ゆめみるまなこにめかくしを


 ランチアさん。
 ランチアさん。

 その手ぬぐいはなぁに?

「これは、人を殺さないためのものだ」

 ランチアさん。
 ランチアさん。

 どうしてそんなに手をぐるぐる巻きにするの?

「俺が人殺しにならないためのものだ。こうしてベッドに繋いでおけば、俺は狂っても人を殺さずに済む」

 ランチアさん。
 ランチアさん。

 何をそんなに怯えているの?

「また、人を殺してしまうんじゃないか、という恐怖だ。
 あるいは、六道骸本人が怖いのかもしれん」

 ランチアさん。
 ランチアさん。

 あなたは優しいよ。
 とても優しいよ。

 殺したりしない。
 大丈夫。

 俺が一緒に寝ててあげるから。

「ダメだ。もし、俺が狂ったら…」

 狂わないよ。
 あなたは誰より人間なんだから。

 こんなもの、外そう?
 手首がまっかっかに染まってる。

「手を、繋いでいてくれるか?」

 うん。
 ランチアさんの手は冷たくてゴツゴツ。
 ちょっとカサカサ。
 ずっと握っててあげる。朝まで握ってるよ。

「それから……それから、俺の夢に出てきてくれ」

 うん。
 代わりに、ランチアさんも俺の夢に出てきてね?

「もし、俺が、夢の中で狂ったなら、その時は」

 なぁに?
 何でも聞いてあげる。言ってごらん。

「お前が俺を止めてくれ。これで俺を撃ち殺してくれ」

 分かったよ。
 このS&WM500で、あなたを撃てばいいんだね?

――できもしない口約束をしてあげる。

 おやすみ。
 おやすみ。
 いい夢を見てね。

「ああ、目を閉じると襲ってくる。真っ赤な鮮血と、銃声と、悲鳴」

 それはまやかし。あなたの悪夢。
 何も見えるわけないの。瞼の裏すら見えないよ。

 目隠ししようか。夢も見ないように。
 俺がずぅっと、あなたが何も見ないように、守っててあげるよ。

 ほら、ね?
 目を開けたら俺が居る。
 目を閉じれば瞼にキスが降る。

 あとは羊でも数えて、おやすみなさい?

 一晩中愛しててあげるよ。
 明日の夜も、あさっての夜も、あなたが夢を見ないように。


 おやすみなさい。
 愛しい子。





END


うちのツナは、ランチアさんのお母さんなんです。
で、ランチアさんは、ツナのお兄ちゃんで甘えん坊のお子ちゃま。
数年間忘れていた家族(ファミリー)を思い出して、ひとときも離れたくないと良い。
で、ツナがランチアさんに感じるものは、母性愛だったり庇護欲だったり。
ツナのちっさい身体に抱きついて、いじめられた子供みたいに泣いて、ツナが頭をよしよししてやる構図がすきなんです。

私、ランチアさんを何だと思ってるんでしょう(笑)。
まなこ=眼=愛(まな)子(こ)=愛しい子 っていうのを滲ませたかったんですがね…OTL

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