今も昔も魔法を解くのは乙女の役目?
2011年6月6日 「ロキルーの日」記念DLF小説
by夏初月
後編
その同じ時間、カプリコーンはいつもよりもぐっと上着丈の長いスーツを着てルーシィの家の前の街路樹に潜んでいた。
今日は彼の見事な腹筋は隠されており、頭には街路樹にその姿をなじませる為、バナナの葉が紐で巻かれている。
「バルゴ、私たちは本当これでよかったんでしょうか。」
「仕方ありません。あの魔法を解くことができるのは姫のみ。今は頼るしかないのです。例え名ばかりといえど、我ら黄道12門のリーダーをあのままにしておくわけにはいきませんから。」
一方バルゴは額に手拭を巻き、いわゆる力仕事系の方々が着るようなグレーの作業着にトレードマークの白いフリルのエプロン、ピンクのサングラスをして屋台の陰にさりげなくヤンキー座りをしていた。
「ところでバルゴ、その変装は何です?」
「ラーメン屋です。」
バルゴは何の感情を表すこともなく、淡々と答える。
「日本の祭を紹介する雑誌を見て研究しましたが何か?」
それ、ラーメン屋じゃなくて、屋台ラーメン食べに来たヤンキーなんじゃないかと密かに思うが、そこはさすが冷静さがウリの12門最年長星霊である。そんな揶揄など露ほども顔に出すことは無い。
(それよりも…)
カプリコーンは、脳内をグルグルと某有名猫と某有名鼠が繰り広げる永遠のデスマッチレースのように駆け巡る疑問にゴールフラッグを振れずに悩み苦しんでいた。
何回も読み直した『古代魔法辞典』。星霊界のレオの自室に置いてあったものだ。折り印がついたそのページにあるのは『記憶後退魔法』。
解除方法は愛する人から告げられる「愛してる」か「大好き」のいずれかの言葉のみ。告げられた時からきっちり36時間後に魔法は解ける。
「しかし、所有者であるルーシィ様をお守りするのが私の役目。それがよりにもよって狼をこの手で投げ入れるなど。」
苦渋の決断だった。カプリコーンの自慢の顎鬚は今なお、だらんと力なく垂れ下がっている。
「ルーシィ様に何かあっては天国のレイラ様に顔向けできません。」
バルゴはそんなカプリコーンの肩を励ますように叩く。
「私とて、姫の貞操をお守りするのが使命と心得ています。その為にこうして変装までして24時間体制で見張っているのです。」
「そう、私達はなんとしてもルーシィ様を魔の手から守らねばなりません。」
カプリコーンは固い決意を込めてぐっと拳を握り締める。
「ルーシィ様の為ならば」
「例え火の中、水の中。」
「ある時は謎のセールスマン」
「またある時は謎の美少女ラーメン屋」
「「しかして、その実態は…」」
「磨羯宮のカプリコーン」
「処女宮のバルゴ」
「ルーシィ様の貞操は我らが守る、それが執事星霊としての」
「メイド星霊としての」
「「誇りです」」
シャキーンとポーズをとる2人を予備校帰りの女子高生が口をあんぐりと開けて見つめている。ポトリと手に持ったアイスが落ちそうになるのを、すかさずカプリコーンがナプキンで受け止め、バルゴがテッシュで口を拭った。
日に日にキレを増すバッチリ統制のとれたコンビネーションに、2人は一瞬、お互いを讃えるように無言で視線を交わす。
「しかし、レオ様も思い切ったことをなさるものですな。私達がこの本を見つけなかったら、更にはルーシィ様の所に連れていかなければ、魔法は永遠に解けない、全部忘れてしまったままになるというのに…」
「全部仕組まれたとしか理解できません。」
「レオ様が幼い頃から見てまいりましたが、こういうところはちっとも変わっていらっしゃらない。」
「取り敢えず戻って来たら…」
彼女にしては珍しく感情のこもった台詞を吐き、ジャラリと手錠の鎖を鳴らす。
「お仕置きですね。」
カプリコーンとバルゴはしっかりと眼を見つめあい、深い信頼に育まれたその意志を確認し合った。
( 終 )
著作権 author :夏初月
作者URL:「獅子のしっぽ」 http://liontail.web.fc2.com/
<コメント>
最近すっかり自分の中でブームだったロキルーです。今回のお話はレオルーと言った方がいいのかもしれませんが。いや、自分はどっちも好きですけど。原作は某WMの作品なのでサイトとしてはジャンル外なんですが、ラストの山羊と乙女の星霊sのポーズ取ってるノリとかがツボすぎて・・・。
『FAIRY TAIL』は原作だと特に押しているCPはなかったりするんだけど(むしろメインは友情・家族愛ですよね)、二次なら断然ロキルーです。前作『RAVE』は原作でハルエリが鉄板だったので二次ではジクエリ派でした(笑) ハルエリも好きですけど原作でおなかいっぱいになれますからね。そういう意味ではロキルーもフラグはあるのに絡みが少ないからはまってしまったのかも?(爆)
2011/08/24 UP(取得日も同じ)