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・・・・・・回想終了。
「そ、それって、つまり・・・。」
「放り出された先が俺の真上だった・・・て訳。」
溜息混じりにブルーが語る。その後の出来事は何となく想像できる気がした。グリーンは胸の内で笑い出したいのを何とか堪える。
走りながら会話をしていたらようやく通路の終着点らしき場所が見えた。ここを潜り抜ければ広い場所に出れそうである。
「うわ!?」
ドタッ
レッドの声。振り返る三人。見ればレッドは引っ繰り返っていた。
「何やってるんだ?」
ブルーの問い。レッドの足元にはバナナの皮。
「ま〜さ〜か〜、そういった古典的ギャグみたいな事はしてないよね?」
グリーンに念を押されて明後日の方向を見るレッド。どうやら、やってしまったらしい。
「滑って転んだの?」
ピンクの確認にレッドは俯くばかりであった。何とも幸先の悪い・・・。
「ピーン。日の出まで、あと一時間二十四分。一時間二十四分。」
「と、とりあえず。先を急ぎましょう・・・時間もないし。」
「そ、そうだね・・・。」
「ほら、行くぞ。」
「お、おう・・・。」
何となくぎこちない感じではあるが、四人は門を通り抜け、広大な空間をも持つ場所に出た。
『こ、これは・・・!?』
戸惑いの色を隠せない五人。それを待ち構えていたかのようにスピーカー越しの静音の高笑いが響き渡った。
「ハーハッハッハッハ!よくぞここまで辿り着いた、チルドレンジャーの諸君。」
「くそ!どこにいる!?姿を見せろ!!」
『・・・・・・。』
しかしレッド以外のメンバーは冷たい視線を送るばかりであった。
「ここが我が戦慄の迷宮におけるラストステージだ。ここにいる僕が造り上げた傑作、メカゴ●ラ・マークUを倒す事ができれば出口に繋がる階段への鍵が手に入る。しかし倒せなければ、君達はこの施設の自爆装置により、土に還る事になるであろう!それでは諸君の健闘を祈る。グッドラック!」
「あ、あの男は・・・。」
この場に静音がいたらすぐにでも絞め殺したい衝動に駆られ、グリーンは悶えた。ブルーは頭を抱えてしゃがみ込み、ピンクも脱力してその場に座り込んでしまった。ただレッドだけは出所不明な闘志に満ち満ちていた。
「いくぞ、みんな!」
レッドがポーズをとる。
「ええ、瞬殺してあげるわ・・・。」
半眼のままユラリとグリーンが立ち上がる。その片手には木刀ではなく真剣が握られていた。
「おう、今までの鬱憤晴らしさせてもらうぜ・・・?」
ブルーの瞳にはそれとなく狂気が宿っている。そして息を吸い込むと呪文の詠唱を始めた。
「私だって早く家に帰りたいんだからね!」
唇を尖らせてそう言い、ピンクも立ち上がった。
キュウイイイィィィィィンン
メカ●ジラのセンサーに光が点る。こうして最後の戦いは始まった・・・!
さて、彼らが戦闘をしている間にもう一人、一足早くダンジョンから脱出する事が出来たブラックがどうしていたか見てみよう。彼は自分が持ってきた鞄を取り出すとおもむろに中身の物色を始めた。そして携帯用のノートパソコン(違法改造済)を準備すると目にも留まらぬ速さでキーを弄り始める。
(あの施設の電波パターンは解析済みだから・・・。)
彼のやるべき事は唯一つ、雪代静音への復讐である。まず手始めに、衛星回線を利用したハッキングで自爆装置を解除する事を選んだ。もちろん未だに閉じ込められたままの仲間達の事も頭の隅の方では考えていた・・・らしい(汗)
ブラックの指がキーボードの上を踊る中、地下では戦いも佳境に入りつつあった。レッドがホースから勢いよく水を放出し、
「消防車、清掃車、散水車!」
ピンクは霞でメカゴジ●のセンサーを迷わせる。
「囁け、花霞。」
「ドラグ・スレイ●!」
ブルーが放った呪文に呼応し赤い光が目標のメカゴ●ラに向かって収束する。さらにグリーンの刃が衝撃波を生み出す。
「斬・・・!」
一方メカ●ジラの方も目からビーム出したり、口から硫酸吐いたりして応戦する。そのような激闘の末、辛くも勝利を手にしたのはチルドレンジャー達だった。
ズッシィイイイイインッ
メカゴジ●が倒れる。その場に立っているのは四人だけになる。レッドが一人感慨深げに呟いた。
「か、勝った・・・。」
しかし勝利の余韻に浸る暇もなく、非常にもアナウンスは告げた。
「ピーン。日の出まで、あと七分二十秒。七分二十秒。」
『ぐげ!?』
「嘘!?残り十分切ってる!!」
グリーンの悲鳴。
「マジかよ!?」
ブルーの叫び。
「やだぁあああああああああ!!」
ピンクの絶叫。
「とにかく、急ぐぞ!」
階段を塞ぐ扉を大急ぎで開錠し、四人は全力疾走で階段を駆け上った。
一方その頃ブラックは・・・
「ああ!こういう時に限ってパスワード必要な設計になってやがる・・・。」
妙に殺気立っていた。空はすでに白み始めている。
「ピーン。日の出まで、あと五分。五分。」
「あ〜と〜五〜分〜。」
「死ぬ気で走れー!」
五段飛ばしでもしそうな勢いで彼らはひたすら先を急ぐ。
「クソッ、あと五分切りやがった・・・。」
(いっそウィルスでシステムごと破壊するか・・・?)
ブラックが珍しく毒づく。それでも手は休めず、目もモニターから離さない。
「ピーン。日の出まで、あと三分。三分。」
「ま、まだ着かないのぉ・・・?」
「頑張れ、桃。きっとあと少しだ。」
「本気でまずいかも・・・。」
「カップラーメン!」
疲れのせいか、焦りのせいか、徐々に言動がおかしくなりつつある四人。
「あと三分・・・!」
(間に合うか・・・!?)
地上でブラックが孤軍奮闘する。頑張れブラック、負けるなブラック。雪代静音を泣かしてやれ。最早頼れるのは君しかいない!・・・だって、レッドがいると致命的な所で失敗しそうなんだもん(作者談)
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