散々粘られた末、一護が冬獅郎に張り付いていた人物をバリッと引き剥がした。そして冬獅郎の視界
にその人物の全体像が映し出される。黒髪に紫がかった瞳、白の小袖に緋の長袴。顔の造作はもちろん
彼の見覚えのあるもので。
「ルキア!」
「はっはっは!よく来たな、冬獅郎殿。」
一護に脇を挟まれた形で後ろから羽交い絞めされても、何だか偉そうな態度の少女。それは冬獅郎の幼
馴染であるルキアだった。
「それはそうと、いい加減手を離さぬか、一護。これでは動けぬ。」
「だったら、離したら
「嫌だ、動きにくいではないか。」
「駄目だっての!着替えて来い。」
「そのように頭の固いことを言うな。貴様は兄様か。」
「俺をあいつと一緒にすんな!」
一般的な成人女性の常識に反し、薄着で過ごし、あまつさえその状態で冬獅郎に抱きついたルキア。そ
の事実に一護は無性に苛立っていた。
「まあ、いいだろ。俺はまだ一応元服迎えてないしな。」
「ほれ、冬獅郎殿も良いと言っておるではないか。」
「お前らは良くても俺は駄目だろうが!」
冬獅郎のフォローらしきものにルキアが同意するものの一護が反論。
「・・・全く仕方があるまい。我が儘な奴め。元服を迎えたというのにまだまだお子様だ
な。」
「な、何だと!?」
「仕方がないから着替えてやろう。私は大人だからな。」
「どこがだー!?」
ルキアの発言に力の限り一護が訴えるものの、あっさり無視される。
「うるさい。耳元で騒ぐな。さっさと離せ。さもないと無理やり外すぞ。」
しかもこの一言である。
「ははっ、お前の負けだな、一護。」
外見こそは眉間に皺寄せた憮然とした表情。しかしその瞳には何とも情けない色が浮かんでいる。そ
れを幼馴染である冬獅郎は見抜いた。ルキアに上手く反論できない一護の様子に冬獅郎は噴出すように
笑った。
「と、冬獅郎はルキアの味方なのかよ!?」
「俺は俺の味方だ。」
「冬獅郎〜・・・。」
恨めしそうな目で一護は冬獅郎を見つめるものの彼からのフォローはない。
「大体、
「そ、それは・・・。」
「貴様ら、私を何だと思っておるのだ・・・。」
冬獅郎と一護の態度に半眼になるルキア。
「そんなことより、一護はさっさとルキアを離せよ。それで、ルキア、喉渇いたから何かくれ。」
「お、おう・・・。」
「ふむ、冬獅郎殿がそういうなら仕方がないな。」
しかし冬獅郎の言葉に結局彼らは従いそれぞれ行動に移す。結局この三人のパワーバランスにおいては
冬獅郎が一番強いということなのだろう。もちろん根本的な身分の違いもあるだろうが。
「それにしてもやたら広い屋敷だと思ったら朽木家のだったのか。」
「そういえば冬獅郎殿はここへ来るのは初めてであったな。」
三人が一息つき、ルキアも一護の希望で袿を身につけた後、三者三様に寛ぎながら、彼らは思い出話
に華を咲かせていた。その時、思い出したかのように冬獅郎が現在の状況に触れ、ルキアもまたそれに
相槌を打った。
「なあ、さっきから気になっていたんだが・・・。」
『どうかしたのか、一護?』
そんな中、やや躊躇いがちに話しかけてきた一護に冬獅郎とルキアは異口同音に返事をする。それが見
事に唱和しているのは、やはり幼馴染のなせる業か。
「・・・どうして冬獅郎はルキアが朽木家の姫と知って驚かない?」
自分の時は散々驚かせられたのに冬獅郎とルキアは平然と話をしている。それが一護には釈然としなか
った。
「別に驚くも何も、俺、ルキアが朽木の姫だってこと前から知ってたし。」
「は!?」
しかし冬獅郎からは、さも当然と言わんばかりにあっさりと返される。その衝撃たるや一護を石化状態
に陥らせるのに充分な威力であった。
<後書き>
ついに冬獅郎とルキアが再会。決して日ルキではございません(笑) 仲良しさんですがね。一護は
密かに妬いてます。宮中幼馴染三人の遣り取りは設定を作っていた当初から書きたかったので、書いて
いる本人結構気合は入ってますよ。