ブリーチ平安パラレル第七話    
白銀の皇子、琥珀の君
〜仲間ハズレも愛のうち〜



「ど、どういうことだよ!?」
 衝撃のあまり一瞬石化状態に陥ったものの、驚異的な精神力で何とか回復した一護はかなり慌てた様 子で冬獅郎に詰め寄る。もし冬獅郎が皇子でなかったら胸倉掴み上げるくらいはやってのけたかもしれ ない。
「どういうことって・・・何がだ?」
一方冬獅郎は何故一護がここまで動揺しているのか分からない。彼の剣幕に不思議そうな顔をするばか りだ。もちろんルキアも同様で、一体どうしたものかと首をかしげている。
「何か問題でもあるのか、一護?」
「も、問題って・・・何で冬獅郎がルキアが姫だってこと知ってるんだよ!?」
尋ねたルキアの言葉に一護は声を荒げた。一護は元服後ルキアと再会するまで、彼女が女だと知らなか った。朽木家の姫だということも知らなかった。それどころか男だと思っていたのだ。もちろん皇子で ある冬獅郎の相手役に選ばれたくらいだから、一護と同様それなりの身分の家柄だという推測はできた が。
「何でと言われても・・・。」
「確か一護が冬獅郎殿の元に通うようになる前から知っておったはずだと・・・。」
「というか、初対面から朽木の姫って紹介されなかったか?」
「そういえば、そうであったような・・・?」
 冬獅郎達は記憶が定かではないのか、二人ともちょっと思案顔で昔を思い出そうとしている様子。そ んな彼らに一護は悔しさのようなものを覚えた。一護は冬獅郎を驚かそうと思って、彼にいろいろなこ とを伏せてこの屋敷につれてきたというのに、彼は全く驚いていない。しかも自分が知らなかった女性 であることも朽木家の者であることも冬獅郎はずっと昔から知っていたという。
(クソ・・・!)
一杯食わせる積もりが逆に食わされたということもあるだろうが、自分だけしか知らないと思っていた ことが他人も知っていたという怒りと恥ずかしさと空しさが彼の胸に去来していた。それどころか同じ 幼馴染で親友同士ともいえた三人だったのに冬獅郎は知っていて自分は知らなかったという事実が一護 にはショックだった。
「でも、ルキアが来れなくなってからも文の遣り取りはしてたよな〜。」
「そうだな。あればかりは狐に感謝せねばなるまい。せっかく知己になった縁を断つのは勿体無いと、 私と冬獅郎殿の交流が途絶えぬよう手配してくれたからな。」
「普段はアレだけど、たまには役に立つな。あの兄上も。」
さらに冬獅郎とルキアは一護が凍りつくような会話を続けている。一護が元服後ルキアを密かに捜して いた間もきっと冬獅郎とルキアは交流があったのだろう。それすらも一護は知らなかった。
(いや、確かに冬獅郎にルキア捜してるなんて言ったことなかったけど・・・。)
それでも宮中において彼らの仲は良くて、ルキアと一護は同じ殿上童という立場であって。何となくで はあったが、皇子である冬獅郎よりは自分の方がルキアと近い存在であると思っていたのだ。例えルキ アと出会ったのは冬獅郎の方が早くても・・・。
(何で俺に教えてくれなかったんだよ!)
 けれども、実際はルキアの秘密を知っていたのは冬獅郎で。一護は姫としての彼女に出会うまで何も 知らなくて。あんなに仲が良く近しい存在だと思っていたルキアのことを何も知らなかったのだと思い 知らされる。それが悔しくて哀しかった。
(信用されてなかったのか?)
姫であることを隠すべきだったのは一護だって分かっている。秘密を守るならその事実を知る人間が少 ない方が良いのも確かだろう。けれども頭では理解できても心は納得できない。自分だってルキアが不 利になるような真似をするはずがない。ルキアを護ることができるはずだ。例えルキアが殿上童をして いる間は内緒にしていても、せめて彼女がいなくなった後、真実を教える分には問題ないのではないだ ろうか。そう思っているのに、彼はルキアにも冬獅郎にも信用されていなかったのだろうか。そう考え ると裏切られたような気分になった。
「まあ、冬獅郎殿の文で一護も元気そうだと知ることができたから、本当に良かったと思って おるよ。」
「え・・・?」
そんな時に耳に届いたルキアの言葉。一護は心臓がドキリとするのを感じる。彼女は宮中を去ってから も自分のことを気にしてくれていたのだろうか。世間の噂話ではなく冬獅郎の文で態々確認を取るくら いに。そう思うと何だか嬉しい気がした。
「そうそう、一護の奴なんかルキアがいなくなってからしばらくは笑えるくらい落ち込んでたんだぜ? なあ、一護。」
「へ!?」
さらに冬獅郎に話題を振られ、一護はギョッとした。何だか嫌な予感がする。
「そう言えば、冬獅郎殿の文にもあったな。私が来なくなってから一護が鬱陶しいくらい落ち込んでお ると・・・。」
「冬獅郎!?」
 ルキアの言葉に一護は冬獅郎の顔を見遣った。どうやら知らない間にいろいろと情報が彼から流れて いたらしい。何かとんでもない話も暴露されていそうな気がする。一体どんな話を流されているのか聞 くのも空恐ろしいが、とりあえず冬獅郎の涼しげな横顔が妙に憎々しく思える一護であった。
(ちっくしょ〜!ルキアの奴に何てことばらしてやがるんだよ冬獅郎の奴!)
いろいろと恥ずかしくて居た堪れない気分ではあるものの、確かに一護はルキアが宮中に来れなくて遊 べなくなったと知り、かなり落ち込んでいた前科があるのだ。ルキアが二度と来ないと告げた相手に散 々食って掛かった記憶もなきにしもあらず。もっとも文句を言われた側からすれば単なる無知な子供の 我が儘と捉えられていたことだろう。
(あ〜、くそ!どうせ俺はお子様だよ・・・。)
それでも当時の一護は納得できなかった。彼が物忌みで宮中に行けない間にルキアはいなくなってしま ったのだから。別れの挨拶すらしていない。どこに住んでいるのかも分からない。また一緒に碁を打つ 約束だってしていたのに果たされることなくルキアは姿を消してしまったのだ。
(ルキアの奴も冬獅郎にはあんな嬉しそうな顔しやがって・・・俺なんていきなり『たわけ!』だぞ? しかも薄着で抱きつくし。男舐めてるだろ、絶対・・・。)
一護は諦め切れなくてルキアを捜した。捜して、捜し続けて、意外な形で発見することになってしまっ たけれど。再会できて嬉しかったことは事実で。そんな彼女と冬獅郎の仲の良さに一護は無意識の内に 嫉妬していた。





<後書き>
 冬獅郎とルキアによる一護イジメの続きです。水無月は学校とかの集団イジメには絶対反対なんです けど、ここではちゃんと冬獅郎達は一護のこと大好きですので悪しからず。
 そしてイチルキです。じわじわイチルキであります。いや、書いてて楽しいですこの三人は。雛森の 出番がまだまだ来そうにないのが心苦しいですが、ちゃんと日雛の出会いも早く書きたいと思っていま すので、ご安心ください。


2008/01/13 UP