用意された選択はふたつ、許された選択はひとつ ――まだ、いいじゃねえかよ。 って言ったら、 ――ダメだ。
って俺の元家庭教師様で愛しい子の現家庭教師様は、冷ややかに仰られた。 ――もう猶予期間は終わったんだよ。
ああ、そうだな、お前はそういうやつだよ。
おまえはいつだって無茶苦茶で、逆らうことを許してくれない。
ああ、死ぬ気になれば、俺だって。
戸惑った声。
「でも、俺…っ」
同じ言葉をなぞる。 ――ツナといたかったら、ツナをイタリアに連れて行け。 「俺といたかったら、イタリアへくるんだ」
――今までと同じでいいよ、俺は。 「………今までと、同じじゃ、ダメ、なんですか…?」
――キャバッローネのボスは暇なのか? 「俺は暇じゃねえんだ。嫌だって言うなら」 ――もう、ツナには会わせない。 「もう、ツナに会いにこない」 ――永久に。 「永久に、だ」
信じられないものを見るような目。 ――選択はふたつにひとつだぞ、ディーノ。 「選択はふたつにひとつだぜ、ツナ」 ――ツナを幸せにするか、自分が幸せになるか。
「俺を幸せにするか、自分が幸せになるか」
引き攣った声。
何が選択はふたつにひとつ、だ。
つらいよな? 俺もつらいよ。お前の気持ち、分かるよ。
おれのせいじゃないよ? ――強制はしない。ただ、おまえが、あいつのいない人生に耐えられるか? 「強制はしねーよ。ただ、おまえが、俺の居ない人生に耐えられる?」 ――って、お前が言えば、あいつはイタリアへ行く気になるだろ。
確信犯的笑顔。 「って、俺が言えば、お前はイタリアへ行く気になるだろ?」
泣きそうな顔。 ――これは脅しじゃねえぞ?
うん、そんなこと知ってるよ。 「これは脅しじゃねえよ?」
傷ついた顔。
唇が引き結ばれる。 「ツナ、愛してる」
弾かれたように顔を上げたツナ。
信じて。 受け入れて? 「愛してる。愛してる。ほんとうに、どうしようもないくらい、おまえだけを愛してる」
くしゃりと歪む顔。 「お前が来ないと、俺、死んじまう」
口からするすると零れ落ちるアドリブ。 「脅しじゃねえよ?」
緩く笑って、懐に手を入れかけた俺の手に、ぎゅっと絡みつく細い腕。 「……ディーノさん、俺、ディーノさんが好きです…っ」 だから。
「イタリア、行きましょう…?」
死ぬ気になれば、俺だってお前を連れて行けただろうに、って。
リボーン。
本当は誰より俺が、こいつをイタリアへ連れて行きたかっただけだ。
へなちょこだった俺を、ボスにしてくれて有り難う。
愛を教えてくれて、有り難う。 うちのディーノさん、基本的に最低ですね(笑)。 多分、うちの攻め'sで一番酷い人なのは、ヒバリさんでも骸でも誰でもなく、ディーノさんです。 黒いとは言わない。酷いんです。 |