鋳造

注)鋳造編は結構危険な工程があるので、最初は経験者と一緒にやることをお勧めします。
ま、一緒にやってくれる経験者がいるならこんなお粗末なページ見ることも無い訳ですが(^^;)
少なくともこのページに書いてある専門用語位は全部理解出来る位勉強してからのがいいと思います、
かなり端折って基本的な事しか書いていませんので。

何にしてもこのページは自家鋳造を薦めるためのページではありません。
当方ではこのページを参考に行なわれた事に関して一切関知いたしませんので、
もし鋳造をされるときは細心の注意のもと、総て自己責任で御願いいたします。
 ★スプルー線植立
 原型WAXにラインWAXという線状のWAXで、湯道を作り植立します。
 原型WAXの形状によってはエアベントやチルベント等を付与しますが、この程度のWAX原型なら余裕で鋳込めますのでいらないでしょう。

 今回は遠心鋳造機を使うので、斜め上方のベクトルを考慮して植立します。
 写真でいうと左上方のベクトルで銀が流れる事になります。
 と言う事は右方向を回転方向に決めたと言う事なので、鋳造する時の目印となるように、湯溜りの辺りに目印のポッチを付けます。写真でやや青っぽくなっている所がそれです。
 
 これにシュールキャストスプレーを吹き付けます。
シュールキャストスプレーは鋳型材の流れを良くするためのお薬です。
※先日ショップの店員に聞いたのですが。どうやらこのシュールキャストスプレー(GC社製)は製造中止になってしまったらしいです。悲しい出来事です。
 
鋳造リングの内側にキャストリボンを巻きつけます。
 
 銀は熱せられると膨張します、ですのでその膨張に合わせて鋳型材も膨張するように作られています、そうする事によって原型WAXと鋳造後の冷めて収縮した大きさとを等しくできるというわけです、この微妙な膨張比率の調合が精密鋳造を可能にしているのです。鋳型材、実はかなり優秀なんです。

 鋳型材は膨張するわけですが、その膨張率が鋳造リングよりも大きいため、鋳造リングにそのまま流し込むと、横に逃げられない膨張力が上下に集中的に逃げてしまい、鋳型材の割れを引き起こします。
 また内側からWAXの膨張力も加わるので、最悪上方が蓋を開けるような感じで開いてしまいます。

 それを防ぐため、緩衝材となるキャストリボンを巻くわけです。

 キャストリボンは通常湿らせて巻きます。ここで通常という言葉を使ったのは、鋳造職人になるとこの湿り気具合をその日の湿度から微妙に加減したり、湿らさなかったりするそうなのです。もちろん私はそんな加減は出来ませんし、出来る人にお会いしたことすらありませんが。 
★銀の重さを量る

 順序が前後しますが、スプルー植立する前に、WAX原型の重さを量っておきます。
 このWAXの重さに10.63をかけた数が銀になった時の重さです。
 それに湯溜り分の重さを足した量が鋳造で使う銀の量になります。


 湯溜りは鋳造する物の重さと同等位が良いと言われていますが、うちの鋳造施設だと1回に融かせる銀の量に限界があるので、大体10〜11gをみています。
 湯だまりは自重で銀を型に押し込む働きをします、少ないと鋳造不良を起こしますし、多いと溢れて大変危険です
★鋳型材を流し込みます。

 鋳造リングに鋳型材を流し込みます。
 本当は真空攪拌器で攪拌させたいのですが、そんな高価な機械はないので、スパチュラで一生懸命攪拌します。
 そしてバイブレーターを使い振動させながら流し込みます。
 必要無いと思いますが一応断っておくと、決してエロいバイブレーターではありませんし、携帯のバイブレーターでもありません。ちゃ ん と 専用のバイブレーターです、ピンク色の...いやいや、普通にベージュっぽい色です。


 以前芸術系じゃない大学の精密鋳造学の教授のお話を聞く機会があったのですが、鋳型材の流し込みはゆっくりチョロチョロ流し込むより、有る程度勢い良く流し込んだ方が気泡は入りづらいそうです。「でもこれ職人さんにいくら説明しても納得してくれないんだよ。」と嘆いてもおられました。頭の固い職人になっちゃダメだよと言ってました。
 鋳型材が固まったら、上面の表面張力で盛り上がった所と、下面のはみ出ている所を小刀等で削って均します。

 これは鋳造機への納まりを良くする意味もありますが、固まったまんまのシルキーな表面を荒らして鋳込み時のガスの抜けを良くする意味があります。


 鋳型材の商品の性能によって違いますが、私が使っている物は流し込みから30〜45分後位にはファーネスにぶち込みます。流し込みから鋳造にかけてあまり時間をかけすぎると、鋳肌荒れの原因になります。
 どうしても時間をあけなくてはいけないときは、タッパーに小さな容器に入れた水と一緒に入れ、乾燥を防いだりします。


 ★リングファーネスに入れます
 リングファーネスとは電気炉のことです。
 写真のファーネスは我が家で一番高価なマッスゥィーンになります。
 工芸用の頼りないメリケン製とは違います、国産の医療用の電気炉です、わっはっは(いやらしい笑い)。

 勿論タイマーも付いていますし、お好みの設定間隔でゆっくり温度を上げてくれるロータイマー及びロータイマーブザー標準装備!温度は見やすいデジタル表示、−200〜1300℃の高レンジで調節可能、上に乗ったお茶目なボックスはプラチナ触媒の半メンテナンスフリーのエアクリーナ(オプション)どすえ。



 銀の鋳造でしたら、1時間位かけてゆっくり730℃まで上げ、そこから1時間程繋留します。
 私が使っている鋳型材はヒートショックなので、ゆっくり温度を上げずに、いきなり高温に放り込んでもよい仕様なのですが、ワックスが肉厚だったりすると、ワックスの膨張に負けて、割れや肌荒れの原因になるので、一応ゆっくり温度を上げています。
 
坩堝
 坩堝です。この上に地銀を乗せて溶かすわけです。
 中にひいてある白いのは、キャストライナーです。これをひくと、キャスト前に坩堝を温めておかなくてもよく、また坩堝の保護にもなり、坩堝が長持ちします。坩堝も何気に消耗品です、値段も高く馬鹿にできません。


※下の\500玉は大きさ比較のために置いた本物ですよ念のため。
自分で勝手にに鋳造して作ったら通貨偽造・通貨変造罪(刑法第148条第1項)で無期または3年以上の懲役です。絶対×です。
★バーナー
 ガスバーナーです。
 エアとガスを混合して噴出します。
 炎とエアの加減は、感覚的な部分が大きいのでニュアンスでしか言えませんが、エアを徐々に強めていって、水色の炎から青い炎に変わるちょい手前位だとおもいます。

 ガスバーナーの炎は、酸化帯、還元帯、燃焼帯、エアブラストの4つの炎で構成されています。銀にあてるのは還元帯です、その他の部分ですと温度が低かったり、強く酸化されてしまい、鋳巣などの鋳造欠陥を引き起こします。
 ガスが都市ガスですと1100℃、プロパンだと1200℃位まで出せます。

 写真右にちょい見えるレンガののった机で、大きめパーツのロウ着とかをやってます。小さ目なパーツの時はタッチバーナーでやっちゃいます。
★遠心鋳造機
 これがうちで使ってる鋳造機です。
遠心鋳造機の横型。
 圧迫鋳造の次位に単純な鋳造方法だと思います。

 本当はキャスパックとかキャスコムとかの真空加圧式鋳造機がほしいのですが、高すぎて手が出ません。マッフルとかカーボンルツボとかランニングコストもけっこうしちゃいますし。
 かと言ってメリケン製のロ○ノフ真空鋳造機とかはちょっと買う気になれません。

 電気炉からリングを出して5分から10分程徐冷してから鋳造を始めます。文献によっては15分位と書いてあるものもありますが、私は1度15分でやって鋳込み不足の鋳造欠陥となってしまったので、10分以上はやってません。でもこれは外気温や鋳造リングのサイズに大きく左右される事なので、一概に何分がいいとは言えません。

 徐冷しないとリングの温度が高すぎて鋳肌荒れに繋がります。熱すぎてもダメ、冷ましすぎてもダメ、意外と繊細なヤツです。


 坩堝の銀をバーナーで溶かしたら

ぎゅーーーーん!!

 これが流し込み終わった後の物です。

・・・・・・・・・・・・ん?!

 あ!これ鋳造失敗です。
左のヤツ湯溜りがありません!!
右のが成功で湯溜まり有りです。
????ナゼ???

 こうなると95%位の確立で使い物にならなくなっています。

 湯溜まりの円錐の下の面のエッヂが丸っこくなっちゃっている時もほぼ失敗です鋳込み温度が低かったか、鋳造リングの温度が低くなりすぎた可能性大です。掘り出す前にすでにがっかりです
 掘り出しました。
?ん??これはもしかしたら5%の方かもしれません。
 スプルーの付け根辺りに巣がありますが、頭蓋の内側なので、インジェクションWAX時での修正が苦にならない範囲です。
 この程度で済んだ原因はきっとスプルーがある程度大きかったためでしょう。
 失敗した原因は多分ボーーっとしてて、湯だまり分の重さを足すのを忘れていたためだと思います。集中力不足です。

HOW TOの企画で失敗するあたりがぶらびらしいと思います。

 ちなみに写真上のヤツはワンメイクのページにある
SECRET HEARTです。右のは頭頂部ですね。
ここで鋳造編終了です、次は研磨編になります。
でも研磨編のページは作らないかもしれないです、
今のところあまり気分が乗ってきません(^^;)