読む上での諸注意及び設定
*これは幼稚園パラレルの為、基本的に魔物の子供達はナチュラルに園児です。
*本の持ち主は幼稚園の先生だったり子供達の保護者だったりします。
*キャラが破滅的に壊れている時もあるので、どんなネタでも笑って許せる方がご覧ください。
*因みにカップリング要素は現時点では未確定です(爆)
*年長組は花、年中組は色、年少組は動物の名前がついた教室にクラス分けされています。



主な登場人物
【ガッシュ・ベル】
ひよこ組の男の子。明るく素直でひよこ組の先生である清麿が大好きな元気っ子。友達は多いが何故か 苛められっ子属性持ち(笑) 単純で泣き虫。実は金持ちのお坊ちゃん?

【高嶺清麿】
ひよこ組を担当する幼稚園の先生。怒ると怖いが面倒見がよく、子供達に懐かれている。因みに鬼麿変 化は言うことを聞かない子供達を従わせる伝家の宝刀(爆)

【ゼオン】
きつね組にいるガッシュの双子の兄。苛めっ子属性持ちな為かよくガッシュを苛めてしまう。先生達の いうことをなかなか聞かないが、流石に鬼麿は苦手で素直に従う。実は清麿に懐いているかも?

【ティオ】
ひよこ組の女の子。気が強くて少々お転婆。勢い余って友達を泣かせてしまうことも(主に首絞め)  清麿に憧れを抱いている。姉の大海恵が大好き。

【グスタフ】
きつね組の担当者が諸事情により休職してしまった為、臨時で担当についている先生。本来はちゅーり っぷ組を担当している。何はなくとも威圧感と存在感を標準装備(ぇ)

*とりあえず五人程紹介してみました。他のキャラについては次の機会に(あるの?)





ひよこ組のガッシュ君





 ここは魔界幼稚園。個性的な子供達と先生がいつも園内をにぎわせています。そして今朝も園児達が 元気いっぱいに幼稚園へとやってきました。お母さんと手を繋いでやってくる子、幼稚園バスに乗って やってくる子、車で送られてくる子もいるようです。そんな幼稚園の正門に一台の車が止まりました。 黒塗りのベンツです。いかにもな高級外車です。そして助手席から降りた黒いスーツにサングラスとい うやっぱりいかにもな格好をした男が後ろの席に繋がるドアを開けました。そして中から出てきたのは 銀髪の子供でした。堂々とした態度はとても幼稚園児とは思えない立派なものです。

「いってらっしゃいませ。ゼオン様、ガッシュ様。」
「いってきますなのだー!」

頭を下げる黒服に見向きもせず、銀髪の子供ゼオンは門の中へと入っていきます。その代わりにゼオン の後から車を出た金髪の子供ガッシュが元気良く手を振って答えました。色は違えどゼオンにそっくり のガッシュはゼオンの双子の弟なのです。

「まつのだ、ゼオン。きょうしつまでいっしょにいくのだー!」

先に行った兄を追いかけてガッシュが足を速めます。けれどもゼオンは振り返ることすらしません。ゼ オンは基本的に甘くないお兄さんのようです。そんなつれないゼオンの態度にもめげず、ガッシュは彼 に突撃します。

「どうしていつもゼオンはひとりでさきにいってしまうのだ?ようちえんくらいいっしょにいってくれ てもいいではないか。」
「邪魔だ。」

進行方向を塞ぐように前に出てきたガッシュをゼオンは手で押しました。肩を押されたガッシュの身体 が横にそれ、ゼオンの進路が再び開きます。そしてガッシュを置いてまた歩き出しました。

「ああ!まつのだ、ゼオン。わたしもいくのだー!」

 ガッシュは急いでゼオンの後を追いかけます。態度がどんなに冷たくてもやはり兄です。ガッシュは ゼオンとスキンシップをしたくてたまらないのでしょう。ゼオン自身がどう思っているかは頭にないよ うです。そしてガッシュは飛びつかんばかりの勢いでゼオンに追いつこうしました。しかし、何という ことでしょう。勢い余って、ガッシュは地面でつまづいてしまいました。

「ヌオ!?」
「ぐわ!?」

転びそうになったガッシュは咄嗟に目の前にいたゼオンの服の裾を掴みました。それにつられ、ゼオン の身体がバランスをくずします。したたかに尻餅をついてしまい、さらに背中にガッシュの石頭がぶつ かりました。はっきりいって痛いです。派手にコケた双子に周囲の視線も集まります。

「・・・こ・・・のっ、馬鹿ガッシュー!!」
「ヌォオオ!?いたいのだー!!」

怒ったゼオンがボカリとガッシュの頭を殴りつけました。ガッシュは頭を押さえて泣き叫びます。ガッ シュは石頭ですが、ゼオンだって肉体強度は負けていないのです。痛いものは痛いですけど。

「いたいのだ、やめるのだ、ゼオン!?」
「こんの愚弟がー!!」

ボカボカと怒りをぶつけるゼオンにガッシュはろくに抵抗もできないようです。確かに転ばせた責任も あるのでしょうが、なかなか一方的な兄弟喧嘩でした。

「こら!何をやってるんだ、二人とも。」

 そこへやってきたのは黒髪の男性でした。彼はこの幼稚園の先生です。そして横には長いピンクの髪 の女の子がいます。きっとこの子が先生を呼んできたのでしょう。とにかく先生の言葉にゼオンとガッ シュの動きが止まりました。

「おお!?キヨマロせんせいにティオではないか!」
「高嶺清麿・・・。」

清麿はガッシュが所属するひよこ組の先生です。そして彼を連れてきただろう女の子ティオもひよこ組 です。因みにゼオンはきつね組で、教室の配置はひよこときつねの間にうさぎが挟まれる形になってい ます。

「キヨマロせんせい、おはようなのだー!」

ガッシュはゼオンに泣かされていたことも忘れて清麿に駆け寄りました。そして元気良く彼に飛びつき ます。ガッシュは清麿先生がとっても大好きなのです。

「おはよう、ガッシュ。それからゼオンもおはよう。」
「・・・。」

清麿はガッシュに笑顔で挨拶をした後、ゼオンにも朝の挨拶をしました。けれどもゼオンは清麿から顔 をそむけてしまいます。挨拶返しもしません。

「ゼオン君、おはようございますは?」

清麿が言いました。けれどもゼオンは答えません。

「ゼーオーンーく〜ん?」

再度清麿はゼオンに笑顔で呼びかけました。けれどもどこか黒いオーラが漂っています。これが悪化す ると最終的に“鬼麿”先生となってしまいます。流石のゼオンも鬼麿だけは苦手でした。

「・・・おはようございます。」

ボソリとした声の上、大変棒読み口調でありましたが、ゼオンの危機回避本能は挨拶を返すことを選択 させました。そしてそのまま不機嫌そうにきつね組の教室へと走っていってしまいました。子供達の間 で雷帝と噂されるゼオンも清麿(正確には鬼麿)先生には勝てないようです。

「キヨマロ先生、すごーい。」
「キヨマロせんせいはいつもすごいのだ!」
「それじゃあ、俺達も戻るぞ。」
『はーい!』

清麿の言葉にガッシュとティオは元気良く返事をするのでした。





 さて、時間は一気に進んで、午後になりました。昼食を食べ、歯磨きを済ませた子供達はお昼寝タイ ムを迎え、先生達は休憩時間となります。ひよこ組の子供達を何とか全員寝かしつけた清麿は職員用の 控え室兼休憩部屋へとやってきました。

「あ、グスタフ先生。お疲れ様です。」
「君もご苦労だったな。」

控え室には立派な口ひげが特徴的なグスタフという人物がいました。“男”というより“漢”という言 葉が似合う彼はきつね組を臨時で担当している先生です。魔界幼稚園でもベテランの内に入り、今年は 年長組全体の責任者兼ちゅーりっぷ組の副担当を務めていました。けれどもきつね組の担当者が諸事情 により休職してしまった為、急遽ベテランのグスタフがきつね組を担当することになったのです。また 場合によっては副担当がいなかったり、複数のクラスを担当する形になっている先生もいます。

「子供達はいつも元気が良くて、毎日大変だって思うんですけど、やっぱり嬉しいんですよね。俺を慕 ってくれているのが。」

ガッシュやティオを筆頭に清麿の元に集まってくるひよこ組の子供達。彼らの目の輝きが信頼に満ちて いるのが感じられ、大変だと思いつつも、彼らの期待にこたえようと頑張ってしまうのです。清麿がや や照れ臭そうに微笑みました。

「そうか。」

グスタフが静かに頷きます。そこへ・・・

カラカラカラ・・・

といった音と共に控え室の戸が開きました。誰か入ってきたのでしょうか。同じ職員でしょうか、それ とも子供達でしょうか。ここに先生達がいることがあることは子供達にも知られているのです。そして 姿を現したのは銀髪の子供、ゼオンでした。

「清麿、俺に付き合え。」
「は?」

 部屋に入ってきたゼオンは開口一番そんなことを言いました。思わず目が点になる清麿先生です。そ もそも今の時間、子供達はお昼寝をしているはずです。

「これを読め。」

ゼオンは腕に抱えていた本を清麿に差し出しました。なかなか厚みのあるハードカバーの本です。表紙 に書かれた題名と作者名はアルファベットで記されてしました。どうやら原書のようです。

「“Nursery Rhymes”・・・マザー・グースか?」

適当な所で本を開けば『Mary had a little lamb(メリーさんの羊)』の文句が並んでいました。恐ら くゼオンの私物であろうそれを手にして、清麿は彼を見つめます。

「俺は全部のメロディは知らないぞ?」

マザー・グースは歌あり早口言葉ありの伝承童謡です。イギリスの童歌とされているが英語文化圏の多 くの国で歌われています。また前述した『メリーさんの羊』や『きらきら星』、『ロンドン橋』といっ た歌の和訳したものは魔界幼稚園でも歌われていました。

「別に歌わなくていい。朗読しろ。」

ゼオンは言います。いつもながら俺様な態度に清麿は苦笑いしました。そしてグスタフは一応自分が担 当の組の子供なのに黙って静観しているようです。

「読むのは構わんが・・・そもそもお前、まだお昼寝の時間だろ?ゼオン。」
「隣の奴のイビキが五月蝿くて眠れない。」

ムスッとして不機嫌そうなゼオンの態度。生意気ではあるものの、どこか子供っぽくて清麿は微笑まし く思いました。

「グスタフ先生、宜しいですか?」
「君の好きにするといい。私は子供達の様子を見てこよう。」

そう言ってグスタフは控え室を出て行きました。残ったのは清麿とゼオンとマザーグースの本です。控 え室にいるのも他の先生が来た時に難なので、清麿は場所を移動することを提案しました。ゼオンが頷 くと清麿は彼の手を引いて移動を始めました。右手は本を持ち、左手はゼオンと繋いで、清麿がやって きたのは多目的ホール。そこの壁に寄りかかるように二人は並んで座りました。

「最初からでいいのか。」
「早くしろ。」
「分かった分かった・・・。」

ゼオンに促された清麿は本を朗読し始めます。彼の発音は綺麗なクィーンズ・イングリッシュでうっと りとしてしまうような響を持ち合わせていました。そう、ゼオンは彼のこの声の響がとても気に入って いたのです。だからこそこうしてマザーグースを読んでもらおうとしたのでした。



 この後、お昼寝から途中で目を覚ましたガッシュが清麿とゼオンが一緒にいるのを見て大騒ぎするの ですが、それはまた別の話ということで。





<後書き>
 正直、設定を考えている時が一番楽しかったです。各キャラをどんな形で配置してどういった設定を つけるのか、出番がないだろうキャラまで妄想してしまいましたよ。ゼオンやグスタフがいるから当然 デュフォーやバリーの設定も作ってあることは作ってあるのです。基本的に魔物が園児で本の持ち主が 大人なパターンなんですけど、例外はもちろん存在します。例えばレインが園児でカイルが保護者なん て組み合わせは流石に無理ですし。あとペア関係なしで単独で設定のあるキャラもいます。これまた出 番があるかどうか謎ですが・・・。
 とりあえず書き終わってみて思ったことは地の文が久々にですます調で大変だったということです。 意外と苦戦しましたよ、これは。それからガッシュのセリフが平仮名とカタカナのみというのも意外と やりにくかったです。もし続きを書く機会があったら多少変更を検討してみようかと思いますね。因み にゼオンは普通に漢字喋りです。ティオは画数が少なそうな漢字だけ使用。


2007/05/19 UP