4、菫
庭先で菫が咲いた。柔らかな日差しが降り注ぐ家の縁側で黒い髪の少女と白い髪の少年がのんびりとくつろいでいる。
「春だねぇ、日番谷君。」
「ああ、そうだな。」
少女のほんわりした声と少年の歳の割には落ち着いた声音。もっとも彼らは外見上と実年齢は必ずしも一致しているわけではないのだが。
「お茶入れてくるね。」
少女はにっこりと笑って立ち上がる。
「おう。いつもので頼むな、雛森。」
「うん、わかってるよ。」
少年の言葉に少女は当然と言った表情を浮かべた。
「お茶請けは昨日京楽隊長から戴いた練切でいい?」
「ん。」
少年の返事を受けて、少女は家の奥へと姿を消した。パタパタという足音が遠ざかっていく。陽気は程よく暖かで、時折肌を撫ぜる風が心地好い。少年の見上げる空はどこまでも青くて、彼はその翠の双眸を細めた。やがてまたパタパタという足音が近づいてくる。
「日番谷君、お茶入ったよ〜。」
「悪いな。」
「そんなことないよ。はい、どうぞ。」
少女がにこやかに少年に湯呑み茶碗を差し出す。そしてそれを自然な動作で受け取る少年。
「いい天気だな。」
「そうだねぇ。」
黒い髪の少女と白い髪の少年は仲良く並んで座り春を満喫していた。
<後書き>
短いですね。そして季節がずれていますね。というか、ヒツさんが亭主関白だ・・・。え?どこが・・・なんて突っ込んじゃ駄目ですよ。いいじゃないですか、ほのぼので。それより何よりこの話のテーマ『菫』じゃないよ〜!(明後日の方向に叫んでみる)
2005/06/03 UP