「それでは、そろそろこの村を正式に我が領土にしようかの。ジャック。」

「はい、皆の者、村長を総帥の前に引っ立てろ。」

『ハッ』

平戦闘員らが声を揃えて返事をした。数分後、時代劇でお白州に引っ立てられた罪人のように村長はジョーカーの前に連れてこられた。

「そういう訳だから、この書類にサインしてもらえるかな?」

「ううう・・・。」

言葉に詰まる村長。口調は穏やかだが、目が『よお、爺さん。さっさとサインしろや。さもないと殺すぞ、コラ。』と言っていた。まるでチンピラかヤクザである。

(でも、村長が承諾したところでこの土地が私有化するはずないのに・・・。)

その光景を見守るしかない栄作は心の内で呟いた。そんな時だった。

「ちょっと待ったー!」

 突然上の方から声がかかった。

「ぬっ、何者だ!?」

その場に居た人間が一斉に声のした方向に眼を向ける。まず目に映ったのはいまだ噴煙を上げる瓦礫の山の上に立つ五つのシルエット(実は瓦礫の下から這い上がってきたチルドレンジャー)。その五人は平均的な身長と比較するとかなり小柄なのが目測でも分かる(小学生なので当たり前)。そして朗々とした口上と共に彼らは前に進み出た。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!」

「世界の平和を守るため・・・」

「市民の生活を守るため・・・」

「明るい明日を守るため・・・」

「愛と正義と希望の戦士・・・」

『五色戦隊チルドレンジャー参上!!』

ハズッ(恥)!書いてる作者自身がかなり噴飯モノなんですが、きっと登場人物達もそうなのでしょう(この辺りの描写を詳しく書くといつまでも話が進まないので敢えて省略しますが・・・というか自分が耐えられないです)。

「ちるどれんじゃあ〜?おのれ、怪しい奴等め!者供、かかれぇい!!」

『キィ〜』

ジョーカーの号令で黒尽くめの集団(平戦闘員)がチルドレンジャーに襲い掛かった。それにしても、怪しい奴って・・・あんたが言うなよ・・・・・・。

「出たっ。定番の雑魚キャラだわ。」

「ジョ●カーだ、ジ●ッカーだ。」

「仮面ノ●ダーかよ!?またマニアックなネタを・・・。」

「仮面ラ●ダーのパロディ・・・というか、コントですね。本来はショ●カーですから。」

「仮面ライ●ーかぁ・・・、懐かしいな〜。」

「でもそこはかとなく時代設定が間違っているような〜。」

確かにな(笑)

「それはそうと、来ますよ。」

「オレに任せろ!」

火の勢いが収まってきた瓦礫の山(手の空いている職員の皆さんによる懸命な消火活動の結果)を這い上がってくる敵を認め、レッドが一歩前に進み出た。一方、野次馬の方々は一歩所か、かなり後退して遠巻きにその様子を見ていた。とばっちりを食わないためである。実にちゃっかりした連中だった。

「食らえ、ソースビーム!青海苔フラッシュ!揚げ玉ボンバー!」

『キィ〜!?』

 レッドの声と共に繰り出された技で黒の全身タイツ形バトルスーツ(チルドレンジャーの物は上下や頭部のパーツが分離可能)を着たブラック・サンダーの平戦闘員達がバタバタと倒れていく。上からの攻撃なので避けにくいのだ。その中で野次馬の一人が叫んだ。

「ヤキソバンだ!」

すると別の野次馬が、

「じゃあアイツらはケトラーだ!」

と繋げた。さらに次々と声が上がり、

『ケートーラ!ケートーラ!ケートーラ!』

といった調子にノリノリで大合唱する始末である。

「ワシはキング・ジョーカーだ!!」

ジョーカーの叫びが辺りに空しく響いた。

 

 

*ヤキソバンとは・・・!?(このネタだけ伏字なしです。関係者様すみません。)

正式名はUFO仮面ヤキソバンといい、何年か前に日清インスタント焼きそばUFOのCMに登場したキャラクターである。演じていたのはマイケル・富岡(あの人今はどうしてるんだろう・・・?)氏で、一時はスーパーファミコンの題材になった程反響があったらしいぞ!因みに同類にヤキソバニー(♀)というものが存在している。

 

 

「よし、俺達もやるぞ!」

 ブルーの言葉を合図に彼らは散開した。それぞれの場所で各自に戦闘を繰り広げる五人。それではここで彼らの戦いぶりを見てみよう。

ドカッ バキッ ドカドカドカッ

跳び蹴り、膝蹴り、踵落とし、肘鉄、正拳突き、手刀等々多彩な技を織り交ぜて素手による肉弾戦を繰り広げるブルーとグリーン。

(何かいつもより体のキレがいいぞ・・・?)

顔面パンチで敵を倒しつつブルーは思った。

(体が軽いわ。このバトルスーツのせい・・・?)

ミゾオチに肘をめり込ませながらグリーンは考えた。

「嫌ぁぁあああ!?こっち来ないでぇぇええええ!!」

ピンクは悲鳴を上げて逃げ惑った。

(怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ怖いよー!!)

「ふえええぇぇぇん・・・。」

しかしとうとう追い詰められてしまった。

「ヤバイ!」

それに気づいたブルーが慌ててピンクの方に向かおうとするが、敵に取り囲まれてしまう。それでも何とか囲みを破ろうとしたのだが、多勢に無勢でうまくいかず、焦った為か逆に隙を突かれて攻撃を喰らい、吹っ飛ばされた。

『ブルー!?』

仲間達から声が上がる。ピンクは息を呑み込み体を奮わせた。何か熱くてドロドロしたものが自分の内から湧き上がってくるのを感じる。

(よくも、よくも宙ちゃんを・・・!)

「花誘ふ嵐の庭の雪ならで降り行く物は我が身成りけり・・・発動、花吹雪!」

ピンクの叫びと共に何処からともなく現れた無数の花びらが敵を包み込む。すると彼らは次々と倒れこみ、痙攣するばかりで起き上がることはなかった。

「あんた達なんか、大ッ嫌い!!」

花吹雪・・・、それは相手を痺れさせ動けなくする技。これを喰らった相手は痺れが取れても強力な二日酔いと同じ症状を残し、さらに約一週間は腹下しに合うという実に恐ろしい攻撃である。

「大丈夫?大丈夫!?」

ピンクがブルーの所に駆け寄った。

「大丈夫・・・みたいだ。バトルスーツのおかげかな。」

「良かった〜。」

ピンクがブルーの腕にしがみつく。するとグリーンに注意された。

「そこ、イチャつかないように。・・・さてと、そろそろ仕上げに入っちゃおうか。」

「ブルー、立てるか?」

「ああ。」

気がつけばほとんど雑魚は一掃されていた。

「うぬぬぬぬぬ・・・。おのれ、まだまだ!ミサイルランチャー!!」

「なんの!バリヤークラーッシュ!!」

ドカドカーン

そんな戦闘を尻目にブラックは独り瓦礫の山を漁っていた。しかしそれに気づいた者は誰もいなかった・・・。

 

 

 

 

 

「クソ、こうなったら・・・。出でよ、デビルアーマー!」

『アラアラ、ホッサー。』

 ジョーカーの合図と何故かタイムボ●ンシリーズ的な手下の返事の後で、突然地響きが起こった。流石に地震の危険性があると判断した者も居たらしく、野次馬の一部が避難し始めた。しばらくしてドスンドスンと足音を響かせて、高さ五メートル程のロボットが姿を現した。

「で、デカイ・・・。」

唖然とする四人。するといきなりデビルアーマーと呼ばれたロボットが拳を振り下ろしてきた。

『うわ!?』

『キャー!?』

慌ててそれを避ける四人。

「わーははは!やれ!やれ!やってしまえ〜!!」

ジョーカーが異様にハイテンションで腕を振り回す。

ドカッ グシャッ バキバキッ

「あああ・・・村役場が村役場が・・・・・・壊れていくぅうううう!?」

ただでさえ半壊していた建物がさらに破壊されていくのを目の当たりにし、村長が悲痛な声を上げた。

「このままじゃ埒が明かないぞ。」

「だけど、どうするんだよ!?」

 デビルアーマーの攻撃を何とか回避しながらブルーとレッドは話し合った。しかしこれといった解決策はいまだ浮かばない。

「きゃあああああああ!?」

【桃子!?】

ピンクの悲鳴。何とデビルアーマーの手の中にピンクの体がある。捕まってしまったのだ。ピンクを助けようとレッドとブルーが同時に身構えたその時、

「―――――積んでは父の為、二つ積んでは母の為、三つ積んでは故郷の、兄弟我が身と回向する・・・。」

歌うようにグリーンの口から流れ出た言葉に反応するかの如く、グリーンの手に数珠が出現した。

「何故に数珠?」

「そういえば、あいつの母さんの実家、神社だか寺だかなんだよな・・・。」

そして今度は数珠が光を放ち木刀に変化を遂げた。

「天誅ー!」

そう叫んでグリーンが跳躍すると、デビルアーマーの高さを超えた。そのまま上から一気に刀を振り下ろす。

ドガガガガガッ

派手な音がしてデビルアーマーは真っ二つになった。放り出されたピンクをブルーが見事にキャッチする(レッドは出遅れた)。

「理不尽な理由で女の子に手を上げる奴なんて最低ッ。だからこういう目に合うのよ!」

そうグリーンは吐き捨てた。

「コッワ〜・・・。」

誰かがボソリと漏らしたこの言葉は幸運なことにグリーンの耳には入らなかったようである。

「お、おのれおのれ・・・、よくもー!」

「まあまあ、落ち着いてください。」

 脳内血管がブチ切れそうな勢いで怒り狂うジョーカーに涼しげな声が掛けられた。聞き覚えのない声に、つい気になって声の主に顔を向ける。

『ブラック!?』

「むっ、誰だ貴様は。」

「そんなに興奮なさると体に悪いですよ。」

ジョーカーの問いには答えず相手(ブラック)は続けた。

「部下の皆さんも心配でしょう。」

「わかります〜?」

ジャックがぬっと現れ、ブラックの手を握った。

「総帥はいつも言ってるのにああなんですよ。食べ物の好き嫌いも多いし・・・。」

「それはまた・・・。」

「大変ですよ、いろいろと・・・。」

ブラックはジョーカーとジャックの話を根気よく聞いていた。いつの間にか人生相談室化しているようである。他の人々はどうにもリアクションに困って動けないでいた。そして妙にしんみりした雰囲気の果てにジャックが口を開いた。

「そろそろ帰りませんか、総帥。」

「そ、そうじゃな。」

「それなら良い物がありますよ。短時間で遠くまで行ける優れ物です。」

するとにこやかな調子でブラックが言った。

『良い物?』

異口同音で聞き返す二人。

「まず、この筒の中に入ってください。」

ブラックが示したのは何処から運んできたのか車輪が付いた物体だった。

「これ、何の車ですか?」

「狭そうだぞ?」

「まあ、いいからいいから・・。」

そう言ってブラックは二人をギュウギュウ筒の中に押し込める。

「ちょ、ちょっと・・・ブラック?」

グリーンは何となく嫌な予感がした。

「蓋閉めますよ〜。」

パタン ガチャ

「鍵良し、方向良し。」

流れるように事を進めているブラック。

「ねぇ、これ、何?」

筒を指してピンクが尋ねた。

「そうですね〜、一言で言えば・・・人間大砲ですかね。」

『はい!?』

(やっぱり〜・・・。)

思わず声を上げる他一同。その中でグリーンだけが無言で頭を抱えていた。

「と、言う訳で。三、二、一、点火!」

ボッ ジジジジジ・・・シュ〜 ボンッ

ヒュルルルルルルル・・・・・・ドッカーン

「たっまや〜。」

かっぎや〜。ブラック・サンダーの二人は空高く打ち上げられ星になった。こうしてチルドレンジャーは見事(?)悪の組織ブラック・サンダーを撃退したのであった。その後、ボスがいなくなったせいか、平戦闘員達は次々に撤退して行き、村役場の職員は無事解放された。

 

 

 

 

 

「ところで、この大砲どこにあったんだ?あの戦闘機の中にでもあったのか・・・?」

「あ、それはさっきそこで僕が造ったんですよ。」

 サラリと答えるブラックにブルーはその場に凍りついてしまった。末恐ろしい小学生である・・・。

 

 

 

 しかし、彼らの戦いは今始まったばかり・・・。

 

 

 

 

 

 

 

第二話へ続く!