、すっかりこのサイトにはまってしまい。ついには、OFF会をする話までになった。怖い気持ちもあったが、みんなに会いたい気持ちもあった。特に、さえちゃんに・・・・

でも、彼女は、ネットおかまである可能性もあった。もしそうだったら、そのときは・・・そのことを、考えるとぼくの決心は鈍った。だが、うじうじしていても仕方がないので、ぼくは、OFF会に参加することにした。日時と場所が決まり、ぼくは、不安と期待に入り混じった気持ちで、その日が来るのを待った。

そして、その日が来た。ぼくは、待ち合わせの場所へと出かけた。だが、簡単に考えていたが、その場所は容易にはわからなかった。なぜなら、あのサイトの主人の吉衛門さんが教えてくれた住所がないからだ。約束の時間は迫ってきた。ぼくはあせって、その場所を探し回ったが、なかなか見つからなかった。そして、日も暮れかかってきたとき、歩きつかれて入った食堂のおばあさんが、ふとこんなことを言った。

「その場所なら聞いたことがあるよ。わたしの母親の昔話にそんな地名があったような。ちょっと聞いてあげるよ。」

「あの〜、おばあさんのお母さんって、いくつなんですか。」

「今年でたしか、96だったと思うよ。耳は遠いが、まだまだ、頭はしっかりしているから、ちょっと待ってな。」

そういうと、そのおばあさんは、奥に引っ込んでいってしまった。しばらくすると、戻ってきて、その場所への道順を教えてくれた。ぼくは、礼を言うと、その場所へと歩き出した。だが、道すがら、気になることがあった。それは、あのおばあさんが最後の呟きだった。

「あそこは、もう誰もいないはずだがねぇ。廃村になって、廃棄物の不法捨て場になってるがねぇ。」

気になりながらも、ぼくは道を急いだ。そして、たどり着いたそこは、たしかにゴミ捨て場だった。そのごみは溢れかえり、廃村の近くにある墓所にまで、こぼれていた。そのあたりを見て回ったが、誰もいる気配はなかった。帰りかけたとき、古びた電線らしきものが、墓所に垂れ下がっているのに気がついた。廃村になったときそのままになったのだろう。何気なく、墓所を覗くと、あちらこちらにごみが散らかっていて、パソコンなんかも転がっていた。その電線は、ちょうどパソコンの転がっている辺りにあった。そのそばには、古ぼけた墓石があった。何気なく、その墓石の名前を見ると、コケが生してよく読めなかったが、「・・・・吉衛門」と彫られていた。ぼくは、周りの墓石も調べてみた。「・・山五平」「高・・洋斎」「富士佐・・」そして、それらの墓石に囲まれた真新しい小さな墓石がぽつんとあった。そこに刻まれた名前は・・・ぼくは、確認もせずにその場を逃げ出した。ぼくが、ネットで知り合った人たちは、実は・・・

ぼくは無我夢中で、今来た道を駆けもどっていった。そして、県道までたどり着いたときに、左のほうから、まぶしいばかりの明かりが・・・・』

 

そこで、メールは終わっていた。わたしは、このメールをどうすることも出来ないままにいる。このメールが、1年前に送られてきたのだったら、こうも、悩まなかっただろう。だが、このメールが送られてきたのは、今日なのだ。そして、送信日は、20分ほど前。

9ヶ月ほど前に、メールをくれた彼が、交通事故で、病院になくなった時間なのだ。彼は、今でも、元気でいるのだろうか?ネットで知り合った友達たちと・・・・