よしおかの仮面の世界

 

第三回 変装ファン・モンキーパンチ氏

ファンというか、縦横無尽に変装の魅力を描いている作家というのがモンキー・パンチ氏だと思う。彼の作品は「ルパン三世」が一番知られているが、そのほかにも面白い作品は驚くほど多い。そのほとんどがコミックス化されてはいないけど・・・(勿体無い)

それと、彼の作品には必ずといっていいほど変装シーンがある。これは他の漫画家の作品に比べても驚くほど多いのだ。変装シーンをこれほど作品の中に描いている作家も、彼のほかにはいないだろう。

 と、こんな風に言っても彼の作品の凄さは伝わらないだろう。さればこれはいかがだろう?

 変装を作品の中で扱ったものは数多くある。それが、カツラと化粧、小物を使ったものから、フェイスマスクや異性の体付きになれるボディスーツを使ったものまでさまざまだが、その扱いはその時だけのものか、出てきても長い話数の中で23度程度のものだ。だが、モンキー・パンチ氏にかかるとそれはストーリーの中で重要な目玉商品となる。主人公が、いや敵さえもいったい誰なのか、ラストまでわからないからだ。

 なに言っている。変装なんて誰でも使っているぞ。とおっしゃる方も入りだろう。確かにそのとおりだ。いろんな漫画家が、いろんな作品で使っている。そして、変装の名人もかなりの数がいるのは、わたしも認めるところだ。だが、主人公も、出てくる敵も(まったく違う人物なのに)変装の名人だというのはそうお目にかかることはない。

 たとえば皆さんよくご存知の「ルパン三世」を例に取ってみよう。この作品では、敵もルパンの相棒の次元に化けたり、不二子だったり、ルパン本人だったりして惑わしてしまう。登場人物が本当に本人だろうかと疑ってしまう作品がほかにあっただろうか?

 それとモンキー・パンチ氏の作品の特徴は、どんな人物にも化けてしまう事だ。ベッドで誘う全裸の妖麗な美女がルパンだったと言うのは。彼の作品にはざらにある。我々はこのことをあまり不可思議に考えずに受け入れてしまう。ここもモンキー・パンチ氏の凄いところだ。

普通の作家だと、体形が、骨格が、裸になったらばれてしまう。とか考えてしまい、それほど意外な変装シーンを見ることは出来ない。だが、モンキー・パンチ氏にかかるとそれがいとも簡単に行われるのだ。あの髭モジャの次元でさえも、原作では美女に化けている。もちろん体付きも女性だ。これはいったいなにを意味するのだろう。モンキー・パンチ氏はなぜそんな事をするのだろう?いくらうまく変装しても体形は誤魔化せないのではないか!と言われる方もいるだろうが、ここが、彼が他の作家と違うところなのだ。彼の変装技術はそのことを可能にしているのだ。だから、ラストで水着の美女がルパンに代わる事も可能なのだ。

 彼はこの漫画(他の漫画でもそうだけど)で、読者が驚く事に喜んでいるような気がする。だから、彼はルパンや他の登場人物たちが変幻自在に姿を変える変装を使っているのだ。だが、彼は決してアンフェアではない。ルパンが女性に化けるなんてアンフェアじゃないかと言う人もいるかもしれないが、彼はちゃんと「ルパンに関する12章」と言う作品で、ルパンが女性に化ける変装道具を手に入れた事を告げているし、それまではルパンは女性には変装できないと銭形警部を使って言い切っている。つまり、読者には、ルパンが女性に化けているかもしれないとちゃんと読者には告げられているのだ。それに作品中でルパンが入れ替わるときも、ちゃんとそれらしい部分はある。それに気づくかどうかは読者次第なのだ。モンキー・パンチ氏は、アンフェアに読者を騙しているのではなくて、ちゃんと手の内は見せていながら、読者をアッと言わせているのだ。

 これらの事は、作品の流れだけに気を使っている作品では見られないだろう。一種の推理物の形を持っている作品。それがモンキー・パンチ氏の作品の特徴と言えるだろう。

 ちょっと、変装と離れてきたけれど、彼の作品は、変装が作品の小道具ではなくて、変装も作品の大事な要素だと言う事だ。これがなければ彼の作品の魅力は半減するだろう。

 それと、ルパンの変装で触れなければいけないことがある。アニメ版ではルパンは服の上からボディスーツを着ているが、原作ではそんな事はなくきちんと素肌の上から着ているという点だ。この点もよりルパンの変装を納得行くものにしている点だろう。女性の変装を解いたらその下から裸のルパンが現れる。これは変装ファンにはたまらないシーンではないだろうか?

 これらのことからモンキー・パンチ氏の変装に対する扱い方が他の作家とは違う事がお判りいただけただろうか?「ルパン三世」は、変装のための作品と感じるのはわたしだけだろうか?

 アニメではその盗みのテクニックなどがクローズアップされるが、ルパンの本当の楽しみ方は、ルパンの変装の方にあるのかもしれない。その点で言うとモンキー・パンチ氏の流れを汲む「ルパン三世」を描いているのは、TV版の影響も受けているが山上正月氏の「ルパン三世」ではないだろうか?というところで、この回を終わる。

 では、ぬた!